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Chapter 11-2 不正発覚と現実世界への一歩

時は少しさかのぼる。それはユリと蒼が不正の調査を計画する前である。

 第一回の公判の結果はまさかの無罪というスッキリしない結果であった。無論この結果に関しての批判は非常に多く、二回目の公判も予定を約一か月ぐらい繰り上げてスタートという形となった。そしてその間に不正の証拠となりえるものを何とかして見つけなければならない。


 「というわけでお願いできますか?」

 「えぇ。こんなの決して許されるはずはない!でもまずどーすっかなー・・・証拠見つけるにも色々手間がかかるし。」

 「とりあえず飯塚幸一被告の靴底にGPS仕込んでおきました!これである程度は奴が何をしてるのかは把握できるはずです!」

 「おぉ!やるじゃないの!」

 「あのー少しいいかね?」

 「「はい?」」

 「いやすまないね。君たちはやはり飯塚幸一の不正疑惑を調べようとしてるようだが?違っていたらすまないね。」

 「あ、検事さん。裁判官がこういうのやっていいのかはともかくやはり納得いく結果ではなかったので・・・。」

 「そうか。『ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み続けた』とか『記憶にない』とか主張していたがどうも怪しい。本来ならば有罪判決になるはずだが・・・。私情をはさむのは検事として最も愚かな行為ではあるのは承知しているが・・・モルモーターすこすこ侍である以上、この判決は認めん!それに残された家族が少しでも報われるようにしなくてはならない。」

 「はい。同感です。」

 

 突然ハンサム顔の検事が現れた!名は魅剣礼司という。


 「ということで君には飯塚幸一が何らかの不正行為をしていないか調べてきてほしい。よろしく頼む。」

 「は、はい!!それより、なぜ私が?というよりこういうのに関わっても本当に大丈夫でしょうか?」

 「グリモーア評議会直属の捜査官、通称”真実の探求者”は交通事故の現場の検証やモルモーターの状態、目撃情報などの調査で人手が足りない。それにもし、真実の探求者が不正疑惑調査しているとわかればどんな手を使ってでも連中は証拠隠滅しかねない。そこで真実の探求者ではない君が不正疑惑調査に適任なのだよ。無論これは君とユリ、そして俺との極秘だ。」

 「あ、大丈夫です。必要なものはこちらで用意しますので!」

 「ユリ、礼司さん・・・わかりました!」


 蒼は緊張しながら敬礼し、すぐこの場を去った。一方ユリの屋敷では――


 「りゅーちゃん遅いねー?あとちゃんユリも!!なんかあったのかなー?」

 「知らん。というかあの裁判マジないわー・・・あれで無罪って一体どうなってんの?」

 「モルちゃんもそうだけど家族が可哀想だよねー・・・」

 「ワンチャン復讐鬼に覚醒するパターンもありそう?」


 こんな感じで二人は愚痴を言いあいながらダラダラとTVを見ていた。それからしばらくするとインターホンの音が鳴った。その時の時刻は夜11時だった。


 「あっおかえりってめちゃくちゃ遅いし死んだ魚みたいな目してるし何事なの?」

 「あぁごめん冬花。すぐ寝るわ!」

 「いいけど別に…ユリも顔色悪いけど?」

 「ごめんなさい!すごく疲れたので寝ます!」

 「はぁ・・・。」


  そして翌日の朝、蒼とユリから大切そうな報告があった。


 「っつー訳であの上級国民が不正してないか調べるのでしばらくそっとしておいて。」

 「あ、大丈夫です。チャンと体調管理は徹底してるので。」

 「なんか手伝う?」

 「ごめん冬花!特にないわ!まぁなんかあったらその時頼むわ!」

 「りょー」


 朝食を済ませた後、蒼とユリはすぐさま出かけた。


 「えーと・・・とりあえずモルちゃんとこいく?」

 「てか金欠気味だしその採集クエスト消化してからでいい?」


 一方、グリモーア地方裁判所では――


 「ということでここが飯塚被告が行ったとされるフレンチ店です。他にも色々行きそうな場所をピックアップしたのでこの蚊に偽装したドローンで調査をお願いします。」

 「なんだか雲をつかむような話ではあるけど、分かったわ!」


 こうして飯塚被告の不正行為の証拠を見つけるための極秘調査が始まった。無論そう簡単にはいかない。ユリの方は裁判長と高級レストランに誘い、昼食を取りながら不正をしていないか直接聞いた。


 「え?そんなわけないじゃん?まぁ決定的な証拠がない以上、有罪には出来んよ!はっはっはっはっはっは!!


