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恋物語  作者: 芦屋 彩斗
2/4

第2話

「はあー、どーすりゃいいんだ、これ…」

「もーいつまでウジウジしてんのさ!早く食べないと遅れるよ」

何を聞いても「普通の男子高校生だ。朝食を食べたら学校に行く」の一点張りだったのと、凶器を持っている風でもなかったので、俺は仕方なく朝食を用意した。(何か証拠が無ければ、俺も大事(おおごと)にしたくはないしな)

そいつはまるでここが自宅だと言わんばかりに、平然と食事をしている。

誰のせいでこんな思いしてると思ってんだよ……


いつまでも悩んでても埒が明かないので、得体の知れないそいつの向かいに座り、朝食を食べ始める。

「その制服…」

「あ、これ?そうそう、か…おっさんと同じ高校なんだー。ってか今どき男子校とかありえなくない?」

「おっs……コホン…なんでもいいからとっとと食べて早く出て行けよ」

「はいはい」


「じゃあ、行ってきまーす」

戸締りをしていると、玄関から声がした。

暫くして扉が閉まる。


   バタン


よし、出て行ったな。

その音を確認して、俺は貴重品を調べることにした。

しかし


…取られたものは何もない……じゃあ、あいつ本当に朝食を食べに来ただけなのか?…なぜ?…???


「うわ、もうこんな時間だ」

時計を見るといつも家を出る時間を少し過ぎている。

電車に乗り遅れたら大変だ。


家を出て少し走ったところで、さっきの奴がのんびりと前を歩くのが見えた。

分かっているとは思うが、念のため忠告しておこう。

「当然だがもう俺の家には」


「おっす、宿題やったー?」

「あ、やってねぇ…あとで見せてくんね?」

「はよーっす!」

俺の声が届くより先に、友達が何人かそいつに群がる。


「……まあ、いいか」

そして、高校とは違う方向にある駅へと足を向けた。結局あいつの目的も正体も分からなかったが、事件性はないし、自宅に戻ってくれるならそれで全部解決だ。



「おかえり、奏多♡」

久しぶりに少し早く帰宅して、ゆっくりしようと考えていた俺の前に、陽羽ちゃんが…っては!?なんで!?

そこには、愛しの陽羽(ひいろ)ちゃんがいた。フィギュアではなく、人型、いや人間の。

自分では気づいてないが、疲れがピークなのかもしれない。

「はぁ、ついに妄想上の人物が現れるとは…いやいや、想像!あくまで想、像、上、だ…!決して妄想なんかじゃないからな」

誰も聞いてない(どうでもいい)言い訳をしながら、俺はその場に座りこんだ。さすがに、これが頭の中の出来事でないことは分かる。

「ヤバいなー…」

「奏多?何がヤバいの?」

心配してオロオロする陽羽の横をすり抜け、そのままベッドに横になった。

「ふー」

電気を消して、いざ眠ろうとした瞬間。

「えー!嘘でしょ!お風呂に入らないで寝るとかおっさん臭やばいよ!?ベッド使えなくなるじゃん!」

部屋が明るくなったのと同時に、陽羽の大声が俺の耳に届いた。

すでに眠りの淵に手をかけていた俺は、なんとか瞼をこじ開ける。そこには相変わらず美少女の陽羽がいたのだが、先程のか弱い儚げな雰囲気はまるでなく、真逆の、強気で偉そうな雰囲気を醸し出して仁王立ちしていた。

も…想像と会話してるなんて俺も終わりだな…

そう思いながら、布団に(くる)まろうとしたのを、陽羽に邪魔された。

「妄想なのにしつこい……って、あれ!?」

陽羽から布団を奪い取ったが、俺の目の先にいたのは今朝の男子高校生だった。

!?は!?

「おい!?陽羽ちゃんはど」

「何言ってんのさ、オレが陽羽だってば」

「お前は…。さあ今度こそ警察に」

「ケータイ粉々になったんじゃない?」

「そういえば朝……いや、元はといえばお前が」

「さすがにかわいそうだったから…はい」

そう言って陽羽?は俺の前に、()()()()()()()俺のケータイを差し出した。

「な、なんで…」

それを取ろうとしたが、虚しくもその手は空を切る。

「しばらくこれはオレが預かっとくよ。警察呼ばれたら怖いし。さあ、細かい話はご飯食べながら。この家何も無かったからお弁当買ってきたよ」

「勝手なことばか」


   ぐぅぅぅ〜


…ま、まあここは大人しく頂くとしよう。



俺が質問する必要も無く、相手はペラペラと話をしてきた。

自分は俺のお気に入りのフィギュアの陽羽で、俺の恋のキューピッドをしに来た、だからここが自分の家で、俺の恋が実るまで人間として一緒に住むんだ、と。

「あとは、ちょっと待っててね」

そう言い残し、夕食を食べ終えた陽羽は部屋を出ていった。しばらくすると戻ってきたのだが

「ひ、陽羽ちゃん!?」

「そ!ね、オレが言ったこと嘘じゃないでしょ?」

確かにあの陽羽フィギュアそっくりだが(豊満な胸元もやけにリアルだ…)

「上手い変装だが俺は騙されないぞ」

「さっき騙されてた変態おっさんは誰だよ。…ほらこれだって本物だよ?」


   むにゅっ


「ご、ごめん!」

陽羽に急に手を引っ張られ、思わず彼女?の胸を揉んでしまい、咄嗟に手を離す。

「ハハハ、奏多顔真っ赤!まあ、“陽羽”は美しすぎるからそうなってしまうのは十分わかるけどさ」

言いながら、陽羽は自分で自分の?胸を揉む。

「くっ、陽羽ちゃんの体を弄ぶとは…許すまじ……」

「これだから童貞オタクは。はあ。なんで男に変身してるんだ、とか知りたくないわけ?」

「それを聞いたら陽羽ちゃんに戻ってくれるのか!?」

「さあ?オレも気づいたらこれだったから、どうしてそうなっちゃったのかわかんないんだよねー。ちなみにこっちの陽羽は5分しかもたないの。だからいつも奏多が考えてるエッチなことできないね」

陽羽はニヤリと微笑んだ。




第3話へつづく。

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