これは乙女の戦争です
ちまちまと書いていますが今読みたいブームに入りまして、読む方に専念してしまったので書くのが遅くなっています
「ど、ど、どうしよう!!」
その日は朝から天気が良かったので、庭で散歩でもと思っていたのにメイドから貰った手紙を見て冷や汗が止まらない。
――バンッ!
「お兄様!」
「おまっ……いくら兄妹でもいきなり扉開けるか?」
出勤の準備をしていた兄の部屋へ突撃する。
「それどころではありません! これを見て下さい!」
「ん? お茶会の手紙じゃないかそれがどうした?」
「ただの招待状じゃないんです! 王太子殿下の婚約者ケイトリン様からの招待状なんです!」
「……ルーナってノクターン嬢と知り合いだったけ?」
「そんな訳ないでしょ!? これはもしやこの前のお茶会を台無しにしたから怒ってらっしゃるんだわ!」
「そんな人には見えないけどな」
「淑女が分かりやすい顔色なんかする訳ないでしょ。 ましてや殿下の婚約者なのに」
「ルーナは分かりやすいけどな」
「うるさいですよ!」
まさかの方からのお誘いに本音は行きたくないが、行かないという選択肢はないわけですぐ様返事を出すこ事に。
「あー、どうしましょ。 他の令嬢の前で言われたら恥ずかしくて表に出れなくなる」
「ただのお茶会かもしれないだろ」
「……お兄様は呑気でいいですね」
これは乙女の戦争なのだ。気楽に行くものではない。
とりあえず出会ったらすぐに謝ろうとだけ心に決める。
※
そして決戦の日。
「生きて帰って来れるかしら……」
「おー、骨は拾ってやるから」
城に出勤するお兄様と一緒に向かい別れる。
案内の人に通され中に進み、庭園に向かっていたのできっとそこでお茶会をするのだろう。
手入れが行き届いている庭園では様々な花が咲き乱れていた。
そこにテーブルと椅子が用意されていた。
他のご令嬢はまだなのかしらと思いながら、案内され座ったもののふと気付く。
「椅子が二つしか、ない……だとっ!?」
そうルーナが座った椅子と前の椅子の二つしか置いていなかったのだ。
という事は……
「わたし、とケイトリン様の二人」
理解が追いつかず、混乱している中……
「お待たせ致しました」
やって来てしまったのだ。
その美しいお姿に見とれてしまったが、はっと気づきすぐ様立ち淑女の礼をとる。
「あぁ、畏まらないで今日はそう言うのではないから。 お掛けになって下さい」
「し、失礼します」
ケイトリンが座ったのを見てから座る。
すぐ様メイドが飲み物とお菓子を用意しそのまま下がっていく。
「今日はごめんなさい、突然お呼びしてしまって」
「い、いえとんでも御座いません」
「知っていると思うけど、わたくしケイトリン・ノクターンです」
「ルーナ・モラレスと申します! 本日はお誘い頂きありがとうございます」
「モラレス家には将軍やお兄様に大変お世話になっているわね」
「我が家としては当たり前の事でごさいます」
当たり障りのない会話に内心ひやひやしている。
「他に人がいないから驚いたでしょう?」
「あ、いえ」
「こうでもしないと貴女とお話しできないから」
やっぱりこの前のお茶会の事だ!!
人がいる前では言えないからこっそり呼んで……。
これは早めに謝罪をしないと!!
「この前のお茶会での事なのだけ……」
「申し訳ありませんでした!!!」
「え?」
「せっかくのケイトリン様のお茶会でしたのに、私のせいで台無しにしてしまいました! 私に出来ることは何でもしますのでどうか父や兄にはっ!」
「ちょ、ちょっと待って、どうしたの?」
「へ? お茶会を台無しにした私にお咎めがあるのでは?」
「そんな事でお咎めなんてありません。 そもそもあれは貴女は悪くないでしょ」
「え、じゃあ何故わたしはここに……」
お咎めじゃないなら呼ばれた理由は?
「そのお茶会で見事な右ストレートに惚れたと言う変なひ……方が来ませんでしたか?」
「ストッ……来ました」
つい最近の出来事すぎて忘れられない。
「フィン・ウッド様ですよね」
「あら、知っていたの?」
「兄から聞きまして」
「そう、そのフィンが貴女と話がしたいそうなの」
「え!?」
「ほんっとに乙女心を分かっていないアホであるけれど」
「あほ……」
「あれでも幼なじみだし、本気の恋だという事ぐらいは分かるのよ」
「え、は、こい?」
「後は貴方次第よフィン」
「え」
後ろを振り向くとそこには昨日強烈な結婚を申し込んだフィン・ウッドが立っていた。
「悪いなケイトリン」
「今回だけですわよ」
「あ、あの……」
思考が追いつかないままケイトリンは退席し、代わりにフィンが座る。
「初めまして、フィン・ウッドです」
「あ、ルーナ・モラレスで……す」
「この前のお詫びをしようとケイトリンに頼んだんだ」
「はぁ」
「この前は突然済まなかった」
頭を下げるフィンに驚く。
「え! あ、頭を上げて下さいウッド様!」
「初対面だったのにも関わらず突然腕を掴んで結婚してくれ等と……ましてや拳に惚れたなんて言葉、淑女に言う事じゃなかった」
「わ、わたしも驚いてつい返事もせず帰ってしまいましたし……」
「いや、返事はあの時貰わなくてよかった」
それって勢いで言ったけど冷静になったら違ったとか?
「あのままでは俺の本気が伝わらなかっただろうし」
「ほん、き?」
「あぁ、ルーナ嬢。 俺は本気で君に惚れたんだ、だから改めて結婚の申し込みをしたい」
「っ!」
「俺と結婚して欲しい」