chapter12-6 父との再会
エルディンの思いを受け取り全力で脱出を試みる冬花。一方で蒼たちは冬花救出のため五輪の塔に向かっていく途中、霞之介が通りかかった。
「そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、大問題だ。・・・・って霞之介!どうしてここに!」
「俺もアイツに世話なった以上見逃すことはできない。それにいい情報というか・・・・まぁ直接来た方がわかりやすいかな。冬花を取り戻す以上、準備はしっかりしなきゃな。」
「そうね、それならわかったわ。行きましょ、ユリ!」
「はい!」
蒼とユリは霞之介の案内によってたどり着いた先はクレー射撃の競技会場だった。そこにあるマンホールに秘密があるそうだ。
「射撃レーンの入口近くにマンホール・・・ここがいわゆる秘密のルートの入口だ。そこにはいつの間にか没収された武器があるみたいなんだよ。」
「ちなみにどこ情報?」
「なんかここの清掃担当の人がたまたま下水管のチェックをしようとあそこのマンホールを開いていたら五輪の塔へ通じる地下通路を見つけたみたいでそっから噂が流れたところかな?まぁ正面突破するよりは確実であるが。」
「しかしなんだか都合がよすぎない?」
「うぅむ・・・・。そもそもこの会場自体リズミアの市民を服従及び追放させたり、元々あった施設や建物を取り壊したり改造した経緯があるみたいだしあの地下通路は本来は何らかの用途で使われていたが、I〇Cの連中は、まぁあまり重要視せずただ単に没収した装備を置いてく場所として使われたんでしょ。」
二人がマンホールの近くで話しをしてる最中、ユリはマンホール蓋を開ける棒を持ってきた。
「今は一刻を争うときです!急ぎましょう!」
「おっそうだな」
霞之介はマンホールの蓋を開けて地下通路に突入した。無論マンホールの蓋は盾として装備するのを怠らずに。
「あれ?皆行かないのか?」
「いやいや・・・・・一番大事なこと忘れてない?バリケード作らなきゃいけないでしょ?」
「あっやべ・・・忘れてた!」
蒼とユリは少し呆れながらバリケードや立ち入り禁止の看板を設置し、改めて地下通路へ潜入した。
「いやーそれにしても臭い・・・臭くてかなわん・・・・。あ、吐きそう!」
「え、ちょっと霞之介さんしっかりしてくださいよ・・・。あ、きつい。」
霞之介とユリは悪臭に悶えながら互いに杖代わりにするかのように肩に手を置きあい、ルックり歩いていく。しかし蒼はその悪臭に耐えながら走っていく。
「あ、蒼ちゃーん?置いてかないでくれるかな!?俺、没収された武器のありか知ってるんだけどー!!」
「は、早く案内してよ!」
「その前にステイ。一旦ステイな。・・・・そこの左のぼろい扉にあるぞ!!」
霞之介は一旦、蒼を呼び止め、武器保管庫の所へ案内した。そこには溢れんばかりの武器の数々が無造作に置かれていた。きっとこの中に蒼たちが愛用した武器が眠っているであろう。蒼たちは武器に予めついているお名前シールを凝視し、自分が使いこんでる武器を探し始めた。
霞之介は早速、自身の愛用武器”まーニカティ”(仲間の肉体を超マッスルボディ化させて強化させる能力をもった大剣)を発見しひとまず安心した。しかしなにかの駆動音が聞こえてくる。彼はその音に吸い寄せられるかのように行ってしまった。
「なんかうるさいなと思ったらなんだこれ。生体維持カプセルかコレ?ようできでるなーってあらららら?まさか!」
生体維持カプセルの中にはなんとなく見覚えのある人物がいた。霞之介はカプセルの開封スイッチを押した。蓋がゆっくりと開き、スチームが吹き荒れる。数分後カプセルの中にいる何かはゆっくりと目を覚ました。
「どちら様ですか?」
「アイアム・・・・アイアンパンメェン・・・。」
「まさか、伝説のパン戦士が・・・!!」
こには深紅のナイスバルクなマッスルボディ、茶色いマント、全身に装備したブースター的なもの、そして輝きを放つハゲ頭に真っ赤な鼻の外見のヒーロー的な人が姿を現す。
「色々気がかりなことはあるけどなぜここに?」
「簡潔に話すと、どうせまた我が宿敵バイキーザの仕業だろうとコロナウイルスΣ株の騒動を調査していたんだけど、I〇Cの罠にかかってね。なんとかここを見つけ、生命維持カプセルで体の傷を癒してたんだけどね。」
「で、仲間は?確か ドクタージャムとかショックパンメェンとかいたと聞いているが。」
「今は牢獄に捕らわれていると聞いているけど‥‥もしよかったら僕も君たちの手伝いさせてもらえるかな。パン戦士としての勘だけどどうやら目的は似通ってるし。」
「いいよいいよ全然!こっちも揃えられるだけの戦力は欲しいからな!」
蒼とユリは自分の武器を見つけ出し、霞之介に駆け寄った。
