Chapter12-4 VSぼったくり男爵
一方、取り残された蒼たちは冬花を探し続けていた。その途中、泣き崩れている女の子を見かけた。蒼は声をかけたところ、その女の子の両親はコロナウイルスΣ株に感染しているという。
「・・・・そんな意識不明だなんて!冗談じゃない、こんな運動会続けていたら間違いなく取り返しのつかない状況になっちゃう!」
「あの、お姉ちゃん・・・?」
「あぁ、ごめん。その、今の私たちには何もできない・・・なんせお医者さんじゃないから。けどあなたは両親のところに行ってあげて!意識不明でつらいとは思うけど・・・・それでもいてあげて。」
蒼たちはリズミア五輪の会場敷地内の病院(元々リズミアにあった病院でした。)に送ることにした。
「あ、そういえば名前聞いてなかったね。私は龍山師 蒼だよ。そっちの金髪の子が 陽城 メイアであっちの紫のが紫道ユリよ。」
「あ・・・・あたしは志水玲って言います。その、わざわざありがとうございます。」
その後、雑談をしながら病院に辿り着き玲の両親の面会の手続きをしようとした。しかし感染拡大を阻止するため隔離入院という形となっており、顔を見ることすら叶わないのだ。それはまだ8歳の玲にとっては両親を失ったのと同じぐらいの過酷な現実でもあった。
「せめてカメラ越しに玲ちゃんの両親をみるってことできないの!?ねぇ!?」
「お願いします!」
メイアとユリも受付の看護師に悲願した。しばらくたった後タブレットを渡された。これでカメラ付きのドローンを操作し、病床内を見渡すことができるという。玲はそれを使い両親のベットをみつけた。 両親の顔は皮膚が灰のように変色しており、常にうめき声をあげている様子が映った。しかも看護師の話によると患者の中には突如発狂し、奇声を上げたり意味不明な言葉を呟くなど精神病のような症状が出ている患者も数多くいるという。その地獄のような光景に玲は泣くどころかその場で固まってしまった。蒼は何も言わずにそんな彼女を抱きしめた。
「あらまぁすっかり仲良くなっちゃっていいですね~♡」
「えぇ・・・・?この空気でそれ言う~・・・?」
蒼が例を抱きしめてる光景に尊みを見出しニヤついてるユリの頬をメイアがつねったところ豪雨善にも丸山霞之介が通りかかった。そう、彼はかつて香川県のゲーム規制条例に立ち向かい、なんやかんやでそれを阻止し、今は”香川デューク”の称号を授かった男だ。
「あ~~丸ちゃんおひさ~~~!!」
「ん?メイアちゃんすか・・・・いや奇遇ですね~てかその呼び方なんだけどさぁ、ゲームボーイの”某違法賭博おこづかい稼ぎゲーム”思い出して脳みそパッパパラリラするんで別なのでお願い!といかそのゲームもやってみる?ほれこうして手元にあるぞ!」
「いや、クソゲーはちょっと・・・・」
「んじゃあ・・・光の王子スターロード・マルスに栄光あれと…」
「え?そんなのないです、諦めてください。ていうか・・・くそ王子でいいでしょ。」
「あんた意外と辛辣やなぁ。ていうかここの病床どうなってんだ?」
「こんな感じ。もうヤバヤバっすよ。ほら、あそこの女の子ドン引きして固まってるし。」
メイアはタブレットの画面を見せつけた。
「OH!これは中々見るに堪えない光景だがI〇Cの馬鹿どもを黙らすには丁度いい!看護師さん、この病床の映像を使わせてもらえますかね?」
「は、はい少し時間がかかりますが・・・少し編集する必要があります。」
一方、アレク・モーガンと対談を終えた冬花は嬉しそうに帰っていった。しかし蒼たちとはぐれてしまったため、そこら辺をうろついてた。
(思った以上に話してしまったなあ・・・・でもこれでいい方向に進んでくれれば超ラッキー!)
すると突然黒服の集団が現れた!
