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唯一俺だけ男の魔女  作者: ののん
入学編
10/20

10話

 学園長室を出て少年はその場で立ち呆けていた。


 「それで学生寮ってのはどこだよ」


 今日の授業はすでに終わっている。後は学生寮に行って自分の部屋を確認するだけなのだが、その学生寮の場所が分からない。出雲(いずも)如月(きさらぎ)に訊いたのだが笑って自分で探せと楽しそうに言うだけだった。


 「仕方ない、誰かに訊くか」


 適当に歩いていればだれかに会うだろう。そうすれば学生寮の場所ぐらい教えてくれるはずだ。

 そう考えて歩いていく。


 そこで唐突に、何の前触れもなく少年の隣に人影が現れた。


 「如月は相変わらず楽しそうだったな」

 「…何で今出て来たんだよ」

 「絡まれたら面倒だからなのだ」


 突如現れた人影に驚いた様子もなくジトっとした視線を向ける陸、

 

 青い髪は深い深海のようで、瞳の色も深海の闇を現してるかのように限りなく黒に近い青。腰まで髪を伸ばした陸と同じぐらいの身長の少女。

 

 「まぁいいか。それより学生寮を探そう」

 「うむ!探すのだ!」


 腕を組む深い青髪の少女。それに抵抗汁少年だが、捕らわれた腕は解放されなかった。


 「おい、くっつくなって言ってるだろ」

 「別にいいではないか。我と陸の中なのだ」

 「別に腕を組むような関係じゃないだろ」

 「せっかく胸を当ててやってるのに、悲しいことを言うな」


 ニヤッと悪戯っぽく笑う少女。その笑顔を見て少年も腕に居合わせな感触を実感しつつも、そのれずっと堪能しているわけにもいかないので少女を引きはがす。引きはがされた少女も残念そうな一瞬見せたが、離されるのが分かっていたのか直ぐに表情を明るくする。


 「ところで何で制服なんだ?」


 離れた少女を改めてみた陸は、彼女が学園の制服を着ていることに気付いて問いかける。少女は学園の生徒という訳ではなかったので制服姿に疑問を抱いたのだ。


 「この格好だと目立たないと思ってなのだ。そっちの方がいいだろう?」

 「そうだな」


 確認するように返した言葉に陸も即答で頷く。

 ただでさえ男の魔女ということで目立つのだ。それが生徒でもない者と一緒に居れb更に目立つのは目に見えている。生徒全ての顔を覚えている者なんていないだろうし、そうでない限りこの青髪の少女が生徒でないとは分からないだろう。それを狙っての制服姿だった。

 関係のないものが学園に居ると思われると色々と面倒なのだ。


 「で、どうなのだ?」

 「何がだ?」

 「決まっている。我の制服姿はどうかと訊いているのだ」


 それともう一つ制服になったのは陸に見せるためでもある。

 ここまで陸は多くの制服の少女達に囲まれてきた。だからそれに対抗して自分もっ制服姿になり、少年の感想を求めたのだ。


 「特に何もないけど」

 「酷い。もっと可愛いとか言ってくれればいいのに。相変わらず冷たいのだ」


 またしても一瞬残念そうな顔になるが、やはり帰ってくる言葉は予想通りだったのか直ぐに表情を明るくした。


 と、そこで誰かに会うだろうと廊下を歩いていた二人が通路の先に人影を見つける。


 「あの娘たちに訊こう」

 「そうだな」


 通路の先に見て桁数人の少女の集団にそのまま歩いて近づいていき、話しかける。

 その直前で少女たちは少年たちに気付き、立ち止まって何かをこそこそと話していたが、まさか話しかけられるとは思っていなかったのか、声を掛けると驚いた顔をして答えた。


 「えっと、訊きたいことがあるんだけど」

 「え、あ、はい。な、何ですか?」


 戸惑った様子で訊き返す集団の中の一人の少女。少し緊張しているよおうに見える。


 「学生寮ってそこにあるか教えてほしいんだけど」

 「が、学生寮ですか?それならこの校舎の東側にありますけど…」」

 「ありがとう」


 戸惑いながらも答えてくれる少女。それに礼をいって歩き出そうとしたのだが、その前に学生寮の場所を教えてくれた少女とは違う少女が話しかけてきた。


 「あの、あなたって本当に魔女なんですか?」

 「あぁ、そうだけど」

 

 その返答にに数人の少女達が盛り上がる。さっきも全校集会で聞いたが、それでもこうして改めて自分たちがt直接訪ねて聞いたことで、より真実味がましテンションが上がったのだ。


