ライブ前の楽屋にて
ウタオ「うぃ~っす」
ヒキオ「ちわ~っす」
ゲンタ「どうも~っす」
タイ子「プロミ~ッス」
ウタオ「おいタイ子、何だよその挨拶は?ていうか挨拶じゃねぇだろそれ?」
タイ子「はい、挨拶ではないです」
ウタオ「挨拶をしろよ。挨拶はちゃんとしなきゃダメだろ」
タイ子「すみません。ここに来る途中、ちょっとプロミスによって来たんで」
ウタオ「そうなのかよ。ご利用は計画的にな」
タイ子「地球寄ってく?」
ウタオ「そりゃ無人君だ」
タイ子「おはようございます」
ウタオ「このタイミングで挨拶を行うのかよ?」
タイ子「私だけ挨拶がまだだったんで」
ウタオ「まあいいけどな。とにかく本題に入るぞ。それじゃあ聞いてくれ」
ヒキオ「分かりました。チョキン」
ウタオ「ヒキオよ、チョキンって何だよ?」
ヒキオ「え?切った音ですけど?」
ウタオ「何でだよ?」
ヒキオ「いや、リーダーが切ってくれって言うから」
ウタオ「聞いてくれっつったんだよ俺は」
ヒキオ「あ~、なるほど~」
ウタオ「分かるだろそれくらい。そんでお前今何切ったんだよ?」
ヒキオ「えーと、リーダーの左のもみあげを切りました」
ウタオ「俺のレフトサイドモミアゲを切ったのかよ?」
ヒキオ「はい、しかもテクノにしました」
ウタオ「何て事してくれんだよ馬鹿野郎。
これだとお前、左のもみあげが軽くなった分、頭が右に傾く可能性が大じゃねぇか」
ヒキオ「あ、じゃあ右のもみあげも切っちゃいましょうか。チョキン」
ウタオ「俺の許可なしかよ。もういいよ。今日のライブはこのもみあげでいくよ」
ヒキオ「よく似合ってますよリーダー」
ウタオ「バ、バカヤロウ!茶化すんじゃねぇ!」
タイ子「コルトパイソン」
ウタオ「誰も銃の名前を言えなんて言ってねぇぞタイ子」
タイ子「撃つわよ」
ウタオ「撃つなよ」
ゲンタ「リーダー、ちょっといいですか?」
ウタオ「お、何だゲンタ」
ゲンタ「俺と、バンド組みませんか?」
ウタオ「組んでるよとっくに。バンド名から楽器の担当まで全部決まってるよ」
ゲンタ「そして小さなライブハウスで、ライブが出来たらいいなぁ~」
ウタオ「やるんだよ今から。本番前だよ」
ゲンタ「それが俺の人生最大の夢なんです」
ウタオ「今から叶っちまうよ。次の夢を考えとけよ」
ゲンタ「じゃあ俺、高校出たらトラックの運転手になります」
ウタオ「早速決まったなオイ」
ゲンタ「でもね!今はガソリン代が高くてトラック業界は大変なんですよ!」
ウタオ「知らねぇよ!」
ゲンタ「俺、今からタウンワーク買って来ます!」
ウタオ「後でいいんだよそんなモン!今はライブの事だけに集中しろ馬鹿!
だああっ!とにかく聞けお前ら!」
ヒキ・ゲン・タイ「「「はい」」」
ウタオ「いいかお前ら。今日は俺達『酢レモン』の、歴史が始まる初ライブなんだ。
この道で頂点に立つためにも、今日のライブは何としても成功させなきゃなんねぇ。
そのために俺達は血のにじむ努力を重ねてきたんだ」
ヒキオ「でも実際に血はにじんでませんよリーダー」
ウタオ「例えだよ例え!分かるだろ!
それでだな、今日は万全の態勢でライブに臨みたいんだが、
その前にひとつ、お前らに聞いておきたい事がある」
ヒキオ「今日朝ごはんはちゃんと食べてきたのかとか?」
ウタオ「違う」
ゲンタ「俺らの名前を聞きたいとか?」
ウタオ「知ってるよ。お前はもうあんまり喋るな」
タイ子「私は、きっちり月に一度来ます」
ウタオ「誰もお前の生理の周期なんて聞いてねぇよ!」
ヒキオ「セクハラですね」
ウタオ「違うわい!」
ゲンタ「じゃあ、マキハラですね」
ウタオ「じゃあって何でだよ⁉マキハラって誰だよ⁉」
タイ子「それなら何なんですか?」
ウタオ「やっと本題に入れるぜマッタク。
あのな、俺達はこれからステージに上がって、歌ったり演奏したりする訳だが」
ヒキオ「はい」
ウタオ「お前ら、ちゃんと楽器持って来たか?」
ゲンタ「え?」
ウタオ「え?じゃねぇよ。お前ら今自分の手元に楽器がねぇだろ?
