chapter0 -1 もしかして異世界転生ですか?
暇つぶしに始めました。どうかよろしくお願いします。
事件とか事故とかは伏線もなく、突然訪れるものだ。そう思えるようになったのはすべてあの悲劇からだ。
月宮冬花はフェアリーコマンドオンライン通称”FCO”に最近ドハマりしているごく普通の一般女子高生1年である。少なくともあの事件が起きるまでは。
今年のGWは10日もあるので、とにかくさっさと連休分の課題を終わらせて、遊びまくろうと彼女は考えていた。しかし、すべてが始まったのは、5月2日午後1時49分辺りであった。
それまではごく普通に過ごしていた。昼飯の片づけを終えてゲームを始めた。この時点の時刻は午後1時30分。しばらくレベル上げや素材集めをすすめていたが急にノイズっぽいのがTV画面に映りこむ。
「あれ?バグった?まぁ・・・これはこれでいいか。」
しかし時間が経つにつれて、どんどんノイズが頻繁に発生し、音も明らかに変になっていた。
「やっぱりバグってる…まぁこれはこれでいいぞ。うん!」
と何故か彼女は喜んでいる。そう、彼女はこういうバグが大好きな変人である。とある界隈ではきれぼし脳とかいうらしい。それをたまたま見かけた冬花の父である五郎が冬花に声をかけた。
「ねぇ・・・なんかヤバくね?画面もそうだがBGMが脳が腐りそうな感じになっているしメーカーにお問い合わせしたらどうなんだ?もしくはつないでいるTVが問題とか?」
「これがまたいいのよ。滅多に見られないよコレ!あとはキャラモデルがヘンテコな形に変形すれば・・・・!最高だな!」
こんな感じでテンションが上がりまくっている。父は少しあきれている。
ついに1時49分になった瞬間画面が怪しい光を放った。
「うおっまぶし!」
「これはかの有名なポリゴンフラッシュかな?いやー懐かしいね・・・(目を手で隠しながら)」
TVの画面から触手っぽいものが冬花に絡みつく。
「ちょっと待ってください!待って!助けて!アッーーー!」
「冬花!嘘だろォ…いったい何が?」
五郎は目の前に起こっていることが、夢か幻か現実か理解できていなかった。それと同時に実の娘を救えなかった自分がとても情けなく思い、やり場のない怒りに満ち溢れていた。
それから1時間後、五郎はネット記事で、冬花と同じく突然行方不明になった人々が大勢いることを知った。夕方のニュースにてに緊急速報が流れた。
「5月2日午後1時49分から、次々と人が消えているという怪現象が起こっています!原因は全く解明されていませんが今すぐフェアリーコマンドオンラインのプレイを今すぐ止めて下さい!」
「ほえー・・・・年号が元気モリモリご飯パワーになって早々すごいのきたな・・・。しかしいったいどうすればいいのか。冬花は無事なのかね・・・」
一方冬花はどのような状況になったのか。
「え・・・・?は?ここどこなんだよ?画面から触手に捕らえられて引きずり込まれてから…とりあえず連絡しないと!」
急いでポケットに手を突っ込み、スマホを取り出そうとした。そして背筋が凍った。
「やべ・・・・・部屋の中に置いてきちゃった・・・・つみです。あたしの人生オワッタ・・・・・!めっちゃ病む・・・・」
涙があふれそうになりつつも辺りを見渡したがそこは草原しかない。瞬時にこう考えるようになった。
(これって絶対異世界転生ってヤツじゃん!あぁ・・・・これは確実にチート能力手に入れて色々とイキりまくり、周囲からスマホ太郎とかデスマ次郎みたいな蔑称つけられたりするんだろうな・・・考えただけで恐ろしい・・・それにしてもこんなヤバい目に巻き込まれるのは本当に唐突なんだね。まるでテスト範囲外の問題出されるみたいじゃん・・・・・。)