 ユリはゴミを見るような目で裁判長を睨んだ。とはいえ裁判長の目が泳いでいたり冷や汗をかいていたのを見逃さなかった。

 (ようやくあの力が使える・・・!)

 ユリの瞳がシアン色に一瞬光った。彼女は人の心や記憶が読める能力が付与されている。

 ただし色々条件があり、第一に対象の精神が不安定な状態でないと効果が発揮されないこと、第二に約1~2か月前の出来事しか読み取れないことだ。一応頑張れば十数年前の記憶も読み取れるが、エネルギーの消耗があまりにも激しいうえ、反動で知能指数が大幅に下がる危険性を秘めているため迂闊に使えない。そもそも数年前の記憶を読み取る機会なんてまずないのでそんな心配はないそうだ。


 ユリの脳裏には飯塚被告から大量の金を受け取っている光景が目に浮かんだ。さらにどこの店でその金を受け取ったかもはっきりと見えた。ただ必要なのはやはり証拠となりえるものだ。


 一方、メイアと冬花は採集クエストを消化した後、モルモーターの牧場、通称<モル牧場>に向かっている。ここではモルモーターの製造や育成などを行っており、子供たちに大変人気なスポットでもある。ここに今回の事件のある意味での被害者ともいえる黒い毛並みのモルモーターがいるとか。


 メイアは受付の人とその例のモルモーターに合わせてほしいと交渉したが、断られた。どうやら人を傷づけてしまい、次第に人間と関わるのを拒絶しているためらしい。食事もほとんど摂ってなく、ただ一日中泣いてばかりいるそうだ。


 断念して二人はモルモーターの幼体(?)の飼育エリアに向かった。そこには超絶きゃわわで天国めいた光景が!日頃のストレスが嘘のように消え、二人の表情はは完全にとろけている。無論、このエリアは特に子供たちに大人気のスポットである。しかしそこには、悲しそうな表情をしている男性がいた。しかもその顔はどこか見覚えがある。

 その人は酒松井拓也さんであった。


 「あの、こんにちは・・・。その薄紫のモルモーター可愛いですね。」


 冬花は軽くアイサツした。拓也さんは振り返って二人を見つめた。


 「この薄紫のモルモーターは娘のお気に入りだったんです。この子を見るたびに楽しかった光景が次々と浮かびあがるんですが今はもう・・・。一応ゲームの中の世界なんだから復活してほしいんですが世の中そんなに甘くないですよね。はは・・・・・・・」

 「確かに復活させるにも色々条件あって、例えば内臓へのダメージが深すぎると復活できないって聞いたことがあります。その・・・ごめんなさい。」

 「いえいいんです。ただやっぱり・・・・・・・」

 冬花はやはり話しかけない方がいいのではと一瞬思った。


 「あ・・・あの!大丈夫です!!あたいの友達が必ず有罪判決になるように色々頑張ってるから!そのなんていうのかな・・・元気出して!ってゴメン、一人で勝手に盛り上がっちゃって・・・。」


 メイアは拓也さんの手を握り、緊張しつつも必死に励ました。


 「ありがとう。少しは元気が出たよ。」


 しばらくの間、二人は拓也さんと少しばかり雑談をした。


 「あっそういえばハローワー・・・いや冒険者ギルドでなんか”導きの石板”がアップグレードしたとかなんとか・・・てかなんでだろう?(冬花)」

 「確か現実世界にいる人たちとコミュニケーションできるとかなんとか言ってましたね。(拓也)」

 「えー!すごいじゃん!!早速いこいこ!(メイア)」


 二人はすぐさま冒険者ギルドに向かい、”導きの石板”をアップグレードするための各種手続きを行った。アップグレード後の”導きの石板”は『world・LINK・PHONE』通称・WLP』に改名され、ボディも近未来的なデザインへと大きな変貌を遂げている。ただ、このアップデートは本人確認が必須で蒼の分はしばらく先になるだろう。ユリは”救世主プログラム”・・・というかそもそも人間かどうか怪しいので恐らく申請はできないだろう。


