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唯一俺だけ男の魔女  作者: ののん
入学編
13/20

13話

 朝、灰色紙の少年が目を覚ました。

 自分の目ていたベッドの中に慣れた温もりを感じて視線を向けると、やはりよく知る人物、魔王のレヴィが気持ちよさそうに眠っていた。

 眠っている少女はいつも通りだけど、それ以外は見慣れない光景が目に入ってきて部屋の中を見渡す。


 「そういえば学園に来たんだったな」


 少しぼんやりとしていた意識がはっきりとしていくにつれて、段々と新たな環境について思い出す。昨日から出雲学園に入学して新たな生活が始まった。

 部屋の中を一度見渡した後、隣の今自分が居るベッドと全く同じタイプのベッドに視線を留める。ベッドには空色髪の少女が静かに眠っていた。


 「改めて考えると同室である必要はないよな」


 隣のベッドで眠る少女を見ながら呟く陸。

 真白が人工魔女で自分の能力が必要というのは理解できる。だけど、それは同室である必要はない。同じ部屋に住んでいなくても魔法を制御できるようにすることは出来る。

 脳裏に年齢不詳の女性のニヤけ顔を想い壁ながら溜息をこぼす陸。きっとあの魔女の悪ふざけで同室にされたのだろう。


 「おはようなのだ」


 小さな声だったが少年の呟きが目覚まし時計の代わりになったのか、むくりと同じベッドで眠っていた青色髪の少女が起き上がり挨拶してくる。

 同じベッドで寝ていたのはいつものことなのでそこには触れずに挨拶を返して再び隣のエッドに視線を戻して問いかける。


 「一応訊いとくけど、成功したんだよな」

 「うむ、真白も攻略完了なのだ」

 「攻略っていうのは分からないけど成功したならよかった」


 空色髪の少女の腰の辺りにあった紋章にキスをして直ぐに倒れたのでその後のことはどうなったのかは分からない。なのでレヴィに事の顛末を訊いたのだが無事に成功していてほっと安心する。

 これで少しは真白の助けになれただろうと気持ちが高まる。一番は人工魔女のことを思っての行動だったが、それでも自分が誰かの助けになれたというのは気持ちのいいことだ。


 「分からないのか?ならば教えてやるのだ」

 「いや、言いたいことは分かってるから。攻略とかしていないってことだよ。分かってて言ってるだろ」


 陸が満たされたような感情になっていると、先程さらっと流した部分を掘り返してくる青色髪少女。

 レヴィの反応から真白が無事に魔法を制御できるようになったことを理解した陸は攻略完了という単語を流したのだが、目の前の少女は流させてはくれなかったようだ。

 レヴィの言いたいことは分かっていたが、いつものおふざけのようなものだったので面倒なので流したかった。しかし、少女を救った=少女を攻略した。という謎の理論で話を進めようとしてきたので当然そんな滅茶苦茶理論は存在しないので否定した。

 レヴィも陸があえてスルーしようとしたのを理解していたが、陸とのおふざけを楽しむため、わざとやっている。


 「でも今までは大体そうだったのだ」

 「…」

 

 ニヤニヤとしながらからかうように言う青髪少女。それには否定できずに目を逸らす陸だった。

 レヴィの言うようなこと、少女を攻略のようなことが今までで何度かあった。全てではないのだが少ないとも言えない。

 

 「今回もいつも通り、陸の嫁が増えたのだ」

 「誰とも結婚なんてしてないから」

 「我としてるのだ」

 「お前としてるのは結婚じゃなくて契約だろ」


 いつの間にかしれっと抱き着いていたレヴィに呆れながらツッコみを入れる。そっきは少し部が悪い話題を出せされてしまったけど、少し話がそれたのでそちらに流れを持っていく。

 抱き着いいているのはいつものことなのでスルーだ。


 「んん」


 二人が同じベッドの上で上半身を起こした状態で話し合っていると、隣のベッドから音が聞こえてきたので、そろって身体を向ける。

 目が覚めた空色髪の少女、白銀(しろがね)真白(ましろ)がモゾモゾとしながら上体を起こし、目を手でごしごしとこすった後で隣のベッドに身体を向けた。


 「おはよう」


 淡々と無表情な顔で挨拶する。それに対して陸とレヴィも短く挨拶を返した。

 青い瞳を二人の少年少女の方に向ける真白は起きたばかりだというのに眠たい表情は一切見せずに、いつもの無表情な顔で話しかける。


 「邪魔してごめん。すぐ出ていく」

 「はい?」


 二言目に発せられた空色髪の少女の言葉が理解できずに首を傾げる陸。

 挨拶して、次に口から出てきたのが謎の謝罪。邪魔したと言っていたが、むしろ陸たちの方が話声で起こしてしまい睡眠の邪魔をしたのではないかと思ったが、真白はそこは気にしている様子はないようだった。