まさかこれからライブをやろうってのに、手ぶらでここに来た訳じゃねぇだろうな?」
タイ子「ギクッ!」
ヒキオ「ドキッ!」
ゲンタ「パカッ!」
ウタオ「ゲンタは何の音だよ?それよりタイ子、お前まさかドラムスのくせに、
ドラムセットを忘れたとか言うんじゃねぇだろうな?」
タイ子「す、すみません。実は今朝寝坊しちゃって、慌ててここに来たものだから、
違う物を持って来ちゃいました」
ウタオ「違う物って、何持ってきたんだよ?」
タイ子「ドラ息子を」
ウタオ「ドラ息子を持ってきちゃったの⁉
っていうかそれは物じゃねぇし!人だし!」
ドラ息子「こんにちは。ドラ息子のマキハラです」
ウタオ「お前がマキハラかよ⁉かなりどうでもいいよ!自分でドラとか言うな!」
タイ子「ドラムスなだけに、ドラ息子。ウププ・・・・・・」
ウタオ「何笑ってんだよお前は⁉しっかりしろよマッタク!」
タイ子「すみません。だから今日はこのドラ息子で何とかします」
ウタオ「何とか出来るのかよ?もういいや。じゃあ次、ヒキオ。
お前もまさか、ギターを忘れたとか言うんじゃねぇだろうな?」
ヒキオ「エヘヘ、実は・・・・・・」
ウタオ「実はじゃねぇよお前は。何でライブ当日にギターを忘れんだよ」
ヒキオ「いや、でも俺は、ちゃんとギターの代わりになるものを用意しましたよ?」
ウタオ「何を?」
ヒキオ「バターを」
ウタオ「お前な・・・・・・」
ヒキオ「似てるでしょ?」
ウタオ「バカかお前は⁉」
ヒキオ「バカじゃありません。バタです」
ウタオ「言ってる場合か!ライブにバターなんか持って来てどうすんだよ⁉
全く使い道がねぇじゃねぇか!」
ヒキオ「仕方がないのでこのバターをスピーカーに塗りたくります」
ウタオ「何でだよ⁉そんな事したらスピーカーが壊れるだろうが!」
ヒキオ「でも、ライブ中に興奮して、楽器で機材を壊すロックンローラーも居ますし」
ウタオ「そういうのはギターとかベースで壊すからロックなんだよ!
バターで壊してもただ迷惑なだけじゃねぇか!」
ヒキオ「ちなみにギターピックはちゃんと持って来ましたよ」
ウタオ「缶切りあるけど缶詰め無いみたいな状態!
もういい!おいゲンタ!お前もベース忘れたんだろ!」
ゲンタ「いや、僕はちゃんと持って来ましたよ?ベース」
ウタオ「そんな事言ってお前、ホームベースを持ってきたとか言ったらぶっ飛ばすぞ?」
ゲンタ「そんなぁ、ホームベースな訳ないじゃないですか」
ウタオ「じゃあ何ベースを持って来たんだよ?」
ゲンタ「ホワイ○ベースを持って来ました」
ウタオ「それは機動戦士○ンダムで出てくる戦艦じゃねぇか!
何でそんなモン持ってくるんだよ⁉っていうか持ってこれる物なの⁉」
ゲンタ「持ってきたというか、乗ってきました」
ウタオ「乗ってきちゃったの⁉駐車場に停めれた⁉」
ゲンタ「まあ、嘘ですけども」
ウタオ「分ぁっとるわい!誰がそんなありえねぇ話信じるかバカ!バーカ!
だああああっ!もぉおおおおぅっ!どいつもこいつもやる気あんのかこの野郎!」
ヒキオ「そうは言いますけどリーダー。リーダーはちゃんと自分の楽器を持ってきたんですか?」
ウタオ「何言ってんだお前、ボーカルの俺は歌しか歌わねぇから、楽器なんか要らねぇんだよ」
ゲンタ「でも、ボーカルだったらマイクを持ってこなくちゃいけないじゃないですか」
ウタオ「何ぃ?マイクだぁ?」
タイ子「ここのライブハウスはマイク持参って書いてあったでしょ。持って来たんですか?マイク」
ウタオ「バカ野郎、俺は酢レモンのリーダーにしてボーカルだぞ?
マイクくらい用意してるに決まってるじゃねぇか」
ヒキオ「じゃあ見せてくださいよ」
ウタオ「分かったよウルセェな。ほらよ、これが俺の用意したマイクだ」
マイク「ヘロォウ~ミナサ~ン。ナイスツーミーツー♡」
ヒキ・ゲン・タイ「「「誰⁉」」」
ウタオ「ライブハウスの前でうろついてたカナダ人のマイク君だよ」
ゲンタ「マイク違いでしょ!しかもセンスが僕たちより寒い!」
ウタオ「そ、そんな事ねぇだろ!少なくともお前達よりはユーモアに富んでるよ!」
タイ子「でもこうなると、まともなライブなんか出来そうにないですねぇ」
ウタオ「バッカ野郎!そこはロックのセンスと熱いハートで乗り切るんだよ!
ロックはそれが一番大事なんだ!」
ヒキオ「あ、そんな事言ってる間に、スタッフの人が呼びに来ましたよ」
スタッフ「酢レモンのみなさ~ん、お待たせしました~」
ゲンタ「あ、どうも。すぐに行きますんで」
スタッフ「そうですか、じゃあ先にこの白御飯をお渡ししておきますね」
ウタオ「え?何でここで茶碗に入った白御飯が出てくるんですか?」
スタッフ「え?だってここ、ライスハウスですから」
酢レモン一同「「「「どっしぇーっ!」」」」
ちゃんちゃん。