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とりあえず▶︎部分をタップしてみる。
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名前:ピーちゃん(♂)
種族:レッド・ドラゴン Lv3
スキル:火属性魔法
HP:260
MP:400
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「へえ、ここでピーちゃんのステータスが見られるんだ」
やはりドラゴンなだけあってか、生まれたばかりであってもHPとMPが雅より全然高い。
「さっき火を噴いたのは、火属性魔法の内の一つってことでいいのかな? レベルが上がったのは、ピーちゃんが狼みたいなヤツを倒したから、だよね? ピーちゃんが戦えば、私にも経験値が入るってこと? それでもって、レベルが上がるとスキルが追加される……?」
雅は呟きながら、何気なく新しく追加されたスキル、念話の部分に触れて見た。
すると画面が切り替わり、そのスキルについての詳細が浮かび上がる。
(何だ、ちゃんと説明書きがあるじゃん)
『念話とは心に思い浮かべたことを、直接伝えたい相手の心に伝えることを言います。伝えることの出来る相手は1人から無制限まで設定が可能』
(へぇ、結構使えそう)
Lv1では最大範囲は5メートル。
(Lvが上がれば範囲が広がるってことかな?)
『迷子になったら念話で助けを呼びましょう☆』
「って、はぁぁぁぁあああ?」
つい大きな声を出してしまって、ピーちゃんをビクッとさせてしまった。
「ごめんごめん、ピーちゃん」
そう言って頭を撫でてやると嬉しそうに擦り寄ってくる。
(あ〜、めっちゃ癒されるぅぅ。メタくそ可愛ええ!)
膝をポンポン叩き「ピーちゃん、ここに頭乗っけてごらん」と言えば、ピーちゃんは最初は頭を傾げて雅をジッと見ていたが、恐る恐るゴロンと横になって頭を雅の膝に乗せてきた。
ピーちゃんに膝枕してあげつつ頭を撫で撫でしていれば、気持ち良さそうに目を瞑って眠ってしまったようだった。
ピーちゃんの可愛らしい姿に自然と目尻が下がり口角が上がっていたのだが、先ほどから開きっぱなしになっているステータスボードに視線を移すと、雅は小さくため息をついた。
(『迷子になったら念話で助けを呼びましょう☆』とか、その下りいらなくない? しかも最後に付いている星がウザいことこの上ない。……まあいいか)
次は召喚獣のところをタップしてみる。
やはり画面が切り替わり、『卵召喚によって孵化した召喚獣。どんな召喚獣も召喚者を親とし、深い絆で結ばれる』という短い説明書きが。
(やっぱり親だと認識されてるのか。まあ、あれだけ懐かれたら可愛いから全然OKだけどね。さて、次は卵召喚の説明書きでも見ようかな)
再び画面を元に戻し、卵召喚の部分をタップする。
『言葉そのままの意味で、卵から生まれる生物の卵を召喚する。(一回につき卵一個)ただし、召喚される生物の卵はランダムであり、召喚する側が選ぶことは出来ない。レベルが上がるほどレアな生物の卵を召喚する確率がアップする。※一度召喚したらある一定の条件を満たすまで、次の召喚は行えないものとする』
「ある一定の条件て、何?」
あちこちタップしてみるが、どこにも記載はされていなかった。
試しに「卵召喚」と口にするも、今度は何も出て来ない。
『ある一定の条件』が気にはなるが、そのうち召喚出来るようになったらまた召喚すればいいだけだ。
それより、卵から生まれる生物の卵しか召喚出来ないということは、だ。
モフモフ天国は諦めなければいけないらしい。とても残念だ。
そして最後に残った職業欄。
嫌な予感がするが、いつまでもスルーしているわけにもいかないだろう。
諦めるように『迷子』をタップする。
『異世界からの迷子。レベルが上がれば上がるほど、目的地に到着出来ない。ただの迷子』
……最早どこからツッコめばいいのか分からない。
(この説明書き書いたヤツ、絶対ケンカ売ってるよね? レベルを上げなきゃスキルは増えないし、アップもしない。かといって、レベルを上げたら迷子になりやすいってことでしょ?)
声を大にして「ふざけるな!」と言ってやりたいが、ピーちゃんがスヤスヤと眠っているため、必死で我慢する。
誰だよ、こんなふざけた職業にしたの!
あまりのイライラに、異世界一日目の夜は一睡も出来ずに終わった雅だった。