11話
制服に手を掛けて唐突に脱ぎだす真白。
「…おい待て、何で服を脱ごうとしてるんだ」
「見れば分かる」
陸は言葉で止めようとしたが空色髪の少女は聞かずに躊躇なく制服を脱いでいく。
ブレザーを脱ぎ。
シャツを脱ぐ。
スカートは脱がなかったが上の下着は葉きりと見えている。
「見て」
「いや見ないから」
とは言っても陸は直ぐに後ろを向いたので何も見ていない。こういう事態には慣れているので’対応は早かった。止めよおうとして制服を脱ぐ手を止めなかった少女を見て直ぐに後ろを向くことが出来た。
さっき同室と気化された時こそ動揺してしまったが、今夏は冷静に対処できていた。
しかし、その少年の対応にこっちを見ろと要求する真白だったが、当然陸はそれを否定する。
「…陸、見るのだ」
「なんでお前までそっちに付くんだよ」
後ろを向く少年い青髪の少女は振り向くように言って半裸状態の少女を見せようと言ってくる。それにツッコむ陸だがその時も当然真白に背中を向けている。
突然制服を脱いだ真白にも理解できなったが、それを見るように促してくるレヴィのことも理解できない。
だけどそういった時は見ない方がいい。というより見ない方が色々と大変なことにならない。
だけどレヴィはもう一度真面目な声で言った。
「陸、いいから見るのだ」
「…なんだよ」
その真面目な声にレヴィがふざけているのではなく真剣なのだと判断した陸は覚悟を決めて振り返った。大体ふざけているがこういう時のレヴィは信頼している。。
「…それは」
振り返ると上半身下着姿の少女の背中があった。
真っ白な肌に水色のブラ。後ろ姿なので大きさこそはっきりと分からなかったが、それでもその姿を見て何も感じないわけがない。
だけど、そんな姿よりも大きな衝撃を与えるものが目についた。
腰のあたり、スカートの上のあたりに見覚えのある紋章。
「まさか『人工魔女』…」
紫色の光沢のある複雑な形をした紋章。模様こそ少し違うが以前も見たことがあるものだった。
人工魔女。
少年の頭にその考えがよぎる。
「そう。私は人工魔女」
陸の呟いた言葉に頷く真白。
こと時少女の頬は少し赤くなっていたのだが商っ劇的なものをみた少年はそのことに気付いていなかった。真白自身も流石に恥ずかしさは少し感じていたが、これから自分の将来に関わるとても大事なことの話になりので恥ずかしがってもいられない。
人工魔女。
文字通り、自然と魔法に覚醒して魔女になったものではなく、人工的に作られた魔女。
彼女たちは人工魔女として覚醒したとき、真白の身体にあるような紋章が現れる。
「だから、か」
少女が人工魔女だと分かった陸は納得したように頷いた。だから出雲如月は任せろと言ったのだと。
「陸ならなんとかできるって聞いた。だから『希望』」
空色髪の少女は何度も『希望』という単語を口にしていた。その意味を陸は理化する。
この少女が人工魔女ならそう評してもおかしくない。
「俺のことは如月さんから聞いたのか」
「うん。でも紋章を見せろって言われただけ。そうすれば何とかしてくれるって」
真白は事前に自分の置かれている状況を陸が何とかしてくれると聞いていたらしい。陸のことについて詳しことは聞いていないようだけど、それでも『希望』を持ったらしい。
「事情は分かった。それでとりあえずそれを何とかすればいいんだな」
「お願い」
頷く真白。
「制御できるようにしてほしい」
「あぁ」
顔だけを少年に向け後ろ姿で頼む真白。その顔はこれまで通り無表情なものだったが真剣な顔つきをしていた。
人工魔女は人工的に魔法に覚醒したものを言う。
しかし、彼女たちは普通の魔女達と尾は違い、魔法の制御がうまく出来ないのだ。
個人差はあるものの、完璧に制御席るものはいない。魔法をより強大に行使しようとすればするほど制御がうまくできずに、酷い時には暴走して周囲に危害を加えることもある。
当然。真白もそうだった。
この空色髪の無表情な少女も人工魔女で、魔法の制御がうまくできないでいた。
だから陸に期待した。
このたった一人だけの男の魔女ならたそれを何とかしてくれると聞いたから。
「レヴィ、頼む」
「うむ」
陸は真白の頼みを何の躊躇いもなく聞くことにする。真白の期待通り陸には人工魔女の魔法を制御できるようにすることが出来る。
それに、彼女達人工魔女の出自を思えば何とかしてあげたい。
人工的に魔女を作る。それ自体は良いことなのかもしれない。
