冒険者
「しばらくは数打ちを作りなさいって支長が言ってた」
品評会からの翌日、ルナがやってきて開口一番にそう言った。
「名品に近づけるようにするのではないのですか」
「あなたの腕を見込んで、慣れさせるほうが大事と判断したみたい」
「数打ちは売れるのですか」
「ここは交通の要所っていったでしょ。南西の港の街から船を出して帝国に売れる。北東に行った評議国にも売れる。北の王都のほうへも売れる。戦争がなくたって魔物退治とダンジョンで足りることはないわ」
魔物!ダンジョン!
一人前の鍛冶師を今生で目指すことは決めていたが、魔物とダンジョンに心は揺れた。
「この周辺にダンジョンはないのですか」
「南西の港街から南の森の中に一つと港街から東に行った山に一つだったかしらね」
「ダンジョンなんか行くなんて言わないでしょうね。鍛冶バカは鍛冶がお似合いなんだから。それにそんなに冒険者は簡単ではないわよ」
「冒険者がいるのですか?!」
「そんなことより、鍛冶よ!全部、ユーバさんのおかげで揃えられたのだから早く独り立ちしてもらわないと迷惑なの」
舌打ちと、ともにこちらをにらむルナを尻目に、まだ見ぬ冒険者業へと想いをはせながら鍛冶場に向かうのであった。




