プロローグ 結婚してください!
よろしくお願いします!
「アシュリさんっ!好きです!愛してます!俺の戸籍は真っ新ではないけれど、俺の俺は真っ新で未使用で未だ清い身です!!だからお願いしますっ!どうか結婚してくださいっ!!」
「お断りいたします」
「なんでっ!?」
……なんでって。もう何回断り続けていると思ってるんだ。
わたしは誰とも結婚するつもりはない。
そう言っているのに、彼…シグルド=スタングレイは諦める事なく何度も求婚してくる。
魔術師専用の小さな下宿屋を営むわたしに、店子であったシグルドが一目惚れしたらしく、入居以来ずっと猛アタック、猛アプローチを受け続けていた。
プロポーズされ始めてひと月が過ぎ、半年が過ぎ、一年が過ぎ……
気が付けばすっかり絆され、絡め取られて婚姻届にサインをしていた。
………はて?どうしてこうなった?
いつの間にこんなおかしな魔術師に恋をしてしまったのか。
気付けば彼の事が愛しくて可愛くて大好きになっていた。
まぁ全身全霊を懸けて愛してくれる人を相手にし続けて、絆されない人間の方が少ないのではないかとも思う。
「嬉しい。俺の妻になってくれてありがとうアシュリ。一生大切にする、愛してる。本当に大好きだアシュリ」
「まぁ……わたしも愛し……てるかな」
「アシュリ!!」
「きゃあっ!?」
………まぁね、夫婦になったんだからね。
婚姻届にサインしてすぐに押し倒されたとしても許してあげるんだけどね。
惚れた弱みだからね。