今日において魔女とは魔族に対するために必要な戦力となる。その魔女は自然と生まれてくるもので確実性はない。
しかし、人工的に作れるとなれば『量産』もでき、魔族に対する戦力も安定的になるだろう。
だけどそれは、多くの国で禁止されていることっだった。
人工的に魔女を作る。
その方法はかなり非人道的なもので、倫理に反している。
更にその非人道的な行いにより必ずまあ法に覚醒するわけでもないのだ。大多数のものはなくなり、これまでも多くの犠牲を払ってきた。
だから国際的に禁忌とされている。
しかし、そんな禁忌を簡単に犯す者たちがいる。それえらの存在によって人工魔女は生み出されてきたのだ。
だから陸は素直に真白の願いに答えようとした。
きっと彼女も多くの酷い目にあってきただろうから。
「…ところで、っ誰?」
人工魔女が魔法を制御できるようにするための方法は分っている。それはレヴィに頼まなければいけないことなので陸は青髪の少女に頼んだのだが、そこで空色髪の少女が疑問に思う。
ずっと少年の隣にいた人物。陸と親しそうにする制服を着た少女には見覚えがない。
「えっと、こいつはレヴィ。今はそこはあ置いておいてそっちを何とかしよう」
「…分かった」
気にはなったがそれでも自分のことが気がかりだった真白は少年の言葉に頷いた。
「ならちょっと触るぞ」
自分の自己紹介は後まわしにしたレヴィは真白の腰にある紋章に手を触れる。
「…」
青髪の障子が紋章に触れている間、真白は何とも言えないむずむずとした感じをしていた。
何をしているのかは分からないけど、この少女は自分のために何かをしてくれているのだと思った真白はじっと耐えていた。
白銀}真白は青髪の少女に触れられながら少し考える。
これで魔王が制御できるようになるのだと。
白銀真白の魔法は毒。
もしもこれが暴走すレア多くの人を傷つけることになるかもしれない。
孤児だった白銀真白は謎の組織に引き取られ、それから実験動物のように扱われた。
他にも似たような娘たちがいたが、それによって人工魔女として覚醒できたのは白替え真白一人だけだった。
他の娘たちは全員死んでしまった。
人工魔女として魔法に覚醒したとしてもそれは完全に制御できるもなかった。
酷い目にあって手に入れた力が人を傷つける力。
絶望した。
何のために自分は人工魔女なんてものになったのだろうか。
謎の挿し木のものたちは人類のためだとか言っていたが、結局手に入れた力も人を傷つけるもの。
死にたいと思った。
謎の組織のものたちは毒の魔法で危険だと分かっているはずなのに、人工魔女が出来たことに興奮していた。他の犠牲者にはいたわる様子を全く見せず、それどころか使えない者のように扱って彼女たちの亡骸をゴミのように見るだけだった。
彼らは本当は人類のためでもなんでもなかったのだ。
死にたいと思いつつも死ねなかった。
犠牲になった娘たちのことを想い、彼女達の分まで生きなくてはなかった。
それが彼女たちの最後の願いだったから。
――あなただけでも生きて、幸せになって。
それが共に実験動物として暮らしてきた少女達の願いだったのだ。
誰か助けて。
白銀真白は願った。
絶望し、死にたいと思っても、そう願っていた。
それは自分のためか、犠牲になった娘たちのためなのかは分からなかったけど、そう願た。
このままだと謎の組織のものたちに酷い目にあわされ続ける。
唯一成功した人工魔女。
その存在は彼らにとって、いい実験動物だったのだ。
白銀真白を徹底的に調べて量産する。
そのためにさらなる実験を繰り返す。
人類のためという免罪符を口にしながら。
このままだと殺される。
助けてと強く願った。行きたかった。
そんな時、謎の組織は壊された。
日本軍に見つかり、組織の者たちは捕まり、白銀真白は保護された。
助かった。
保護された白銀真白はそう¥思った。
でも、
結局、自分の魔法は人を傷つけるもの。それに足しする憂いが心に残る。
共に実験胴部っとして過ごしてきた少女達の最後の姿を思い出す。
彼女たちの犠牲で手に入れた力が人を傷つけるもの。
納得できなかった。彼女たちの犠牲は人を傷つけるためのもののように感じた。
それは絶望だった。
生きてはいけるかもしれないけど、それでもずっと闇を抱えて生きなければならなかった。
そこで知った。
自分を助けてくれた人物のことを。
そしてその人物が何を出来るかを。
