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■第四十三話 そして、これから


「……そうだが、何か問題が?」

「問題というより、え? どうしてですか」


 高そうなもので、ご褒美というわけではないと思う。

 いや、確かに求婚用だと言われて、それを否定しなかった覚えがある。


「……あ、もしかして副葬品ですか? あまりに貧相な埋葬になるのは……という思いやりから」

「怒るぞ」

「いえその前から怒っていますよね!? というか、怒るなら理由を言ってくださらないとただの理不尽ですからね!?」


 しかしそれ以外に思いつかないとばかりに反論すれば、シリルは「察しが悪い。悪すぎる」と頭を抱えていた。


「だから、旅が終わったらエスタに渡すつもりだったんだ。その前にいなくなりやがって……探したらここにいた」

「だからって……え? それって……これ、私のなのですか?」

「そうだ」

「え……なんで?」


 いや、もしかしたら告白されようとしていたのかもしれない。

 そのような可能性が頭をよぎらないこともない。

 ただ、そう考えても即座に『それはないか』と打ち消す自分もそこにいる。

 だが、問い返したアリアにシリルはこれでもかというほど恨めしい視線を向けた。


「絶対言わない」

「え」

「少なくとも今のお前に言ったら犯罪だと疑われかねない」

「え」

「成人でもしたら覚悟しておけ」


 それは、実質的な告白ではないのかとアリアは思った。

 思ったが、口にはできなかった。

 何も言わせないほど、圧がすごかった。


(もともとスティルフォード様の目つきは相当悪かったけれど、これ、たぶんウィリアムでも相当怖い顔をしてそうな気が……)


 だがそんなことを思いはしても、はいともいいえとも言えはしない。

 むしろここで『千年前に婚約者がいると思っていたから私もなにも言いませんでした』など、どのように言えるだろうか。言ったところでシリルはアリアのことを『子供』と言ったのだから、何らかの返事が返ってくるとも思い難い。

 しかし、アリアがそんなことを考えていた間にもシリルは次の瞬間、叫んでしまった。


「あああああああああ。なんかいろいろ思い出して、いろいろ面倒だ。絶対今の状態でウィリアムの話し方とかしたらとんでもないことになりそうだ。なんなんだ、あの優等生みたいな話し方」

「……確かに様子はだいぶ違いますし、周囲は戸惑うでしょうね。でも、過去の自分をそのように否定をしなくても……。それに、根本的な性格は似てるんじゃないですか」

「どこがだ」

「面倒見がいいところとか、根が優しいからじゃないですか」


 しかし、その言葉に対して返ってきたのは強い睨みだった。

 だが、それは怒っているというより必死で照れることを堪えているようにも見えた。


「……とりあえず、今後もご指導をお願いしますね、スティルフォード様」

「もう、シリルでいい。長いし」

「では、シリル様。よろしくお願いしますね」

「しかし、お前も別に騎士になる必要なんてなかっただろうに。エイフリート家のお嬢様が、またなんで騎士なんかに……。いや、墓所とは言ってたけど、それだけでなるものでもないだろ」

「ああ、それでしたら答えは簡単ですよ。前世でとてもかっこよく前線で剣を振るっている方がいらっしゃいましたので。私もそういう人になりたいと思ったわけです」


 そうアリアが言えば、シリルは面食らったようだった。

 その表情にアリアは思わず笑いを零した。


「とても格好のいい方だったんですよ。詳しく知りたいと思われますか?」


 続けざまにそういえば、硬直していたシリルが徐々に顔を赤くした。


「別に聞きたくない」

「あら、残念」

「からかうな!」


 からかっているわけではないのだが、驚かされたのだからこれくらい驚かしても罰は当たらないとアリアは思う。


(でも、ウィリアムだったのね)


 ところどころ似ているとは思っていたものの、こんなに近くにいたとはと改めて驚いた。


(せっかく二度目の人生で、前世やりきれなかったことまでできそうだから、毎日をより大事にしなくちゃ)


 それから成人したときにシリルの気が変わらないよう、今からしっかりといいところを見せられるようにしなければいけないとも思う。

 そしてとりあえず今生は自分が死なないよう、そしてシリルが死なないように隣に立ち続けられるように強くなろうということと、そして経験したことのないことにも向かっていこうとアリアは誓った。




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