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3/12

悲劇と喜劇について思うこと、色々

そんな大袈裟な内容ではなく。あらすじ通り、ある日の出来事を記した日記、のようなものです。

 もうじきあの日がやって来る。

 3月11日────


 大災害により様々なものを失い、傷付いた方々には心よりお悔やみ申し上げますと共に、1日も早く穏やかな日常を取り戻せますよう、お祈り申し上げます。


 さて、あの大災害の事を語りたいとか、そんな深刻な事ではなく。私の身に起きた、ちょっとした事を少し。


 2年前の3月11日、私は泊まりがけで出掛ける予定があった。

 家事を済ませ、後は……

 シャワー浴びて身支度して荷造りして、と段取りを考えつつ浴室へ行った。

 シャワーを浴び終えた。

 浴室を出ようとドアノブに手を掛けた。


 開かない────


 そういえば、ここ数日ノブを回しても、うまく開かなくなってたな。でも、ゆっくり回せば開いたから、今回もきっと……


 開かない────


 な ん で 開 か な い


 えーーーーー?!

 ど、どうすれば???!


 ガチャガチャ回しても、一向に開く気配が無い。どうやら爪部分を引っ込める仕組みが馬鹿になっているようだ。と見当をつけて、何か無いかと浴室内を見回してはみるものの、当然の事ながら浴室内にあるのは、シャンプー、リンス、石鹸、浴用タオルで、およそ道具になりそうな物はない。


 当然である。風呂場に工具を常備しない。


 私は素っ裸。これもまた当然過ぎる程当然の事。身体を洗う為なんだから当たり前だ。服を着たまま風呂に入る人はいない。


 でも、じゃあ、どうすんのおおおぉ!


 緊急連絡……はケータイ持ち込んでないし、


 風呂場に外に繋がるインターホンは無い。


 これが詰んだって事?!


 初めて orz をやった……


 ちなみに、鍵を掛けていたのを忘れた訳ではありません。浴室ドアの構造は引き戸ではなく、ドアノブを回し、押して開けるタイプです。所謂ドアらしいドアで、浴室側からだと引いて開くといえば、ご想像頂けるでしょうか? それと、我が家は夫婦二人暮らしです。夫が出勤してしまえば、昼間は私一人、という状況です。


 さて、

 3月とはいえ、春めくにはまだ早い時期。段々冷えてくる身体。こんな事で風邪をひくなんて、そんな間抜けなのは嫌だ。そうだ、風呂場なんだから湯船に湯を張ろう、そうしよう。

 暖かい湯に浸かりながら、ふと天井を見上げる。


 知らない天井だ───


 等と思うわけもなく。

 私が見ていたのは、換気扇のカバーだ。私は他の形状を知らないが、風呂場の換気扇カバーの裏には針金の様な物がついている。V字状の尖った両端の先が小さな輪っか状に丸められていて、本体に差し込んで抜けない様になっているのだ。これ以外、浴室内に道具になりそうな固くて細い物はない。

 でも────


 色々考えた。


 大声を出し続ければ、マンションの住人の誰かが気付いて、消防なりなんなり呼んでくれるかもしれない。

 でもその場合、管理人が常駐していないこのマンション、管理会社と連絡をとって貰った上で、マスターキーを持ってきてもらう事になる。それ迄どれだけ時間がかかるのか。そして担当者なりがやって来て玄関の鍵を開け、家の中に入り、

「どうしました? どこにいますか?!」


「風呂場ですー」


 ……。


 無い。無い、無い、無い、無い、

 絶対有り得ない!!

 どっちもいたたまれないし、

 何よりも、

 この、弛みきったモノをっ!

 人様にお見せするわけにはっ!!



 恥ずか死ぬわっっっ!!!



 第三者に助けて貰うという線は消えた。

 ならば、


 色々やってみた。

 ドアを蹴破れないかとガンガン蹴飛ばしてみた。肘でも打ってみた。ドアはプラスチックの一枚板で、逆に怖くて思い切り蹴れないし、そもそも私の力じゃまるで無理だという事が判明するばかり。

 後、出来る事といえば、ドアノブを握ってガチャガチャと回す事だけ────


 開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開け、開いてよ!!!

 今開かなきゃ、

 今開いてくれなきゃ、


 大恥をかくのよおおおぉ!!!


 と、某アニメごっこして現実逃避しながら、冷えたら湯船に浸かる。またあがってノブをガチャガチャ回す、ドアを蹴るを繰り返す事、数回。


 ふと思う。ダンナが朝シャワー浴びた時は、多少開け難さはあるものの、問題無くドアは開いた。何故、よりにも寄って、予定がある時に、しかも私の時に壊れたのか。日頃の行いが悪いって事?!


 それにしたって、酷すぎる……

 何、この状況……orz


 日が暮れればダンナが帰って来るから、その時、開けて貰えばいいか、いや、でも……


 お腹空いたな……


 何を呑気な事を、というなかれ。

 空腹は正常な思考を妨げるのだ。

 浴室に入ったのは、午前10時頃。

 恐らく昼はまわっている頃合。


 そして発生する緊急事態────


 そう。


 ト、トイレに行きたいっっっ


 もう、ホントに、どうしてくれようかと……

 空腹は我慢出来ても、この生理現象だけは、どうにもならない。

 そして、浴室の排水溝をじっと見る。

 確かここの自治体は、雨水以外の汚水は全て下水道に流れ、処理された上で河川に排水されているはず。もし違ったら、水道局さん、近所を流れる〇〇川、環境汚染します!

