秘密
連れていかれたのは通りから少し外れたところにある喫茶店であった。
「マスター、ちょっと個室を借りたいのだが」
そう中背の男がいうと、マスターは無言で鍵をさしだすと、奥を指した。
「ありがとよ」
つられるように長身の男が礼をして、私達もそれに軽く会釈して先にずんずん中背の男を追いかけた。
奥に4つほど個室スペースがあり、そこの一つに中背の男は入っていた。
「ここならやましいことも言えるってもんで」
「やましいことではない!」
中背の男と長身の男が言い合っている中、ルナがきりだした。
「それでわけとはなんですか」
中背の男と長身の男が向かい合って頷くと中背の男が
「次の月に剣術大会があるのは知っているだろう。」
私達は頷くと
「そこに貴族の三男坊がでるのでさ」
「貴族の三男坊に剣を買い与えるというので、こいつに剣を買ってこさせたところお前さん達のところで剣を買ってきたってわけよ」
「なるほどね。木剣じゃなくて真剣を買ってきてしまったと」
「そういうことでさぁ」
「悪いとは思うが返品にしてくれないかね、お前さん方」
「そういうことならしかたないわね」
ルナが財布から銀貨をだそうとするとさえぎって
「おれはいいことを考え付いた。あの剣を作ったのがお前さん方なら詫びといってはなんだが一つ頼みがある。俺の剣を打ってほしい」
「というのも、こちらに来る途中で賊に襲われてな。そこまではよかったのだが、倒したら血の匂いにつられた魔物たちの大群ってわけよ。着の身着のまま逃げてきたので装備がなくてな。」
少し恥ずかしそうに俯きながら中背の男は言った。
「なるほどね。世間を知らない三男坊が木剣と間違えて真剣を買って、その師匠があわててきたってとこかしら」
「あんまりおおっぴらにしてほしくないのだが、そういうわけよ」
「あら、認めてもよかったのかしら」
「そのほうが周りに黙ってもらえる気がしたんでな」
「いいわ。商談成立ね」
ルナと中背の男が握手をして、契約書類を書き始めた。その間、私はこの中背の男、三男坊の師匠にあたる人に作る剣の造形を考えていて、三男坊は居場所がなくて天井を見ることしかできなかった。つまり、二人とも上の空だったのである。
個室からでるときに三男坊の師匠は言った。
「鍛冶場に行くことってできるか」
「自分の剣が気になるのね。安心しなさい。当代きっての鍛冶バカだから満足できる剣ができると思うわ」
「それもあるのだが」
「訓練する場所がないのでな。理由はさっきの通りだ。場所があれば、貸してほしい」
三男坊の師匠が頭を下げて頼み込むのでルナは困ったような表情をうかべて
「頭をあげなさい。それでも師匠なのでしょ。場所はあるから大丈夫よ」
「明日から行ってもいいか」
「大丈夫よ」
「では、明日から頼む。それでは明日に会おう」
「ええ」
新しく作る剣のことで考え込む私と、上の空の三男坊を二人はお互いに苦笑してひっぱっていった。




