長谷川 育(はせがわ いく)
籍 日本
言語 日本語
出身 東北の田舎
生家 祖父・祖母・母 本人
死に関して、独特の理を持つ。
なるべく生き物を殺したくないと思っている。しかし、食べる為なら殺しても良いと思っている。殺す際にはなるべく苦しまない様に、死んだことさえ気付かない程優しく殺す様にしている。それでも殺すのは最低限の数にしている。
なら人は殺せないと思うかもしれないが、そうではない。育は人も殺す。
人を殺すと育は他の動物に殺した人を食べさせる。そしてその動物が成長した頃、育はその動物を殺して食べる。殺して食べた動物の食べられない部分は細かく加工して畑に撒く。そしてその畑で収穫したものを食べる。そうする事で命を食べているのだ。
それが育の生き方。
〇生い立ち〇
過疎化の進んだ田舎で、祖父母と母との四人暮らしをしていた。父はいない。母は育児を放棄していて、殆ど祖父母が面倒を見ていた。
ある日祖父母と山に入り、まず祖父がクマに襲われるのを見た。祖母は直ぐに育を抱え車に走ったが、クマに追いつかれて背中に大きな傷を負った。まだ死んでいなかった祖父が辛うじて祖母を助けようと動くも、クマは意に介してもいない。祖母は育を車に押し込もうとしたところで、再びクマが祖母を襲った。足に食いつかれた祖母は逃げる事を諦め、車の扉を閉めた。
鈍く、骨の折れる音が響いた。
恐ろしくて動けない育をあざ笑うかのように、クマはまず祖母を森の中へと連れて行き、次に祖父を引きずって連れて行った。子供だった育はどうする事も出来ずにただそれを眺めていた。
少しして、パトカーの音が鳴り響いた。偶然近くを通った人が通報してくれたらしい。あと少し遅れていたら、育も今頃クマの餌になっていただろう。
祖母は既にこと切れていたが、祖父にはまだ息があった。結局病院で息を引き取ってしまったけれど、生きていると聞いて、少しほっとした。祖母は既に食い散らかされた後で、葬儀の時にも顔を見る事は出来なかった。
祖母を食べたクマは殺された。