 ごめんなさいぃぃぃっ


 湯を流しながら、用を足しましたよ、ええ。そんな事で環境汚染だなんて大袈裟な、と思わなくもないですが、やっぱ、ねぇ?

 風呂場は排泄する場所じゃないから、抵抗感があって。


 そんなこんなでワタワタする事、数時。どれ程時間が経っているのか、時計が無いからわからない。一時間も経っていないのか、或いは何時間も経過しているのか。


 ちゃぽんと湯に浸かり、天井を見上げる。


 知らない天井だ────


 じゃなくて。いい加減しつこい。

 そうではなく、


 私は天井を見上げて、立ち上がった。




 なんとしても、自力脱出してみせる!!




 そう決意して、天井からそっと換気扇カバーを外した。

 カバー留めの針金の長さは約15㎝程。

 太さは1㎜ぐらいか。

 これをドアと壁の間に差し込んで、先端の輪のところに爪の部分を引っ掛けて、爪を引っ込める事が出来れば、ドアは開くかもしれない。

 いや、これなら、いけるっ────


 カシカシ、カシカシ、カシカシ、

 カ、

 カチャ────


 開いたっ!!!!


 ガチャン!!



 しまったあぁあぁあぁーーーっ

(閉まった、でも可)


 何やってんの、私っ!?

 せっかく、開いたのにーーーっ

 いや、でも、これで開ける事が出来ると証明されたのだから、後は成功する迄チャレンジするのみよっ

 頑張れ、私!! 諦めるな、私!!


 カシカシ、カシカシ、カシカシ、

 カ、

 カチッ、


 さっきは、ここで焦って押してしまったから、今度は慎重に、落ち着いて、爪部分はそのままに指をそっとドアに掛けて────


 開いたっ!!!



 脱出成功っっっっっ!!!!!



 は、ははっ、

 やった、

 私はやったよ、やり遂げたよっ

 おがぁぢゃあ゛ぁ~~~んっ!!


(人は何故こういう場合、おかあさんと言いたくなるんだろう)


 

 はっ、こうしている場合ではない。

 今何時だ?

 14時か。

 4時間も浴室に閉じ込められてたのか。

 ええっと、えっと、何からすれば、

 出掛ける予定、は、もういいや、日程変更しよう。約束があるわけじゃないし、この前後で行けばいいから。だったら、ホテルに連絡しなきゃ。


「はい、ホニャララホテルです」

「すみません、今日予約していた某です。急用が出来たので、宿泊日を変更して頂きたいのですが、可能でしょうか」

「大丈夫ですよ」

「では、何日に。はい、ご無理言ってすみません。助かりました、よろしくお願いします」


 よ、良かったぁ。

 後は……

 予定変更したって、ダンナに連絡しなきゃ、か。

 勤務中だからメールで、


 風呂に閉じ込められてたって?



 絶 対 笑 う



 間違いない。ヤツは笑う。

 でも、浴室ドアは閉まっちゃわないよう、何等かの処置はしないとだし、そもそも内緒にしておける事じゃないし。仕方無い、白状しておくか。

 ええっと、


『風呂場に閉じ込められて、今脱出しました。予定変更したので、今日は家にいます』


 これでいっか。ドアノブの調子が悪いのは、ダンナも知ってたし。

 ホッと一息ついていると、キュウと鳴るお腹。

 あぁ、お昼食べ損ねてたっけ。なんか食べようか。いや、もうMACとかでいいや。気分転換も兼ねて、出掛けよう────




 帰ってきたダンナは、人の顔を見るなり、

指差して笑ってくれやがりました。


 き さ ま あぁあぁあぁ

 絶 対 許 さ んっ!!!!!!

 一生、根に持ってやるぅぅぅ!!!

 私、偉いでしょう?!

 頑張ったんだよ!!

 誉めてくれてもいいと思うの!

 つうか、誉めろーーーっ!!!


 ゲラゲラ笑いながら逃げるダンナを追い掛け回しつつも、なんだか無性に可笑しくなってきて、最後には二人で大笑いしていました。





 そんな事があった、3月11日。

 もうね、換気扇カバーを使うしかない、と早い段階で思ってはいたし、さっさと使えば何時間も閉じ込められずに済んだのに、なんというか、最後の手段みたいに思ってて。

 

 だって、想像してみて下さい。

 換気扇カバーをひっくり返して右手に持ち、左手で落下防止の針金部分をドアの隙間に差し込んで、カシカシやってるその構図を。

 この場合、私が無防備なのは横に置いておいて下さいね(←ここ重要!!)

 

 我が事ながら、なんて情けない……。

 

 そう。当事者の私にとっては、焦り、怒り、また大変困惑した出来事でした。

 同時に、我ながら実に滑稽で、愚かしく、また恥ずかしくも笑える記憶でもあります。

 お蔭で、3月11日は忘れられない日になったしねっ!やったね☆


────泣いていいですか?


 でも、笑っちゃう。

 正に、悲劇と喜劇は表裏一体。

(やっと副題回収)


 そんな事を実感した、悲劇と喜劇について思う事、色々でした。




その後、業者が来て、ドアノブは新しい物と交換して貰ったのですが、何しろ築年数が30年になる物件。既に同じ型番の物は無く、近い型で代用した為、ドアは微妙に閉まらない状態となっております。皆様もお住いの不具合には、お気をつけ下さいませ。

















 

誰も見ていないだろうと思いつつ、念の為にチェックした小説情報。

思ったよりアクセスがっ

そして、ポチッとブクマが!?

有り難うございます!

大変励みになりました!!

ご笑納頂ければ幸いに存じます。

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