このまま独り言をしても仕方ないので、冬花は勘だけを頼りに町とか村に行くことにした。それから10分ぐらい歩き続けた。方角は全くわからない状況で見ず知らずの場所を移動するのは結構勇気が必要だと実感した。
すると、突然オレンジの光の球が冬花の目の前に現れた。すると人の形へと変形し、語りかけたのである!ただしなぜか半透明であった。
「君のような人をずっと探していたよ!お願い、ウチと一緒に世界を守って!」
「キエェェエエエエシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「え?あの、もしもし?大丈夫?おっぱい揉む?」
「マタシャベッタァアアァアァァアアァァァアァァ!!!・・・・って誰やねんお前」
「・・・あ、そうだ。ウチの名前は日向サヨリだよ。えーと・・君の名は?」
「あたしは 月宮冬花よ。 冬花でいいよ。」
しばらく沈黙が続いた。沈黙どころか結構気まずい感じでもあった。そして10分ぐらい経ち冬花はサヨリにいくつか質問した。
「そもそもあなたは誰なの?そして君のような人とはいったい何?」
「ウチは何というか何かしらの悪の陰謀を止める的な使命があるみたいなんだ。詳しくはわからないけど、あなたならなんか協力してくれそうな感じがするし。」
「そもそも人間なの?光の玉から変形したっぽいけど・・・」
「人間というか・・・非常に特殊なバグで人間と同等の自我に芽生えちゃった系のゲームキャラという感じかな。」
「なんのゲームキャラなの?少なくともFCO のキャラじゃないと思うけど。」
「ギドギド美術部っていうゲームキャラだよ!元々は・・・まぁ色々あって今この世界にいるけど。」
「なるほど・・・・。で、何したらいいの?」
「その前にあなたは・・・バグが好きなの?そんな雰囲気すっごい感じるけど・・・。」
質問を質問で返すなと怒りたいところではあったが、今はそんな気にはなれない。
「うん!大好きSA☆ 」
「やっぱり!じゃあ〈あの力〉も使いこなせるかも!ウチじゃ抑制するので精いっぱいだからさー
そうしないと色々とヤバくなるから・・・」
サヨリは慌てて状況を説明した。しかし、冬花には決して見せなかったがまるで”計画通り”と言わんばかりのどす黒い笑みを浮かべた。
冬花は状況がイマイチできていないがこれだけは理解できた。目の前の女の子はすげー特殊すぎるバグによって生まれた存在であること、少なくとも悪い人ではないということだ。そして冬花は決心した。
「で、どうしたらいいの?」
「それは冬花と一体化してあなたがバグの力を操ることだよ!ウチに宿るバグは放っておくとドンドン人格データ的なやつがぶっ壊れて最終的に全てを破壊しまくる殺戮マシーンになってしまうんだ。だからより安定して制御するにはあなたが必要なのよ!それに今、自由に活動できる肉体がないからゴメン!」
そう告げると、いきなりズキュゥゥゥゥゥゥンとキスをしたのである!ホホーウ!するとサヨリはオレンジの光の粒子になり冬花の体に吸着した。
「これで一体化は完了!これで君はバグの力即ちバグパワーを操る程度の能力をゲットしたよ!
パワーが暴走しないようちゃんと頑張るからよろしくね冬花!」
テレパシー的な感じで語り掛ける。
「コイツ直接脳内に!?しかしバグパワーってまんま過ぎない?まぁ厨二病みたいな言い回しされるよりはいいか。」
こうして冬花はサヨリと名乗る謎の少女に出会い、得体のしれない力を手にした。果たしてこの力は冬花にとってプラスになるかマイナスになるかどう転がるのだろうか。ただ単にバグが大好きなだけなのに・・・。と思わずにいられない冬花であった。 そしてサヨリは冬花には決して見せなかったがまるで”計画通り”と言わんばかりのどす黒い笑みを浮かべた。