「え?そのムキムキの・・・・まさかアイアンパンメェン!?前に出会った時より筋肉に磨きがかかっているような?」
「えっと誰ですかあの人?」
「あー・・・・・ユリは知らないかぁ・・・まぁあんな成りだけど子供たちの憧れのヒーロー的な?」
「はぁ・・・でもこれで少しは安心できますね。」
一方、冬花はエルディンの意志を受け取り、必死で五輪の塔の地下牢獄から脱出するべく全力疾走した。途中、脱出用の扉を発見し、開けてみるとそこはやけに広い空間があった。無機質な白い壁に床には白くテカテカした素材でできており、さらにこの空間は照明もないにも拘らず真昼のように明るい。。先ほどまでいた地下牢獄とその通路はとにかく不衛生でボロいのだが、冬花のいる空間(通称:まっしろスペース)はまるで違う世界に来たかのように錯覚するほど不自然なものだった。冬花は形容しがたい恐怖を抱きながら奥へ奥へ進む。約334m進んだところ突如立体モニターが現れた。
「月宮冬花!!貴様、ここから抜け出すつもりだな?まぁよい。そろそろお前の父親を合わせてやろうと思ってたところだ。」
「うわ急に出てくんなよぼったくり男爵・・・・!!つーか早く父さんに会わせて!!」
「いいだろう!ではカモン!」
バッファの掛け声ととともに天井から光の柱のようなものが降り注ぐ。そこから見える影はとても人間の体格とは思えないほど大きく、唸り声があたりに響き渡る。
やがて光の柱が消えるとその影の正体が姿を現した。
「ん?あの、すいません。これなんですか?明らかに人間じゃない別な生き物・・・・ていうかバイオシリーズにいそうな感じのアレなんですか?こっちは父さんに会いたいってのに・・・・・・・こんなすっげぇキモいデザインのヤツいらないんだけど!!」
「みてわからんか?お前の父親だよ。」
バッファは気色悪い笑顔を浮かべながら光の柱から現れたキモい謎生物について軽く説明した。
注意深くよく見ると顔に何か見覚えがあった。肌は青白く、頭には電極のようなユニットが付いているが確かに冬花の父親の顔だ。更に注意深くよく見ると人の顔のような痣がたくさんついた右腕、ミミズ色の触手で束のように構成された左腕、バッタの足のような構造をした両足、背中には翼のようにも見える鋭利な突起物が生えたその姿はまさに生命に対する冒涜的行為の結晶ともいえる。
「う・・・嘘でしょ・・・!そんな!!本当に父さんなの!?バッファ!!あんたコレどういうことなの!?」
「ちょっとしたイメチェンに過ぎない。どれ、せっかく再開したんだ。せいぜい仲良く親子のスキンシップでも楽しんできなさい。」
「バッファ・・・・・なんてことを!!」
バッファの憎たらしい顔面を映した立体モニターは瞬時に消え、眼前にいる怪物はうなりをあげ、口から強酸性の液体を弾丸の如く撃ちだした。
「うぉッあぶね!!・・・・ねぇ父さんいったい何があったの・・・?あたしだよ!冬花だよ!!あなたの娘だよ!!」
「ウガァァァァァ!!」
冬花は必死に何度も攻撃をやめるように訴えた。しかし彼女の父、月宮五郎はまるで狂暴化した野生動物が如く暴れまわり全身武器庫ともいえるその凄まじき改造を施された肉体をフル活用し、冬花を痛めつける。つまり、五郎は父親として人としての心を失っているのだ。
「どうしてそんな・・・・・・!オリンピック反対の報復がこんなのとか反則じゃん・・・・・。あの野郎こんなことまでしてオリンピック開催したいの・・・?ていうかやっぱり・・・あたし間違えたのかな。こんなことになるなら理性を捨ててコロナウイルスのこと一切気にせずオリンピックを楽しむだけのキチガイになればよかったのかな・・・・」
血と涙で濡れた顔を拭き、ゆっくりと立ち上がる。しかしすぐに倒れてしまい気を失った。
蒼たちは地下通路を進んでいく最中、突如聞こえた物音に反応した。蒼は誰よりも早くその物音がする方向に向かって走っていった。
「あっいつの間にいなくなった‥‥。どうしましょ!」
「とりあえず追いかけるしかないっしょ。それでいいかい?アイアンパンメェン?」
「あぁかまわないさ。でも・・・この殺気は尋常じゃない。みんな、気を付けて!」
「冬花!?冬花はどこなの!?確かこの辺に音がしたはず・・・!」
蒼はドアを蹴破り、あの謎のまっしろスペースに侵入した。そこには”異形の怪物”と心も身体も打ちのめされた冬花の姿がそこにあった。すぐさま冬花に駆け寄り声をかけた。
「もういやだ・・・・・。どうして・・・たすけて・・・・」
彼女は枯れた声で助けを求めるようなことを呟き、蒼に抱きついた。
(いったい何があったの?そしてあのキモいのは一体・・・・?)
蒼はどういう状況なのかわからなかったが少なくともこの場から逃げた方がいいと直感で判断した。
21年度最後のお話。 エタりそう誰か助けて‥‥




