竜と姫 海賊に立ち向かう
ある日、王女アレサは城をとびだして、ドラゴンのゴランの背中の上で、のんびりと空でのひとときを楽しんでいた。ふと見下ろすと、帆掛け船が騒々しい。アレサはゴランをその船に接近させる。
彼女は船員に声をかけた。
「どうしたの?」
「か、海賊に襲われました。人質をとられた上に、金まで持っていかれました!」
「奴らはどこに消えたの?」
「あっちでさ」
アレサは船員が指さす方向に向かって飛んで行った。それから十数分ほどで、海賊の船に追いついた。彼女は少しの間、その船の周りを旋回した。船のうえでは、海賊たちがおや?という表情で見上げている。
アレサは鏡で光を反射さて信号を送った。
「ヒトト カネヲ サラッタノハ オマエタチカ」
海賊たちはなおもポカンとしている。
「イマ コウサン スレバ カネハ サンブンノイチダケ クレテヤル。ノコリト ヒトジチヲ オイテ ソッコク タイキョ セヨ。サモナクバ オマエラ ゼンイン ワガケンノ サビニスル」
これにいきり立った海賊たちは、アレサたちに矢を射かけてきた。だが、その大量に降り注ぐように襲う矢をものともせず、彼女たちはことごとくかわす。
ほどなくアレサはまた信号を発する。
「オマエタチニ カチメハ ナイ」
海賊たちの怒号が聞こえてきた。
「コレガ サイゴノ ケイコクダ。 タダチニ コウサン セヨ。ソノ シルシトシテ ヒトジチト カネヲ オイテ サレ。シタガワネバ ミノ アンゼンハ ホショウ シナイ」
海賊連中が警告に応じる気配はない。たまりかねたアレサはゴランに指示をし、船に迫る。
「最後の勝負だ。来い!」
海賊はそう言って車輪つきの弩砲を持ち出した。アレサたちに向けて彼は引き金に手をかける。互いの姿がはっきりと見えるほどに接近したかと思うと、アレサはゴランから飛び降り、弩砲を構える彼めがけて剣を振り下ろした。
弩砲は真っ二つになり、男は無傷の状態でへたりこんだ。
「ひいい・・・・・・」
彼は情けない声をだし、腰を抜かした。しばらくして、海賊船の周りを、衛士で満載にした船が取り囲んだ。人質たちと金が衛士たちの船に移された。これを見てアレサたちは、意気揚々と帰路についた。