 「ま、魔法見せてください!」


 肯定した少年の言葉に興奮したのか魔法を見せてほしいと、また別の少女が要求してきた。


 「えっと…」

 「それはまた別の機会にしてくれる」


 急な要求に戸惑っていた少年だったが、別のところから話に割って入ってくる声があった。

 

 「時安(ときやす)会長!?」


 声がした方向、少年の後ろ側に全員の視線が向けられると、そこにいたのは生徒会長の時安世界だった。


 「彼と話があるからいいかな?」

 「はい!私たちは失礼します」


 時安の言葉に元気よく頷いてぺこりと頭を下げて数人の少女達が廊下を歩いて行った。

 陸たちがいた方向にある良く少女達はワイワイと話に花を咲かせながら金井盛り上がっているようだった。

 突然、今最も話題に上がる男の魔女に話しかけられて、その後にみんなが尊敬する生徒会長に話しかけられた。その二つの出来事で少女達のテンションはかなり高まっているようだった。

 

 「それで、また何か話か?」

 「違うぞ。世界は助けてくれたのだ」

 「助けてくれた?」


 急な要求に困っていたから、それを助けてくれた。青髪の少女はそう言ったが、緑髪の少女はそれを否定した。


 「別にそういうつもりはなかったよ」

 「だ、そうだ」


 的外れなことを言ったにもかかわらず全く恥じる様子もなく緑髪の少女の言葉に頷く。

 それを気にすることなく緑髪の時安は青髪の少女に話しかける。


 「陸くんに話、というかようがあるのは本当だけど、それよりも君は?」


 陸の隣にいる青髪少女。彼女が誰なのか気になった時安は誰かを尋ねる。


 「…こいつとは昔からの知り合いでな。さっき会ったんだ」


 予めこの質問に対する返答は考えていた。こうして一緒に居るところを見られれば関係などを尋ねられるのは予想していた。そういった時余計な面倒を避けるための言い訳を用意していたのだ。

 青髪の少女とは昔からの知り合いで、魔女になって入学してきた今生徒である彼女と再会した。というような設定だ。

 制服姿を見てそれが一番面倒ごとを避けられるとついさっき二人で話していたのだ。


 だけど、そのっ説明では生徒会長は納得してくれなかったらしい。


 「君はここの生徒じゃないよね?どうして制服を?」


 生徒会長の疑問の言葉に沈黙する。

 どうしてバレたのか。

 だけどそれは簡単な理由だった。


 「私は全校生徒の顔と名前を憶えてるからね。君がここの生徒じゃないのは直ぐに分かるよ」

 

