表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドライフラワーのような恋

作者: たいが

前回の続きです。

最終話まであります。

第三話


 蓮と別れて半年が経った。連絡先はまだ消せずにいる。そんなある日、蓮からメールが届いた。

 ・・久しぶり。元気?・・

 何、いきなり。そう思ったが、無視することは出来なかった。

 ・・元気だよ。どうしたのいきなり・・

 ・・いや、何となく。連絡先消してなかったから、葵はどうかなって思っただけ・・

 なにそれ。でも、久しぶりに連絡が取れて少しだけ嬉しい自分がいる。

 ・・そっか。私も消してないよ・・

 あの日のことはもうそれほど引きずってはいない。出来れば、友達だったあの頃に戻りたい、なんて考えたりもする。

 それから返信はなかった。相変わらず都合のいいやつ。まあいいけど。


 私には新しい彼氏ができた。会社の同僚の翔太で、蓮と付き合っている時から色々と話を聞いてもらっていて、別れた後も励ましてくれた。それからご飯に行くようになり、付き合うことになった。

 翔太とは蓮の時と違って、何でも言い合えて、すぐ仲直りも出来る関係だったから、悩んだり我慢することはほとんどなかった。


 翔太と付き合って、半年が過ぎた。私は今でもふとした瞬間に蓮のことを思い出す。

 蓮と行った公園、海、スカイツリー・・。どこも翔太と行くたびに、あの頃の思い出が蘇ってしまう。

 やっぱり私、蓮のことまだ忘れられてないじゃん。

 最低で、自分勝手で大嫌いだと思っていた蓮のことが、まだ忘れられずにいるんじゃん。

 もう隣にはいない。でも、蓮との思い出だけが、ドライフラワーのように褪せること

なく色鮮やかに残っている。

 「あんなやつなんか嫌いだ、うん、嫌い・・・大嫌い」

 嫌いなはずなのに、涙が止まらない。

 こんな感情を抱きながら、翔太とはいられない。翔太といても、蓮との思い出には勝てそうにない。やっぱり蓮、私はあなたじゃなきゃだめなのかも。

 そして、葵は翔太と別れた。元彼が忘れられないとは言えなくて、別の適当な理由でまたしても恋人に別れうを告げた。もちろん翔太は納得はしていなかったが、私の意思が頑なだったため、やむおえず了承した感じだった。


 蓮。蓮は今どう思っている?私のことなんてもう忘れちゃったかな?私から別れを告げてたのに、都合がいいことはわかってる、でも、まだ蓮を忘れられないよ。

 この気持ちを伝えたい。

 メールを開き、蓮に1年ぶりに自分からメッセージを送った。


最終話


 仕事帰り、スマホが鳴った。画面に映し出された名前を見て驚いた。葵からだ。前に一度だけメールをしたが、特に用もなかったので既読無視をして以来だ。向こうからメールが来ることはないと思っていたのに。

 ・・久しぶり。今大丈夫?会って話したいことがあるんだけど・・

 何だろう。確か葵には彼氏がいたはずじゃ。

 ・・今日は厳しいかな。明日の仕事終わりとかなら大丈夫・・

 別に今日も暇なのだが、心の準備が必要だった。俺はあの日から葵を忘れたことはないし、葵のことを忘れさせてくれる人ともと出会えてない。友達でもいい、またあの頃のように話がしたい。笑い合いたい。そう思っていたから。

 ・・わかった。明日の20時に公園で待ってるね・・



 会ってくれるんだ。よかった。

 蓮とまた話せる。それだけで嬉しかった。

 私は約束の30分前に公園に行った。ここは蓮ときたことがある。その時のことを思い出しながら公園内を散歩して、蓮を待った。


 ・・着いたよ。どこ?・・

 ・・滑り台のとこ・・


 滑り台に向かうと照明があり、そこには懐かしい面影があった。

 「よう、久しぶり」

 「久しぶり。ごめんね、仕事帰りに呼び出しちゃって」

 葵はそう言って笑った。本当に久しぶり、葵も、葵の笑った顔も。

 「いいよ。葵から呼び出すってなかなかないし、何かあったのかなって思ったから」

 自分からは会いたい、なんていう勇気がなかったから、葵から誘ってもらえて嬉しい。



 暗闇から蓮の姿が確認できた。自然と体温が上がる。

 会いたかった。話がしたかった。

 「私、彼氏と別れちゃった。はは」

 「え、まじ?なんで?」

 伝えたい。あなたのことが忘れられられなかった、またあの頃のように2人でいたい。

 「私・・・」

 「・・・うん」

 「・・ふ、振られちゃってさ」

 だめ、やっぱり言えない。

 「そうなのか。残念だったな。・・次、次頑張ろ。葵は可愛いんだからきっといい人が見つかるって」

 なんでそんなこと言うの。

 押さえ込んでいた感情が溢れ出でそうになるのを必死に止める。

 「もう今は、恋愛とかはいいかな。今は仕事が大変だし。頑張らないといけないから」

 嘘。嘘だよ。私は蓮とじゃなきゃだめなんだよ。でも、またあの日みたいに喧嘩して別れたら、それこそもう二度と会えなくなる気がして怖いの。だから言えない。

 こみ上げてくる涙を私は一生懸命我慢した。

 「そうだな。今はそっちの方がいいのかもな。俺もまだまだ仕事で覚えることあるし、お互い頑張ろうぜ」

 そう言って蓮は笑っていた。私の、この世で1番好きだった、いや、今も大好きな笑顔で。

 それからどれくらい話しただろう。付き合ってた時の思い出話や、最近会ったことなど色んな話をした。

 結局、気持ちは伝えられなかった。でも、蓮とまた話せた。笑い合えた。それだけで十分だ。


 蓮。私ね、あなたにことが好き。言葉にしなきゃ伝わらないよね。でもいいの、この気持ちは私の心の中にしまっておくから。いつか、別の恋人ができたとしても、これは過去の楽しかった思い出として残しておくから。



 葵。俺、まだ葵のこと忘れられない。でも今の俺じゃ、またあの頃みたいに傷つけて、我慢ばかりさせるかもしれない。それは嫌だ。だから俺からやり直したい、だなんて言えない。あの頃、俺が葵のことをもっとわかってあげていれば、今も2人でいれたのかなって。思い出すたびに後悔が残っているよ。でも、残っているのは後悔だけじゃない。楽しかった、幸せだった日々もちゃんと心に残っているよ。

 この気持ちを、いつか伝えられたらいいな。葵、君が好きだ。いっぱいいっぱいごめんね。



 蓮。私はあの頃、あなたの心の中に住めたかな?忘れられない、楽しかった思い出として刻まれてるかな?忘れないでいてほしいな。

 蓮。あなたのことが大好きでした。ありがとう。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