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唯一俺だけ男の魔女  作者: ののん
入学編
16/20

16話

 レヴィを見送った二人の少年少女は素早く着替えて準備を済ませてから部屋の外へと出た。

 部屋の外には多くの生徒たちが慌てたように走っている。普段なら廊下を走ることもない生徒もこの状況では全速力を出している。当然走ることを注意するものなどいない。

 だけど別の部分を注意する者がいた。


 「慌てずに落ち着いて移動するんだ」


 声を張り上げる一人の少女がいた。

 綺麗な緑の髪を靡かせる少女、時安(ときやす)世界せかい が廊下の端に立っていた。

 生徒会長である時安は慌てる生徒達を落ち着かせるように声を張り上げて誘導しているらしい。

 そちらに視線を向けた少年と丁度こちらに支援を向けた生徒会長との視線が重なった。


 「陸くん、白銀さん。こんばんわ」

 「こんばんわ」

 「ああ、て、やけに落ち着いてるな」


 陸たちに気付いた生徒会ちゅは少し微笑みながら夜の挨拶を送ってくる。

 それを受けて二人は軽く返した後、少年は時安に話しかける。


 「私は生徒会長だからな。私が落ち着いてみんなの見本となり誘導するのが役目だ」


  凛としたたたずまいで変えす生徒会長。昨日、転入生を案内していた時と違って威厳のある風貌というのを表現しているようだった。

 生徒会長たる時安は現在の緊急事態において他の生徒たちを安全な場所まで導く義務がある。だからこうして学生寮の部屋の前、生徒たちが一番居るであろう場所で誘導しているのだ。


 「君たちは魔族と対峙してくれるのだろう?とてもありがたいが、気を付けてくれ」

 「ああ、時安も誘導に集中しすぎて逃げ遅れたりするなよ」


 今は長々と話している時間もないので話を切って時安と別れる二人。

 生徒会長と支店役目を果たそうとしている時安のためにも出来るだけ早く事態を収束できるように努める。


 「そこの窓から飛び降りるぞ」

 「うん」


 状況をより把握するためにもまずは寮の外に出る必要がある。部屋の窓から出ても良かったのだが、そちらはレヴィに任せたので、少年たちは一度外に出て廊下側の窓、レヴィとは寮の反対側に出ることにした。

 急ぐ気持ちのあまり全く窓ガラスに配慮しないほどの勢いで思い切り窓を開け、少年はそこから思い切って飛び出す。空色髪少女もそれに続く。どうでもいいことだが窓ガラスは無事だった。

 タッと地面に軽く着地した少年少女は辺りを見渡す。

 普通の人なら二階以上から飛び降りれば無傷とはいかないだろう。二階とは言え案外と高い。足首をひねる程度は覚悟がいる。それが三階、四階と階が上がるごとに当然リスクは高くなる。

 だけど今飛び降りたのは普通の人間ではない。魔女だ。

 魔女ならば魔力で身体機能や強度を強化することも出来るので二人は何のためらいもなく飛び降り結果も当然無傷にとなった。


 「本当に多いな」


 周りを見渡した少年は目に映る状況にぽつりと呟く。その目に移っているのは数十体の異形の存在。様々な形をもつそれらは思い思いに暴れまわっていた。

 幸いなことに被害にあっているのは自然物や人工物だけのようで、人的被害は見らあれない。真夜中ということもあり外に出ている者は殆どいなかったようだ。

 だけどそれも今だけのことで対処が遅れれば遅れるほど人的被害がでる可能性も高くなる。


 「ものすごく多い」

 「そうだな。百どころじゃないんじゃないのか」


 しかしその対処も目の前の魔族の数を見れば一筋縄ではいかないことが簡単に分かる。スマホに届いた情報には百以上と書いていたが、今見えるだけでも数十体いる。敷地内全体と考えると百なんて簡単に超えるのではないか。

 

 「陸」

 「ああ、気合入れるか。サポート頼む」

 「うん」


 数体の魔族が今まで見られなかった人間を二人見つけ、獲物が現れたとばかりに陸たちの方へ真っすぐ突っ込んでくる。

 数体の魔族はどれも獣のような形をしており大きさは一メートル程度。少年がこれまで倒してきた多くの魔族の中ではあまり強そうには見えない。


 「とっ」


 というか弱い。

 近づいてきた魔族に対して素早く武器を構えた少年は鋭く一閃する。それだけで一体の魔族の首が落ち絶命した。


 「…陸、強い」

 「こいつらは雑魚だからな。一体一体はそんなに強くないタイプだろ」


 あっさりと一体の魔族を倒した少年い真白は少し驚いていた。

 絶対にそうという訳ではないが魔族は大きくなればなるほど強い傾向にある。今陸が倒したものも含め身の前に居る魔族は一メートル程度と大した大きさではない。よってたいして強くない、ということになる。

 とはいえ魔族は魔族。

 普通の動物とは違い通常の方法ではそう簡単に倒せるそざいではない。

 だからそんな存在を簡単に倒してしまった少年に衝撃を受けていた。


 「私も、頑張る」


 しかし、今は少年の雄姿に見惚れている場合ではない。自分も-が今この場に居るのは観戦ではなくサポートなのだ。少年のように簡単に魔族を倒すことは出来なくても自分に出来ることはある。

