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2話 俺の記憶

わたしが俺だった時の記憶は死の間際でとぎれている。




* * * *




 俺達は魔王に挑む為、魔王の城に乗り込んだ。そのための準備はしたし、その実力もあると、その時は思っていた。

 事実、メンバー全員が魔王軍の幹部と各々一対一で戦っても、危なげなく勝利できるくらいにはなっていたのだ。


 当時の人類最強集団は俺達に間違いなかった。

 魔王とて恐れることはない! それが5人のメンバー全員の総意であり、疑うことすらしていなかった。


 しかし今思うと、ハーフエルフのニアだけが万が一に備えていた。

 俺の死後の状況は、その備えによって産み出されていると今ならわかる。



* * * *




「みんな! 準備はいいか!」


「オー!」

 4人の息がピッタリと合っていた。


「この扉を開けばヤツが待ち構えてるだろう。ヤツさえ倒せば俺達の勝ちだ! 褒美(ほうび)の使い道はもう考えてあるか?」


 冗談でみんなの緊張を(ほぐ)す、俺なりの気遣(きづか)いだった。

 俺の意図を察し一番に話し始めたのは、自称ハーフエルフだという金色の髪のニアだった。


「私は最新の魔力増幅器が欲しいなー」

「ニアちゃんは魔王を倒した後に何と戦う気なのよ!」


 ニアの言葉を聞くと、キラッと目を光らせたミコットが、小さな体に見合った素早さでツッコミを入れた。


「アハハ! それもそうね。戦う道具はもう必要なくなるんだもんね。気付かなかったわ、ありがとミコット」


 ニアとミコットの話に、先生がにやけた顔で割り込む。


「イヤイヤ、ニアさんは勇者君との夫婦喧嘩に戦力が必要でしょう?」

「やめてよ先生! 私とマサトはそんな関係じゃないの!」

「おお! では私が勇者君をもらいましょう。私は尽くすタイプですよ!」

「げ⁉ 先生そんな趣味だったの?」

「んなわけないでしょ! ミコット!」


 ひとしきり笑った後、話に区切りをつけるように先生が話し始めた。


「まぁ冗談はさておき、勇者君をこの世界に引き止めておく材料は用意しておきたいですねぇ。勇者君の能力はこの世界の為に必要です。私としてはニアさんがやる気をだしてくれるのが一番だと思うのですが?」

「んもぉ先生ったら!」バキッ!


 緊張感のない雰囲気に釘を刺すように、紺色の鎧をガチャリと鳴らしたゲイルが口を開いた。


「まぁ帰るにしても、残るにしても、俺とどっちが強いのか、それはハッキリさせてからにしろよ、マサト」

「あんたホントにそればっかりよね。馬鹿ゲイル。どうせ褒美も魔力装甲とか魔法刃の強化に使うんでしょ!」

「良くわかったな生意気エルフ。マサトと引き分けたあの日から、手にいれた金は全てこの剣の切れ味の為の魔法金属に使っている。いつも抜き身なのは、切れすぎて納めた鞘が切れてしまうからだ」

「知ってるわよ! だからあんたは馬鹿ゲイルなの! その剣とっくにマサトの剣より切れますからー! 勝負が付かないのは切れ味が原因じゃありませんからー!」


「ところでミコットさんは何に使うんですか? 褒美」


 ニアとゲイルのコントのような会話をよそに、先生がミコットに質問を投げかけた。


「ん? 土地」

「......?」

「土地」

「え......えぇ。いいと思いますよ……土地。も……文字通り一国一城の主になれますね……」


 コメントに困ったらしい先生のフォローが少しむなしい。


 まぁ少し緊張感は足りない気がするけど、ガチガチになってるよりはずっといいかな。


「よし! みんな、腹は決まったな!」


 全員の意思を確認すると、それぞれが緊張した面持ちでうなずいた。


「扉を開けるぞ!」


 のどを通る唾がゴクリと音を立てた。

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