 「男女がベッドの上で抱き合ってる。することはひとつしかない」

 「何もしてないし、これからするつもりもないから」


 疑問い思っていた陸の耳に届いた答えは予想の斜め上のものだった。

 当然陸とレヴィがこの後何かをするわけでもないし、そもそも抱き合っているのではなく少女の方が抱き着いているだけなので否定する。

 表情から冗談かそうでなのかが掴みずらい言葉に強く反応したが、その否定の言葉を気にせずに真白は続ける。更に悪乗りするものも。


 「誤魔化しても無駄。状況を見れば明らか」

 「うむ、我らは愛し合っているからすることは決まっているのだ」

 

 少年に抱き着く少女は当然いつも通り何もないことを分かっているが話が面白そうな方向へ進んで行ことしていたので乗っかって返す。


 「何お前まで変なこと言いだしてんだ」


 呆れたように自分に抱き着く少女にツッコむ陸だが、そんなことは気にせず少年の上体に回していた腕を首に回し直して楽しそうに言葉を続けるレヴィ。


 「それに邪魔ではないのだ。真白も入って三人でもいいのだ」

 「…私はまだそういう関係じゃない」


 本人を置き去りにして二人だけで話す青系統の髪色の少女二人。どうせツッコんでもまたスルーされるか変な解釈されるだけなので話には参加せずくっつく少女を引きはがしてベッドから抜け出す。

 真白の言葉に若干に気になるところもあったけど流しておく。


 (七時か)


 ベッドのそばに置いてあった自分のスマホで時間を確認すると今は朝の七時だった。昨日眠った、というより意識を失って倒れたのが十七時頃だったのでかなり長く眠っていたことになる。

 凝り固まった身体をほぐしながら調子を確かめrが特にも名題は感じられない。真白に施した処置の時の悪影響は出ていないようだ。


 「ところでレヴィ、充電してくれていたんだな。助かる」


 スマホに刺さった充電コードを抜きながら充電をしてくれたであろう青髪の少女に礼の言葉を告げる。

 二人で話をしていた少女達は、話が変な方向に盛り上がって、結婚だの他の少女の名前が出てきたりなどしていて話題を変えたかったので、そろそろ声を掛けた。


 「む?うむ、どういたしましてなのだ」


 真白と楽しく話をしていたところに少年から声を掛けられて、そちらに顔を向けた後、それが感謝の言葉だと理解したレヴィは勢いよくベッドから出て胸を張る。

 楽しそうに話していた二人の間に割って入って話を中断させてしまったことには若干の申し訳なさはあったが、それでも自分にとって居心地の悪い話をしていたので割り込んだ。


 「今の人間はスマホがないと生きていけないからな。充電しておいてやったのだ」

 「生きていけないは言い過ぎだが、まあ確かにそれくらい必要だな」

 「うん。スマホは大事」


 胸を張って告げるレヴィに頷く二人。

 今やスマホは携帯端末としての本領である連絡手段としてはもちっろん、時間の確認、ネット検索、料金の支払い、等々様々なことに使える代物である。現代社会になくてはならあないものとなっている。

 魔王であるレヴィはスマホを持っていないがパートナーがいつm使っているのでその重要性を理解している。だから陸が困らないように充電しておいた。

 

 「授業は八時半からだろ?早く食べに行こうぜ」


 うまく話を変えられたので先に進める。

 今から準備して、食堂に行って朝食ととってから教室に向かう。

 あまりしている時間はなのだ。


 「うん。今準備する」


 真白も自分のスマホで時間を確認してから頷いて準備を始める。

 備え付けのクローゼットの方に歩いて行ってから一度ルームメイトの方に身体を向ける。


 「…着替えるから、後ろ向いてて」

 「あ、あぁ、すまん」


 言われて直ぐに後ろを向く少年。ここは生活に使用する私室になるのだから当然着替えも行う。だからこういう時はお互いに気負付けなければならないと思った少年だったが、すぐにあることに気付く。


 「ていうか、脱衣所があるんだからそこで着替えろよ」


 背中を向けながら少しつい口調で告げる。ごそごそと音が聞こえてくるので、すでに服をうぎ始めているのだろう。

 ここの部屋にはトイレは当然として、ユニットバスもついている。なので脱衣所も存在する。着替えならそこで行えばいいのに何故か真白はこの場で着替え始めた。

 

 「少し恥ずかしいだけ。陸なら、気にしない」


 感情の掴みずらい声で淡々と告げているが頬は少し赤くなっていた。気にしないなんてことはなく、やはり少し恥ずかしい。出なければ後ろを向けなんて言わないだろう。 

 だけど少年には少女の気持ちなんて知ることはなくただ背を向けていた。

 気にしないと言われたからと言ってみるわけにはいかないので、着替え終わるのをじっと待つことにした。本当は落ち着かないので脱衣所に行ってほしいが、真白が動かないなら仕方ない。立ち位置的に陸の方が移動するというのも不可能だ。


 「気にしないと言っているのだし、後ろを向いている必要もないと思うのだ」

 「…見たいなら、陸なら見てもいい」

  

