■第九話 旅立ち(一)
7月1日、第9話を別作品と入れ違えており、修正いたしました。
申し訳ございません。
ーーーー
翌朝、朝食を終えたアリアはブルーノと庭を歩いた。
「本当に信じがたいことだが、私の目は今日も世界を映している。ありがとう」
「叔父様が喜んでくださって嬉しいです。これで、叔父様の狩りにもよりよい結果が生まれるよう、祈っております」
「ああ。狩りもそうだが……実は、以前より後進育成のための誘いも受けていたんだ。本調子でない者がそのような場には不似合いだと固辞してきたが、鍛え直せば、今ならできると思う。もっとも、仕事を与えてくれていた兄上には相談が必要だが」
「それは……とてもよかったです」
原因だとは聞いていても、そこまでのことは考えていなかった。
期待に胸を躍らせているブルーノの姿はアリアの気持ちも晴れやかなものにさせる。
「アリアとの『内緒』の約束だから、目のことは時間の経過で治ったのだと思っておくことにするよ」
「ありがとうございます」
「感謝しているのはこちらだ。ああ、それから昨夜、これを書いておいたんだ。受け取ってくれ」
そうしてブルーノは白い封筒をアリアに渡した。
「これは?」
「魔騎士となるための推薦状の下書きだ。兄上もアリアが一人で王都に行けるようになれば入隊を認めるそうだ」
「一人で、でございますか?」
「ああ。保護者がいなければ王都に行けないような者が騎士を目指すのはどうかと仰った。確かにその通りだが、王都はアリアが一度も行ったことがない場所だ。不安もあると思うが……」
「大丈夫です、叔父様。地図では学んでおりますし、ほとんど整備された街道を通りますよね」
「ああ。ただ、主要都市と主要都市の間にしか辻馬車はない。まだアリアは馬に乗れないだろう」
「大丈夫です、特訓しますから」
もとより、前世では乗馬の経験はある。
背丈が小さくはなっているが、自分ほどの背丈の者が乗っているのを見たこともあるし、騎乗で戦うならともかく、移動手段としては会得できるはずだ。
「そうか。ならば、さっそく今日から練習してみよう。指導は私が任せられよう」
「ありがとうございます」
「その前に兄上のところに行っておいで」
「はい。ありがとうございます」
父の部屋に向かった後は、着替えてさっそくブルーノのもとへ行こうとアリアは心を躍らせた。
一方、残されたブルーノは肩を竦めていた。
「兄上、あなたは凄い娘の父親になっておられたんですね」
もちろん、その言葉は誰にも届くことはなかった。