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16話 エレナちゃん

「え? なに……? 今の……」


「だから、エレナちゃんが出せって言った『ファイヤーフラッシュ』だよ! あっちの世界の言葉で炎の――」


「そうじゃなくて……なんで……レアが?」


「なんでって、エレナちゃんが出せって言ったからだよ」


「いやいやいやいや、そうじゃなくて! なんでレアがマサト様の魔法を!?」


「……様?」


「レア……あんた……本当に……?」


「だから最初からそういってるでしょ?」


「レ……マサト様!」


「んーー????」


「握手してください!!」


「んーーーーー??????」


 何かおかしい!

 エレナちゃんの目がうっとりと妖しい輝きを放っている!


「マサト様!お願いします!握手を!」


 わたしは袖から手を出し、エレナちゃんに恐る恐る差し出した。


 ガシッ!


 両手で来た!


 体温熱(たいおんあつ)っ!


「はぁぁぁぁ~ん!」


 エレナちゃんが普段の様子からは想像もつかない声を出している……。


「エ、エレナちゃん!?」


「はい!マサト様!」


「違うよ!わたしレアだよ!」


「いいえ!マサト様のお作りになった魔法を使えるのはマサト様だけです!あぁ……マサト様……」


「確かにマサトだったけど、わたしはレアなの!もうマサトは死んだんだから、わたしのことはレアとして接して!」


「マサト様の言葉で御願いいたします!それならば!」


 うー、やりづらい……。


「あー……エレナ!」


「はい!」


「俺はもう死んだ。魔王に敗れたんだ。もうこの世にいないものと思ってくれ。お前の気持ちは嬉しく思う。だが、ここにいるのはお前の幼馴染みの少女、レアだ! 今後はレアとして今まで通りに接してくれ! 最後に俺からエレナに頼みがある。大事な頼みだ。俺はここにいるレアに俺の持つ全てを託した! だが今、レアはある問題に直面している。お前の力でレアを助けてやってくれ。頼りにしてるぞ! エレナ!」


 わたしはマサトとは似ても似つかない声で、エレナちゃんの気を引きそうな言葉を並べた。

 途中から若干ノリノリだったのは隠しきれない。


「はぁ…はぁ…はぁいぃぃ~……」

 

 エレナちゃんが色っぽすぎて直視できない……。


 顔を背けて目を(おお)っていた手を元に戻し、気を取り直してエレナちゃんに向き直す。


「というわけだから、エレナちゃんよろしく……ね?」


「はい! わかりまし――」


「敬語!」


「わかったよ、レア様――」


「様!」


「わかったよ、レア!力になるよ! ……これでいいで――いいよね?」


「……」


 やりづらい……。


 こんなところにわたしのファンがいたとは。

 まぁ色んな場所での冒険が絵本とかにもなってたし、エレナちゃんの年齢的にわたしの絵本はドンピシャ世代なんだろう。


「で、エレナちゃん。頼みなんだけどさ」


 わたしは前世の記憶の復活から、最近までのあれこれをエレナちゃんに説明した。


 魔法試験での失敗

 クラスメイトの態度の変化

 親友との友情の亀裂


 エレナちゃんは、先程の取り乱した様子からは考えられないくらい神妙な面持ちで話を聞いてくれた。


 やっぱり頼りになるなエレナちゃんは!


 エレナちゃんが深く(うなづ)いて口を開いた。

「けしからませぬな……ね!」


 前言撤回。

 わたしはスルーした。


「あーいやごめん、まだ慣れなくて……」


「こっちもだよ! エレナちゃんの知りたくない一面を知ってしまったよ!」


「しょうがないでしょ。小さい頃からの憧れの人物が姿を変えたとは言え、目の前に現れたんだから」


 面と向かって言われ、ちょっとドキッとしてしまった。

「そんなに好きだったの?」


「そりゃそうよ! 今度ウチに来たら絵本見せてあげる!」


「自分の物語なんて、なんか照れ臭いな……」


「フフッ。あたしが読んだげるね。やさしくしてあげるから」


「なんか含みがあるよ!?」


 そんな緊張と緩和の中で、わたしとエレナちゃんは今後の策を練った。



 戦いは明日だ!






この時、二人で練った作戦は結局使われなかった……。


事件はその日の夕方に起こった。

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