早乙女陸
白銀真白にとっての希望だった。
「うむ、もういいぞ」
空色髪の少女のこしから手を離した青髪の少女は少年に向けて話す。
それを受けた陸は一言礼を言ってから真白に近づく。
「今からすることは必要なことだからおこるなよ?」
「?なにする気?」
「…簡単に言えば『キス』だ」
頭だけを後ろに向ける空色髪の少女は無表情な顔つきのまま疑問に思う。急にないを言っているのだろうかと。
当然陸は変な思い出そんな子音を言ったわけではない。必要な行為なのだ。
そして『キス』と言っても口にではなく紋章にである。
それを改めて説明した陸は行動に移す。
「…それじゃあするぞ」
「うん。お願い」
詳しい説明は後ですると異にして、とりあえず問題の解決を先に済ませる。
許可をもらった主年は真白の腰にある紋章に顔を近づけてキスをした。
その瞬間、少年の意識を失い他の場で倒れた。
「だ、大丈夫?」
突然倒れた少年に慌てる真白。
しかしその少年を抱えて青髪の少女は口を開く。
「大丈夫なのだ、心配はない。いつものことなのだ」
少年をベットに寝かせたレヴィは空色髪の少女に向かい合って話しかける。
「それじゃあ改めて説明するぞ」
「…陸は?」
「このまま寝かせておく。だから心配はいらないのだ」
改めて心配ないと言うレヴィだがそれでも真白は心配そうにしていた。
それを無視してレヴィは続ける。
「それよりどうなのだ?」
「何が?」
「魔法の制御のことなのだ」
言われてハッとする。
陸が倒れたことで慌てて忘れていたが、少年が倒れたのは自分のためにと言ってキスをした後だった。
腰にキスされるという状況に悶々とする暇もなく倒れる少年。急な非常な出来事が立て続けに起きて忘れていた。
「出来る」
掌に紫の液体を滲ませたサ空髪の少女は呟いた。
「制御、出来る」
今まではこうして手に毒液をにじませるだけでもかなりの魔力を使い制御も困難だった。
それ以上に魔法を使おうとすると制御できなかった。
っだけど、今回は違った。
スムーズに制御でき、魔力もそんなに使ううことなくすんでいる。
呆然と掌を見つめる。
制御、出来る。
「うまくいったようだな」
「…何したの?」
毒液を戻した真白は青髪の少女に問いかける。
紋章にキスしただけなのにどうしてか理解できなかった。
「しうだな。人工魔女が何のために生み出されたのか知っているか。真白が作られた理由ではなく、そもそもの人工魔女のことでだ」
レヴィがここでいう何のためというのは真白が作られた理由ではない。
人工魔女という存在が作られた理由を訊いているのだ。
「…魔王の餌」
「そうなのだ」
呟いた真白の言葉に頷いて返すレヴィ。
そもそも人工魔女とは『魔王の餌』として生み出された存在なのだ。
「人工魔女は魔王の餌としてうまみ出された。魔王が新たなる力を手に入れるために。食べるために」
「それは知ってる」
「うむ。だから陸はお前を食べたのだ」
「?」
餌として食べられるために生み出された存在。だから陸は人工魔女である真白を食べた。
だけどそれだと、
「陸は魔王ってこと?」
陸が真白を食べたというならそういうことになる。
真白事態食べられたということにもちゃんと理解できていないがそれよりもそこが気になる。
「違うのだ。魔王は我なのだ」
ますます理解に苦しむ真白。
陸が魔王だから食べたのではないのか。レヴィが魔王なら真白を食べたのはこの青髪の少女ではないのか。
「陸は所謂『聖女』なのだ」
「なるほど?」
新たに告げた青髪の少女の言葉に少し納得する真白。
陸が聖女だというなら魔王であるレヴィの力が使えることに納得できる。
「大まかにはこんなところか。分かったか」
「うん。大体分かった」
いろいろと歩kにも聞きたいことはあった空色髪の少女だったけど、それは今はどうでもよかった。
「ありがとう」
今まで少女を苦しめてきたことを解決してくれた。それがなりよりうれしく、そして感謝で満ちていた。
「礼なら陸に言うといいのだ」
「うん、でも、あなたもありがとう」
その時の少女の表情はいつもの無表情とは違い少し頬が緩んでいた。
レヴィ
「陸はこうして真白を美味しくいただいたのだ」
陸
「だから変な言い方はやめろ」
レヴィ
「これで真白を苦略完了だな」
陸
「別に攻略とかはしてない。それよりもまた新しい単語が出てきたんだけど」
レヴィ
「それについても追々説明するぞ。次回は魔王についてだ」