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職業『迷子』の異世界生活  作者: 翡翠
第二章 毒舌美少女な看板娘
12/20

6

「ミヤビ、これ三番テーブル」

「はい!」

「ミヤビ、次はこのつまみを一番テーブルに持ってっとくれ」

「はい!」

「ミヤビちゃ〜ん、注文いいかい?」

「は〜い、次行くんで待っててくださ〜い」

「お〜い、お勘定」

「オカン寄越すんでちょっと待っててくださ〜い。オカン、お勘定〜! オカン? オカンオカンオカンオカンオカンオ……」

「ミヤビ、うるさいっ」

「聞こえてんなら返事してよ! お勘定! 五番テーブル!」

「おいおい、ミヤビちゃん。可愛い顔してなかなかキツイねぇ」

「お客様には優しいんだから、いいの!」


 ……とにかく休む暇もない。

 余裕がないからついつい素の言葉遣いになっていたが、結構客にウケていたらしい。

 さすがに人前でババア呼びはまずいので、アリッサさんのことはオカンと呼ぶようになった。

 オカンは雅の言葉遣いはそのままでいいと言ってくれたから、気にしないことにしている。

 ちなみにピーちゃんだが。

 雅のお手伝いをすると言ってくれたので、オカンの許可をとり、ホールで簡単なツマミなどを運んでもらっている。


(ピーちゃん、マジで良い子!)


 お客さんも最初は驚いていたけれど、仔ドラゴンが一生懸命運んでいる姿に温かい目で見守ってくれている。

 初日は慣れないまま慌ただしく時間が過ぎていき、今最後のお客さんが帰って行った。

 思わずカウンターの一席に座り、力なく突っ伏した。

 おデコや頬にあたるテーブルが冷たくて気持ちがいい。

 ほぼノンストップで動き続け、精魂尽きると言ったところか。

 放心中の雅の顔の横に、コトンと皿に盛られたおにぎりが置かれた。

 オカンがニコニコしながら「良くやったね、疲れたろ?」と。

 いや、本当に。こんなに大変だなんて聞いてない。

 けれど、慣れない雅にお客さんたちはとても優しかった。

 すごく、本当にすごく大変だったが、楽しくもあった。

 雅はノロノロと顔を上げて、「マジで疲れた」と言いながら、そのおにぎりを口にする。

 中身は濃いめの味付けをした肉が入っていて、とても美味しい。

 ピーちゃんにもステーキが振舞われていた。

 いつの間にかコナーさんが後片付けを終えていて、雅の隣の席に腰掛ける。


「お疲れさま」

「お疲れ、さまです」


 コナーさんは今日は初日で疲れているだろうからと、仕事に関する細かい話は明日(日付変わってるから今日)すると言ってくれた。

 それ以外の今後の話で、店の二階と三階部分が居住スペースになっていて、雅たちは三階の部屋を使うように言われた。

 二階はオカンとコナーさんとサラさんが使っているそうだ。

 キッチンとお風呂とトイレは各階にあって、自由に使って構わないとのこと。

 朝食はサラさんが雅達の分も用意してくれるらしく、二階のリビングで一緒に食べることになった。

 昼は各自で作るなり、買って来るなり、食べに行くなりしているらしい。

 そして晩ご飯は今みたく簡単なもので良ければ仕事の後に用意してくれるとのこと。

 ここまでやってもらったら、めちゃくちゃ頑張るしかなくない?

 案内された三階部分は、結構広い一LDKだった。

 簡易キッチンもあって、小型の冷蔵庫もある。

 それに大きめのベッドが二つ付いていて、更にお風呂・水洗トイレつき。

 本当にこんな立派な部屋借りて良いのだろうか?

 不動産屋かなんかで借りたら、結構な金額するんじゃない?

 ……やっぱりその分頑張って働こう、うん。

 疲れてはいたが、お風呂に入るのは日本にいた時以来なので、早速お湯を張り準備をする。

 洗面所の収納扉の中にはタオル一式が入っていて、下着なんかも準備されていた。

 なぜかサイズがピッタリだったが、疲れ過ぎていたからもう何もツッコまずにありがたく頂戴することにする。

 何から何まで揃っていて、至れり尽くせりとはこのことかと思った。

 ピーちゃんはお湯に浸かるのはちょっと苦手なようで、体を洗ってしっかりすすぎ、タオルで優しく拭いてあげる。

 先にベッドへ行ってもらい、雅はゆっくりと久しぶりのお風呂を満喫中である。


「ハァ、生き返る……」


 やっぱ日本人はお風呂だよね〜。

 シャワーだけじゃ物足りない。

 疲れているのもあるけれど、お風呂に浸かってベッドで眠るなんて、夢も見ないで眠る自信がある。

 朝食は十時って話で、今二時過ぎだから七時間近く眠れる計算だ。

 そういえば。野盗倒したのって、相手は人間だけど経験値入ってたりするのだろうか?

 一応ステータスボードをチェックしておく。


———————————————

名前:ミヤビ(♀️)

職業:迷子 Lv5

スキル:卵召喚 (ランダム) Lv1

    念話 Lv1

    召喚獣 《レッド・ドラゴン》▶︎

HP:140

MP:40

———————————————


 うん、レベルが上がってるから、人間相手でも経験値が入ることが分かった。

 スキルレベルはまだ上がらない。

 前回はLv3で念話のスキルゲットしたが、それからはまだスキルをゲット出来てない。

 そろそろじゃないかとは思っているが。

 ……まさかもうスキルは打止めとか?(不安)

 本当はレベルはあまり上げたくない。(迷子になりやすくなるから)

 でもピーちゃんはドラゴンだから、時々はのびのびと運動というか狩りをさせた方がいいのではないか。

 ……うん、お休みの日は一日町の外に出て、ピーちゃんの好きに暴れてもらおう。

 次のスキル入手時には、出来れば収納ボックス(時間経過なし)が手に入ると良いなぁ。

 転移とか無限収納ボックスとか、憧れるよね。

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