 そんな奴はいないと思っていた。

 生徒全ての顔と名前を憶えているっ奴なんていないから制服を着ていれば生徒だと勝手に勘違いしてくれるだろうと考えていたのに。


 「それ本当か?」

 「うん」


 笑顔で頷く時安世界。

 それに苦笑するしかなかった。


 「バレたなら仕方ないな。我はレヴィ。陸の将来の伴侶なのだ」

 「さっらと嘘を混ぜるな」


 青髪の少女、レヴィは胸を張って自分の名前を名乗る。当然伴侶とか言う言葉はまるっきしの嘘で少年は呆れるようにツッコんでいた。


 「それでレヴィさん、君は制服を着てるのかな」

 「…陸、この場合どうこたえるのが正解なのだ?いつも通りでいいのか?」


 時安の質問にどう答えていいか迷ったレヴィは陸に確認する。

 それに少年は頷いて返す。


 「そだないつも通りの説明で行こう」

 「うむ。改めて我は精霊のようなものだ」


 自分は精霊であり、だからそれを隠していた。

 その説明を聞いた時安は成程と頷く。


 「見た目が人と変わらない精霊。確かにそれだったら隠しておいた府がいいね」


 精霊という少女は人間と全く見分けがつかない見た目をしている。特殊な存在だということはそれで理解できた。なら隠そうとしたのも理解できる。


 「それなら秘密にしておくね」

 「頼む」


 そこでうんうんと頷いている青髪少女。

 うまく話を誤魔化すことが出来た。と満足そうである。


 「それで本題の話なんだけど」


 謎の青髪少女への疑問が解けたところで時安は少年に視線を向ける。本来の要件は陸にあったのだ。


 「君を学区制量にあんなしようと思っていたんだけど、がくえんちゅ室を出て勝手に歩いていくから探したよ」


 学園長との話が終わった陸を学生寮の彼の部屋まで案内する。それが目的で話しかけたのだ。


 「そうだったのか。それは悪かったな」


 生徒会長の行為に感謝しつつも、探す手間をかけたと謝罪する陸。


 「だけどそれだったら部屋の前で待ってくれればよかったのに」

 「ちょっと用事があって外してたんだよ」

 「用事?」

 「女の子に言わせる?お手洗いに行ってたんだよ」

 「あー、それは悪かった」


 少し恥ずかしそうに何処へ行っていたのかを告げる時安。それに少年は気まずそうにしながら謝罪した。


 「それじゃあ行こうか」


 だけど恥ずかしそうにしたのも少しの間だけですぐに切り替える。今から陸を学生寮まで案内してくれるようだ。

 

 それから三人は話をしながら時安の案内で学生寮に向かった。




 「ここが君たち(・・・)の部屋だよ」

 「あぁ、ありがとう」


 学生寮のとある部屋の前までやってきた。


 「また何かあれば私に相談してね」


 最後にきりっとした顔で言った時安世界とはそこで別れ陸は扉を開いた。




 「おかえり」

 「…どうしてここに居るんだ真白」


 部屋の扉を開けるとそこには空色髪の少女がいた。

 何か話でも合って陸が返ってくるのを待っていたのか。本人よりも咲に部屋の位置を知っていたのには少し言いたいことがあるが、話があるなら聞こう。

 そう思ったのだが真白の返ってきた言葉でそれは否定される、


 「ここは私の部屋。居るのは当然」

 「え?いや、俺の部屋はないのか?」


 真白が告げた言葉に戸惑う少年。

 ここは確かに自分の部屋だと紹介されたはずだ。部屋の前まで案内してもらったのだから間違えるはずはない。まさか生徒会長が間違ったのか。

 そんな戸惑う少年は気にせず疑問に答える空色髪の少女。


 「そう。陸の部屋」

 「は?」


 どっちだよ。と、陸は少女の言葉にますます戸惑いを強くする。

 しかし陸の隣にいたレヴィは納得するように頷いていた。


 「成程、つまり同室ということだな」

 「そう」

 「…は?」


 レヴィの言葉に思考が一瞬固まる陸。

 同室?しかし陸と真白は男女だ。それが同室なんてああるのか?

 止まった思考が動いたとき、今度はぐるぐると回転したような混乱した思考になる。


 「いやいやおかしいだろ!俺は男だぞ!?」

 「仕方ない」


 戸惑いで思わず声が大きくなるって叫んでしまうが対する空色髪の少女は気にする様子もなくなんてことないように頷く。真白は同室であるということには特に気にしていないようだ。


 「何がしかたないんだよ!」


 空色髪の少女の考えが理解できない少年は冷静になれず声を荒げていた。

 普段は割と冷静でいることの多い少年だが、その理解を一定以上超えるとこうして慌てて冷静になるのに少し時間がかかることがある。

 こういった時陸をいつも落ち着かせてくれるのは、いつも隣に居る少女だ。


 「落ち着くのだ。仕方ないと言っているのだし何か理由があるのだろう。それに言っていたではないか、『真白を頼む』と」

 「…分かった。もう落ち着いたから抱きしめるのはやめろ」


 レヴィが陸を落ち着かせるときは大体こうして正面から抱きしめる。幼子をいつくしむ聖母のようにそっと優しく抱擁する。

 そのいつもの雰囲気とは違う行動からくる温もりに心が和むのを感じながらも照れ臭くなり直ぐに離れるように言ってしまう。

 

 「うむ、落ち着いたようでよかったのだ」


 少年を解放したレヴィは満足そうに腕を組んで頷く。

 そして続ける。


 「だが、もっと我の柔らかさを感じていてもよかったのだぞ?」


 さっきの包容力はどこへやら。いつものふざけた他愛度に戻るレヴィ。


 「…それで、何で同室なんだ?」


 落ち着いた陸は改めて真白に同室の理由を訊く。


 「それは――」


 そうして服を抜く真白だった。

姫神(ひめがみ)芹佳(せりか)

魔法名:雷姫(らいひめ)

能力:魔力により雷を生み出す。




「時安会長との会話で『精霊』って出てきたけど、その説明は?」

レヴィ

「それはおいおいなのだ。そんなことよりもようやく我の登場だ!」

「そんなことって、まぁいいけど。ところで、なんか不穏な終わり方なんでけど」

レヴィ

「次回、陸が真白を食べるぞ」

「おい、変なことを言うな」

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