9話 買い物へ
「次のお土産も決まったわね」
ママはフフフッと嬉しそうに笑っていた。
「あの行商がまた来てればいいな!」
パパもにこやかに微笑んでいた。
二人を見てわたしも嬉しかった。
「幸せ」だった。
この時間がずっと続けばいい。
そう思うわたしがいる。
だけど……。
「よし! 腹もいっぱいになったことだし、せっかくの休みだ! レア! 買い物に行こう! 何か買ってやる!」
「いいの?」
「ああ! どこに行く? っていってもレアが欲しがりそうなもんなんて、エダさんの店かマルタばあさんの店くらいしかなさそうだな。どっちにする?」
パパが古着屋と雑貨屋の2択を提案してきた。
古着屋に鎧とか売ってたかな?なんて考えたが、そもそも8才女児が着られる鎧なんてあるはずなかった。
どっちかというと雑貨屋かな?
「じゃあ、おばあちゃんの店がいい」
「おし! じゃあ行こう! 休みじゃなけりゃいいがな」
「大丈夫よ。マルタさん、お店を閉めてても家にはちゃんといるから、呼べば出てきてくれるわよ」
「そうか。それなら安心だな! 出発だ! 行くぞレア!」
「うん、行こう!」
わたしとパパはマルタさんの雑貨店へと出発した。
手をつないで歩くのは恥ずかしかったけど、なんだかちょっと楽しかった。
実はエダおばさんの古着屋さんはその道中にあるので、パパは最初から両方に行くつもりだったようだ。
「一着いいぞ!」というので、お腹にポケットが付いているゆったりとした薄い黄色のワンピースを買ってもらった。
黄色くて可愛い!
黄色は幸せの色だ!
「ママにナイショな!」と言っていたけど、服をナイショにしたら着られないのでもちろん却下!
一緒に叱られよう。
よしっ! 覚悟完了!
道行く人たちに
「あらレアちゃんパパとお出かけ? いいわねー」
とか
「おぅ! エイデン、レアちゃんと買い物か? うちの娘なんか『父ちゃんと一緒になんか歩きたくない!』とか言うもんでよ~。可愛げもありゃしねぇ! レアちゃんは可愛くていいな~」
なんて次々に声をかけられた。
村社会だ。
同じような返事に飽きてきた頃、おばあちゃんの店が見えてきた。
「おっ、開いてるな!」
開けっぱなしの入口から中に入ると、店内の様子が見えた。
棚に並ぶ統一性のない品々。いろんな瓶や置物、よくわからない物。まさに「雑貨」という感じだ。
現代でいうリサイクルショップのようなこともやっており、持ってきたものを何でも買い取ってくれる。それが棚の統一感のなさに拍車を掛けているようだ。
イスに座って本を読んでいた老眼鏡のおばあちゃんがこちらに気付き、声をかけてきた。
「おや、エイデン。珍しいね。あんたがうちにくるなんて」
「ああ。久々に来たけど、変わんないな! 店もマルタさんも」
「あたしゃもうババアだからね! 5年10年じゃ大して変わんないよ。ああそうだ、ターナちゃんの注文してた香油が来てるよ」
「じゃあそれも買ってくよ。でも今日の用事はそっちじゃないんだ。レアに何か買ってやろうと思ってね」
「あぁ! レアちゃんもよくきたねー。パパと買い物なんて良かったわねー」
「はい!」
「おや! お行儀のいいこと! 良い子にはパパが何でも買ってくれるってよ」
「その手にゃ乗らねーよ。レア、500セラまでなら好きなの選んでいいぞ!」
「ケチなパパはいやだねー」
「うるさいよ」
こうしてわたしは500セラという限られたの自由の中で好きなものを選ぶという、楽しくも悩ましい難題に挑むことになった。