 また少年が一体の魔族を倒したのを横目にしながら真白も魔族と対峙する。

 短剣を抜き、魔力による身体強化を施す。


 「邪魔は、させない」


 今にも少年に飛びかかろうとしていた魔族の身体を切りつける。それで少年のように首を落とすといった大業をすることはできないが、それでも足止めくらいなら出来る。

 身体を切りつけられた魔族は少年に向かっていた足を止め、空色髪少女へと向ける。 

 グルルと自分を害してきた人間に殺意のこもった視線と共に唸る魔族は少女を害するため牙を剥く。

 当然対峙する真白は無抵抗なわけもなく牙を短剣で受け止める。


 「これでも、喰らえ」


 牙を受け止めた真白はそこで開いた魔族の口に短剣を持っていない方の手を口に突っ込んだ。それと同時に魔法を発動させて手をかまれる前に素早く口から引き抜く。


 「グガ」


 すると直後に短剣に加わっていた重みが段々と弱まっていく。

 白銀(しろがね)真白(ましろ)の魔法は『救いの呪毒』という毒を生み出すもの。通常の毒ではなく魔力の毒。本来なら魔族に効きづらいものでも魔力によるものなら簡単に無効かという訳にはいかない。そんな凶悪な毒を直接口内に入れられた魔族は苦しむような呻きを上げ、弱々しい足取りで後ずさる。


 「…そこ」


 大きな隙を見せた魔族にそれを見逃さなかった空色髪少女は追撃を仕掛ける。毒で身体の動きを鈍くした魔族の首へと短剣を突き立てる。その瞬間、更に魔族は短い悲鳴をこぼすが真白は気にすることなく追い打ちに短剣を振り抜いた。

 それにより大きな血管を傷つけることに成功したのか大量の血を流す魔族。そしてふらふらとした後に身体を地面に倒した。確認すると絶命している。


 「…一人で、倒せた」


 倒れる魔族を見てぽつりと呟く空色髪少女。始めは足止めだけのつもりだったが、まさか自分一人で魔族を倒せるとは思っていなかった。

 魔族の牙を短剣出受け止めていたあの時、とっさに取った行動、魔族に毒を喰らわせることが出来なければ倒すことは出来なかっただろう。それも今までなら出来ない古道だった。とっさに魔力を練り毒を生成する。ああいった緊張状態では魔法をまともに制御出来ない頃は不可能だった。しかし今は違う。魔法を制御できるようになた今なら短い時間で毒を生成し、それを解き放つことも可能だった。


 「なかなかやrじゃないか。それなら一人でもいいんじゃないか」


 少しの喜びに少しの間硬直していた真白だったが隣から声を掛けられてはっとする。声がした方に顔を向けると少年がこちらに視線を向けている。

 少年の方も魔族との交戦を無事に済ませたらしく先程までの緊張を解き、今は落ち着いた雰囲気になっている。

 

 「ごめん、あんまり手伝えなくて」


 少年のt近くには数体の息絶えた魔族があった。真白が一体倒す間に陸は数体の魔族を倒していた。

 それを見て空色髪少女は申し訳なく思った。それから自分の力のなさにもうんざりする。

 そんな少し落ち込んだ少女(無表情)を見て陸はフォローするように声を掛ける。


 「これくらいなら一人で大丈夫だよ。真白だって一人で倒せたんだし、俺のことは気にせずこれからも一人でやってみたらどうだ?魔法も制御できるようになったばかりで、これからもっと強くなれると思うぞ」

 「そういえば、身体もいつもより動く」

 「こう言っちゃあなんだが今なら実践で練習できるぞ」


 魔力による身体強化も強力になっている。それにこれまでよりも早く、力強くなっている。

 だけどそれも少しの上昇でしかない。だから更に強力にするため練習あるのみ。

 何事においても実戦形式での練習は習熟効率も高くなる。ならば実践そのものならば習熟効率はかなり高いだろう。今の状況、魔族が大量にいる状況なら練習にはもってこい。その魔族も一体一体はそこまでの強さはないため、何かあったときのリスクもそれだけ低くなる。


 「ごめん、手伝うつもりだったのに」

 「いいよ。さっきも言ったけどこの程度なら余裕そうだからな」


 陸にとっては大した魔族ではない。ならば今は陸がサポートに回り真白の成長を促した方がいいだろう。いざという時の見方は強ければ強いほどいい。。そういった打算も込みで少年は空色髪少女のサポートに回ることにした。

 今はこの程度の魔族しか見えないが、それだけ友思えない。その時は真白にサポートを頼むつもりだ。


 「ありがとう」


 自分のためにとしてくれる少年に礼を告げる少女。

 本当は自分がサポートをするはずだったが逆になってしまった。その好意に答えられるように今は自分の成長に専念することにする。それからもし少年がサポートを必要としたときには真白が役目を果たし版だと覚悟した。


 「また来たぞ」

 「うん」


 数体の魔族を倒し、ほんの少しの間一息ついいていた二人だったが、先程までの戦闘音を聞きつけた離れた場所に居た魔族が数体迫ってきていた。

 

 「俺が間引くからその間に存分に練習してくれ」

 「うん、ありがとう」


 迫ってくる魔族に対して武器を構える二人。

 まだまだ魔族は多くいると予想される中、残りの体力も考えつつ二人は魔族と対峙した。

レヴィ

「その頃我は何十体の魔族を倒していたのだ」

「本当に数が多いな」

レヴィ

「そうなのだ。うじゃうじゃと虫みたいにうっとうしいのだ。これだから魔族は」

「お前も魔族だろ」

レヴィ

「次回、事態解決」

「だから嘘を言うな。二回目だぞそれ」

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