 青髪の少女が揶揄うように言った。レヴィは後ろを向いていなかったので真白の頬が少し赤いのに気づいていたので羞恥があることにも気づいていたのだが、あえてそんなことを言った。楽しそうだから。

 それと真白が言ったことも完全に嘘という訳ではなく、気にしないわけでは嫌ということではなかった。相手は自分にとっての救世主でもあり、自分でもよく分かっていないが気になる相手。下着姿くらいなら見られても少し恥ずかしいで済ませられる。

 普通の少女ならそうは思わないかもしれないが、この空色髪の少女はそう思っていた。

 レヴィも真白がそうだと理解していたため、陸を揶揄うように言ったのだ。


 「ふざけてないで早く着替えてくれ」

 

 言われたからといって素直に見るわけにもいかずに、背を向けるしかない。

 レヴィも真白が嫌がっていないことも分かっていたし、そもそもたとえ嫌がっていたとしても少年が素直に向かないことも知っていた。だからこその悪戯心だった。


 「終わった」

 「あぁ」


 少し警戒しながら恐る恐る振り返る。

 そこに頼葉先程までの自分の髪の色と同じ色のパジャマ姿の少女ではなく、機能出会った時に着ていた白い制服だった。

 どうやら着替えは本当に終わっていたようだった。


 「それじゃあ、俺は脱衣所で着替えてくるから」


 言って、思い至る。


 (そういえば、パジャマになってる)


 昨日眠った(倒れた)時は制服詩姿だったはず。だけど今着ているのは青のパジャマ。自分で着替えてはいない。というか着替えることは出来なかった。ならば誰かが着替えさせたはずである。

 考えるまでもなく犯人は分かっている。


 「む?我が着替えさせておいたのだ」


 視線を向けられていることに気付いた青髪少女は、その視線の意味も察して目根を張って答える。


 「別に制服のままでもよかったんだけど」


 レヴィとはかなりの長い付き合いだし、性格を考えればこれくらいなら陸も動じない。ただ着替えさせられたなんて、昔によくあったことだ。

 …いや、まったく気にならないわけではないが。


 「まあいいか」


 とりあえず、制服を持って脱衣所に向かう。が何故か後ろからレヴィが着いてきた。


 「何でついてくるんだ」

 「着替えさせようと思ってなのだ」

 「自分で着替えるわ」

 「手伝うのだ」

 「必要ない」


 着いてこようとする少女を押し返してさっさと脱衣所に入って扉を閉めた。

 追い出された青髪少女は不満そうな顔つきだったが、どこか楽し気な雰囲気を纏っていた。


 そして脱衣所で着替え始めた陸はズボンを脱いでほっと一息つく。。下着は昨日と同じものだった。流石にそこまでは変えられていなくて一安心する。

 昨晩、服を脱がせていたレヴィも流石に下着まではまずいと思い、そのままにしておいた。

 …真白が居なかったらどうなっていたかは分からなかったが。


 「さっとシャワー浴びるか」


 昨日訓練で汗もかいていたので素早くシャワーを済ませてから着替える。

 脱衣所から出た陸を見て楽しそうにレヴィは抱き着いてきた。


 「今シャワーを浴びるなら、昨日我が浴びさせてやっていればよかったのだ」

 「そこまでしなくていいから」

 

 ニっと笑いながら声を弾ませる。

 これは冗談で言っているだけだと陸も分かっているので、軽くだけツッコんでながした。


 「待っててくれたのか、待たせたな」

 「早く行こ」


 準備が終わっていた真白は少年が着替え終えたのを見て先を急ぐように言った。

 すでに七時半を回っているためあまり悠長にしている余裕はない。


 「そうだな、急ごう」


 鞄に教科書などの授業に必要なものを詰めてから部屋を出る。

 その時には青髪少女の姿は消えていた。魔王であるため普段は姿を消している。

 

 「え?」


 陸が部屋を出た瞬間、隣から驚いたような声が聞こえてきたため視線をそちらに向けると赤髪の少女がいた。


 「な、何であんたがそこから…」


 呆然と呟く赤髪少女。

 白銀真白の隣の部屋は姫神(ひめがみ)芹佳(せりか)の部屋だった。

 芹佳は自bんが部屋を出てきたタイミングで丁度隣から誰かが出てきたのに気づき声を掛けようとした。

 そこから出てくるのは空色髪少女だと思ったのだが、何故か昨日転校してきた少年だった。それで驚きの声が漏れてしまった。 

 それから少年に続いて本来そこに一人でいるはずの人物が出てくる。


 (面倒なことになった)


 赤髪少女を見ながら少年は憂鬱な気分になっていた。

レヴィ

「昔はいつも気がさせてやっていたのに、照れることはないのだ」

「だからそれは小さい頃の話だろ」

レヴィ

「昔は素直でかわいかったのに、今はひねくれてしまったのだ」 

「誰がひねくれただ。仏に成長しただけだから。小さい頃みたいにべたべたするわけないだろ。それお前も小さかっただろ」

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