ドライフラワーのような恋
前回の続きです。
最終話まであります。
第三話
蓮と別れて半年が経った。連絡先はまだ消せずにいる。そんなある日、蓮からメールが届いた。
・・久しぶり。元気?・・
何、いきなり。そう思ったが、無視することは出来なかった。
・・元気だよ。どうしたのいきなり・・
・・いや、何となく。連絡先消してなかったから、葵はどうかなって思っただけ・・
なにそれ。でも、久しぶりに連絡が取れて少しだけ嬉しい自分がいる。
・・そっか。私も消してないよ・・
あの日のことはもうそれほど引きずってはいない。出来れば、友達だったあの頃に戻りたい、なんて考えたりもする。
それから返信はなかった。相変わらず都合のいいやつ。まあいいけど。
私には新しい彼氏ができた。会社の同僚の翔太で、蓮と付き合っている時から色々と話を聞いてもらっていて、別れた後も励ましてくれた。それからご飯に行くようになり、付き合うことになった。
翔太とは蓮の時と違って、何でも言い合えて、すぐ仲直りも出来る関係だったから、悩んだり我慢することはほとんどなかった。
翔太と付き合って、半年が過ぎた。私は今でもふとした瞬間に蓮のことを思い出す。
蓮と行った公園、海、スカイツリー・・。どこも翔太と行くたびに、あの頃の思い出が蘇ってしまう。
やっぱり私、蓮のことまだ忘れられてないじゃん。
最低で、自分勝手で大嫌いだと思っていた蓮のことが、まだ忘れられずにいるんじゃん。
もう隣にはいない。でも、蓮との思い出だけが、ドライフラワーのように褪せること
なく色鮮やかに残っている。
「あんなやつなんか嫌いだ、うん、嫌い・・・大嫌い」
嫌いなはずなのに、涙が止まらない。
こんな感情を抱きながら、翔太とはいられない。翔太といても、蓮との思い出には勝てそうにない。やっぱり蓮、私はあなたじゃなきゃだめなのかも。
そして、葵は翔太と別れた。元彼が忘れられないとは言えなくて、別の適当な理由でまたしても恋人に別れうを告げた。もちろん翔太は納得はしていなかったが、私の意思が頑なだったため、やむおえず了承した感じだった。
蓮。蓮は今どう思っている?私のことなんてもう忘れちゃったかな?私から別れを告げてたのに、都合がいいことはわかってる、でも、まだ蓮を忘れられないよ。
この気持ちを伝えたい。
メールを開き、蓮に1年ぶりに自分からメッセージを送った。
最終話
仕事帰り、スマホが鳴った。画面に映し出された名前を見て驚いた。葵からだ。前に一度だけメールをしたが、特に用もなかったので既読無視をして以来だ。向こうからメールが来ることはないと思っていたのに。
・・久しぶり。今大丈夫?会って話したいことがあるんだけど・・
何だろう。確か葵には彼氏がいたはずじゃ。
・・今日は厳しいかな。明日の仕事終わりとかなら大丈夫・・
別に今日も暇なのだが、心の準備が必要だった。俺はあの日から葵を忘れたことはないし、葵のことを忘れさせてくれる人ともと出会えてない。友達でもいい、またあの頃のように話がしたい。笑い合いたい。そう思っていたから。
・・わかった。明日の20時に公園で待ってるね・・
会ってくれるんだ。よかった。
蓮とまた話せる。それだけで嬉しかった。
私は約束の30分前に公園に行った。ここは蓮ときたことがある。その時のことを思い出しながら公園内を散歩して、蓮を待った。
・・着いたよ。どこ?・・
・・滑り台のとこ・・
滑り台に向かうと照明があり、そこには懐かしい面影があった。
「よう、久しぶり」
「久しぶり。ごめんね、仕事帰りに呼び出しちゃって」
葵はそう言って笑った。本当に久しぶり、葵も、葵の笑った顔も。
「いいよ。葵から呼び出すってなかなかないし、何かあったのかなって思ったから」
自分からは会いたい、なんていう勇気がなかったから、葵から誘ってもらえて嬉しい。
暗闇から蓮の姿が確認できた。自然と体温が上がる。
会いたかった。話がしたかった。
「私、彼氏と別れちゃった。はは」
「え、まじ?なんで?」
伝えたい。あなたのことが忘れられられなかった、またあの頃のように2人でいたい。
「私・・・」
「・・・うん」
「・・ふ、振られちゃってさ」
だめ、やっぱり言えない。
「そうなのか。残念だったな。・・次、次頑張ろ。葵は可愛いんだからきっといい人が見つかるって」
なんでそんなこと言うの。
押さえ込んでいた感情が溢れ出でそうになるのを必死に止める。
「もう今は、恋愛とかはいいかな。今は仕事が大変だし。頑張らないといけないから」
嘘。嘘だよ。私は蓮とじゃなきゃだめなんだよ。でも、またあの日みたいに喧嘩して別れたら、それこそもう二度と会えなくなる気がして怖いの。だから言えない。
こみ上げてくる涙を私は一生懸命我慢した。
「そうだな。今はそっちの方がいいのかもな。俺もまだまだ仕事で覚えることあるし、お互い頑張ろうぜ」
そう言って蓮は笑っていた。私の、この世で1番好きだった、いや、今も大好きな笑顔で。
それからどれくらい話しただろう。付き合ってた時の思い出話や、最近会ったことなど色んな話をした。
結局、気持ちは伝えられなかった。でも、蓮とまた話せた。笑い合えた。それだけで十分だ。
蓮。私ね、あなたにことが好き。言葉にしなきゃ伝わらないよね。でもいいの、この気持ちは私の心の中にしまっておくから。いつか、別の恋人ができたとしても、これは過去の楽しかった思い出として残しておくから。
葵。俺、まだ葵のこと忘れられない。でも今の俺じゃ、またあの頃みたいに傷つけて、我慢ばかりさせるかもしれない。それは嫌だ。だから俺からやり直したい、だなんて言えない。あの頃、俺が葵のことをもっとわかってあげていれば、今も2人でいれたのかなって。思い出すたびに後悔が残っているよ。でも、残っているのは後悔だけじゃない。楽しかった、幸せだった日々もちゃんと心に残っているよ。
この気持ちを、いつか伝えられたらいいな。葵、君が好きだ。いっぱいいっぱいごめんね。
蓮。私はあの頃、あなたの心の中に住めたかな?忘れられない、楽しかった思い出として刻まれてるかな?忘れないでいてほしいな。
蓮。あなたのことが大好きでした。ありがとう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。