 冬花とメイアは、やっとの思いで現実世界に残されてる家族にメッセージを伝えられた。しかし、WLPでの現実世界との交信は一日3回、制限時間は3分だけという少しインチキな仕様だ。

 それでもなお、家族と話はできるのは彼女たちや、世界中のフェアリーコマンドオンラインの世界に捕らわれたすべてのプレイヤーにとって正に生きるための希望となった。



 「もしもし、父さん?その・・・・・・・今までごめん!・・・何とかがんばってそっちに向かうからその・・・心配しないで!うぅ・・・んぐっ・・・・・」

 「そうか。無事ならよかった!!こっちもこっちで頑張るからそう泣かんでいい。母ちゃんも婆ちゃんもお前のこと無事でいてほしいと毎日祈っているよ。うまく言えないけどまぁ頑張れよ!」

 冬花は涙を流しながら、今まで起こったことを限られた時間の中必死に伝えた。そして父はそんな娘を強く励ました。


 「ん?ママ?おひさー!!なんかさーゲームデバックのバイト行ったじゃん?んでいつの間にか変な世界に飛ばされるし、奴隷として売られるわでもう大変すぎてホントね~!!・・・それでね、昔出会った友達に会えて・・・うぅ・・・あれ?うまくしゃべれないや。どうしたんだろう・・・」

 「そう。大変だったのね。いいのよ。悪いのは全部あの会社よ。」

 

 メイアはいつもの調子でこれまでのことを話したが、次第に涙が止まらなくなった。母も同様に泣きながら思いを伝えた。

 

 ほんのわずかの時間だが家族に思いを伝えられた二人は何としても現実世界に帰ろうと決意した。そのためにもまずは飯塚被告の裁判を見届けることとした。

 そして数日後、ユリは裁判長が飯塚被告から大量の金を受け取ったという店の場所を特定し、早速蒼に知らせた。


 「ここが金を受け取ったっていう店なの?すごいね、どこ情報?」

 「実はわたし、心の中とか記憶を読み取れるんです。ただ相手が動揺しているとき限定ですが。」

 「こりゃあすごいわ!ってことは証拠となりえるものをこの店で見つけたらOKってことね!」

 「はい!!まさしくそのとおりです!」


 蒼は早速その店に向かい、監視カメラの映像を使っていいかの交渉をした。店長は店名を公表しないという条件でその映像を使用許可をもらった。そして一旦屋敷に戻りその映像をチェックした。


 「本当に裁判長を金で買収したのね・・・うわぁこりゃあ酷いもんね。(蒼)」

 「これでチェックメイトだね!(メイア)」

 「画質が思ったより鮮明でいいねぇ。(冬花)」

 「これで奴は地獄に!ぐふふふふふ・・・・・(ユリ)」


 ユリは怪しげな笑い声を上げながら個室に向かい、レポートを書いた。そのあとすぐに魅剣礼司にメールを送信した。ただし、極秘調査という前提なので、名前は伏せるように依頼した。


 そして時は流れ11月3日。第二回の公判が行われた。 ここで、飯塚被告と裁判長との不正行為(大金で裁判長を買収、そして無罪になるように交渉した)が明らかとなった。

 その後、裁判長は驚くほど早いタイミングで謹慎処分が下され、その後の処遇に関しては今後グリモーア第二評議会(日本における弾劾裁判所のような役目を担う機関)で決めることとなった。

 因みにその裁判長の名前は”笹林 勝志”だ。


 そして11月30日、遂に第三回公判が始まることが決定された。果たしてきちんと上級国民を裁くことができるのか。

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