「貴様には余計なことをしてもらっては困る。今ここで連行する。」
「はぁ・・・・しらけるなぁホント。 だったら・・・」
「?」
「だ、誰か助けてーーーーーーー!あ、I〇Cに殺されるぅーーーーー!!!」
冬花は大声を出し、女子トイレめがけて逃げ出した!そして黒服どもは冬花を追いかけるものの女子トイレに入るか入らないべきかでモゾモゾしていた。そこに幸か不幸かメイアと霞之介が駆け付けた。
「もしかしてのぞき見?あらまぁや~ね~子のオッサンども!アレすか、ふしだらセクハラオッサンズっすか?」
「いい趣味してんなぁお前ら!」
「仕方ない、ここは退却せよ!バッファ様にご報告だ!」
黒服を追い払った後、メイアはトイレに行った。そこで冬花と再会した。
「いや~助かった助かった!いよいよ向こうの連中も本気になったってことかな?それにしてもよくあたしがピンチってこと分かったね!」
「まぁその?耳がとんがってからなんかこう聞く能力が上がったみたいな?集中すれば100メートル先に落ちた針に音をも聞き取る男、スパイダーマ!的なこともできちゃったからねー」
「なんなんだろうねソレ?」
「まーちょい目立つけど便利だし、いずれなんか分かるっしょ。んでどこいってたの?みんなすごい心配していたよ?」
「話が通じそうなオリンピック選手を見つけたんだ。それでアレク・モーガンさんっていうんだけど協力してくれるみたい!明日の9時に五輪の塔でまた抗議するつもりでいる。」
「そっか。うまくいくといいね。さっさとこんな島から出たいし。でもリズミアねぇ・・・本来ならとても豊かでライブハウスやらアイドルのライブが見放題の激エモなところだと聞いたけどこんな有様になるとはねぇ・・・・」
二人は女子トイレから出て行ったあと霞之介に明日のことを伝えた。そして彼女たちはI〇C、即ちバッファ会長の悪行三昧を何としても止めねばならないと改めて決意した。これ以上感染拡大し人類滅亡ルートを阻止するためにも。
そして翌日、ついに抗議が始まった!五輪の塔の目の前には約1万人の人が集まり、その中にもオリンピック選手も含まれていた。
「え・・・代表スピーチやるのあたしでいいんですか?その・・・大丈夫なのかなこれ?オリンピック選手がやった方が・・・」
「大丈夫自信もって!あなたは仮にも月宮五郎議員の娘なんだしGOGO!」
「どうしよう・・・」
アレクはやや強引に背中を押し、冬花は全身に冷や汗をかきながらメガホンをとった。
「えー・・・リズミア五輪は中止すべきです。このコロナ禍にあって社会的に弱い立場の人への配慮や、2年ほど前からずっと続いているフェアリーコマンドオンライン幽閉事件に関連する配慮が決定的に欠けている点は、スポーツを愛する者として看過できません。もしこのまま東京オリンピックのように強行すればスポーツに対する世論のまなざしは、より厳しくなります。 五輪はスポーツの名を借りた商業イベントです。そう結論づけた上で、スポーツの価値を本質的に考え、時間をかけて教育現場から見直すべきです!」
冬花はやや裏返った声で一生懸命スピーチをした。 そこに遂に・・・バッファ会長が姿を現した。それは仮にも平和の祭典を開催している組織の会長であるにも関わらず醜く邪悪なオーラを放っていた。それは抗議参加者の8割がその邪悪なオーラに畏怖するほどだ。
「いや、五輪開催を実現するためにわれわれは犠牲を払わなければならない。リズミア五輪の開催がようやく間近に迫った今、最後のカウントダウンが始まった。この困難な時期に私たちはリカバリー、団結、多様性について強いメッセージを送る必要がある。リズミアはトンネルの終わりに光を放つだろう。アスリートは間違いなく彼らの五輪の夢を実現できる。そしてそれは今後の未来、そして現実世界に光をもたらすはずだ。」
バッファ会長は突然、支離滅裂な事を主張した。そう、”平和の祭典”にも関わらず犠牲が必要などとだれもが違和感を感じるような主張だ。これに対し、抗議参加者たちは怒りに燃え、”平和の祭典に犠牲が必要だ”というトンデモ発言に対するブーイングの嵐が巻き起こった。
バッファは左手を天にあげた。すると突然黄色いエネルギーのリングが現れそこから電撃が放たれた!抗議参加者たちはたちまちその電撃の餌食となった。
「い、今のは一体?そ、それよりメイア!回復魔法よろ!」
「もうやってまーす!!あー忙しい忙しい!誰か~回復魔法使える人いませんかー?」
「バッファお前・・・・なんなん今の?てか、東京五輪の時によく合った緊急事態宣言についてどうおもってるんだよ?」
冬花はバッファの突然の攻撃にビビりながらも問い詰めたが、その答えは予想外の物だった。
「じ・・・冗談じゃねぇ!何寝ぼけたこと言ってんのよ!霞之介くん、例のあれを。」
「あぁ、こいつらに通用するかはわからんがな!」
霞之介は WLPを天に掲げ立体映像を映し出した。それはコロナウイルスΣ株に感染し苦しみもがいてる患者たちの映像だ!
「このまま感染すればオリンピックどころじゃない!バッファ、あんたもいずれこうなってしまうぞ!」
「ほーん、で?」
「は?え、ちょっと待って。もう少し反応とかないんすか?」
一瞬、あたりが静まり返る。
「そんなの本人の普段の行いが悪いから感染したのだ。それにワタシは何があろうとオリンピックを開催するし、そもそも感染などしない!なぜならワタシは平和の祭典の指揮をとる者、即ち平和の化身なのだ!」
「うわぁコイツキモ・・・・」
バッファの狂気じみた或いは冬花を挑発するかのように訳の分からない発言に抗議参加者全員がドン引きした。中には思わず笑うものもいた。
それは”自分を平和の使者だと思い込み実際に実行しているものは、島を勝手にオリンピック仕様に改造したり、選手や観客を拉致、そしてなにより独自の進化を遂げたコロナウイルスΣ株の感染拡大を無視しオリンピックの開催の強行”など平和とはかけ離れた非人道的な行為を今なお続けているからだ。バッファ本人的には平和のためにやっている・・・・・・というのが更に今回の事態のタチの悪さをさらに増強している。
「いやどう見ても平和とかけ離れた外道行為やりまくってんじゃんお前!オリンピック創設者がこれを聞いたらガチギレ確定っすよ!?」
冬花を筆頭にオリンピック開催中止予備及びリズミア解放のスピーチがヒートアップする!
「冬花たそ!みんなコレ被って!」
「ん?あっそれは!?あぁそういう・・・・」
メイアが取り出したのはハロウィンなどで使われることの多いかぼちゃのマスク。なんとなくやることを察してしまった冬花たちはそのかぼちゃマスクを被り、I〇Cに反省を促すダンスを踊り出した。
♪鳴らない言葉をもう一度描いて 赤色に染まる時間を置き忘れ去れば 哀しい世界はもう二度となくて 荒れた陸地が こぼれ落ちていく 一筋の光へ ♪
しかし効果はなかった!
「あー・・・・やっぱりだめだこりゃ。」
蒼は呆れた顔でかぼちゃマスクを外した。次の瞬間、冬花が突然いなくなった。
「あれ!?冬花は・・・え、うそ!き、消えたぁ!!??」
「あ、ホントだ。やっべぇなこれ?」
蒼とメイアはあたりを見渡したが、気配すら感じない。そこに一人の女性が駆け付けた。
「そういえばさっき、急に黒い炎のようなものが出たんですけど・・・」
「え、本当ですか!」
3人は冬花がさっきまでいたところに駆けつけた。
「確かにこのあたりにかすかにエネルギー反応が残っていますね。それも転移魔法のようなタイプの。」
ユリは左手をかざし地面にかすかに残ったエネルギー、即ち転移魔法のようなものを使った際の残りカスのエネルギーの反応をキャッチした。
「あ、そんなすごいことできるんだ・・・・あたいの耳じゃなんも感じなかったからなー・・・ってりゅーちゃん?どしたの?」
蒼の様子は明らかに焦っている。身体中に汗をかきながらあたりを見渡しているのをメイアは彼女のことを不安に感じながらもいったん落ち着かせるように声をかけることもできずにただ見ることしかできなかった。
「おーい!色々聞き込みしたけどよ、冬花とバッファの野郎、どうやら同じタイミングで消えたらしいぞ!しかも黒い炎のようなエネルギーも発生してたそうだ!」
蒼は霞之介にまるで脅迫のように思いっきり胸をつかみかかった。霞之介は声を震えながら自身が得た情報をすべてさらけ出した。
「それはどこに行ったの!早く!!教えなさいよ!!!」
「え、えぇ!?そ、そんなん俺が知るかよ!さっき言ったので全部だ。これ以上の手掛かりは・・・・ない!」
「あ、ごめん・・・・つい・・・。」
「まぁいいさ、少し頭冷やしたら探すぞ。手掛かりは今んとこ一つもないが少なくともこの島のどこかに入るはずだ。」
「うん・・・」
突如消えたしまった冬花。はたして彼女は何処に。リズミア五輪開催まであと1週間、しかも開会式の日は何と正月だ。少なくとも感染拡大しまくった状態で新年を迎えるのは縁起が悪すぎる。果たして蒼たちは冬花を救出し、リズミア五輪を止めることができるのか。




