第五十一話
「タツヤ殿、先程のご褒美の件でお話があります。ご同行願えますか?」
昼休みも終わろうとしている最中、ロベリアが食堂に顔を出した。生徒指導室でサバティーに激烈に絞られていて、今しがた解放されて来たのだ。
「ご褒美とは何ですか? それとタツヤを何処へ連れて行く気ですか?」
言葉を発したのはエレーナだった。早くも警戒の色を滲ませている。周りの傍観者達はこれから起こるであろう竜也争奪戦に興味津々の様子で二人を見守っていた。
「ご褒美の内容は内緒です。それと行先は女子更衣室です」
竜也は、ロベリアの胸を凝視する。淡い期待に胸が高鳴っていた。自然と頬が緩んで来て、だらしない面相になる。
エレーナが脇腹をつねり上げて来るが、緩んだ頬は直らなかった。
「女子更衣室にタツヤを連れ込んで、どうするつもりですか?」
エレーナの声が一オクターブ下がる。目元も鋭さを増して戦闘態勢に突入していた。
ロベリアは、そんなエレーナの視線を歯牙にもかけず、竜也に向き直る。
「タツヤ殿。ご返答は?」
ドリーヌのように妖艶にとはいかないが、出来るだけ胸を強調してみせて竜也の気を引こうとする。
竜也の視線は、ロベリアの胸に釘付けだ。ご褒美という名の妄想に浸かっている様子が誰の目にも手に取るように分かった。
しかし竜也は残念そうに溜め息を吐いて首を左右に振る。
「ご褒美には凄く興味があるけど、城での一件があるから止めとくよ」
その答えにエレーナの顔が一気に破顔する。
ロベリアは少し落胆したように肩を竦めてみせた。エレーナの面前では、勝ち目が無い事は分かっている。今回は竜也を本気で口説こうとしていた訳では無いので、ここで引き下がる事にする。
「仕方がありませんね。エレーナさんも一緒に来て下さい」
突然の要請に、エレーナの顔が面食らったようになる。竜也と二人して顔を見合わせ、警戒の色を滲ませながら思念で会話しだす。
「私も同行して宜しいですか?」
セシルが、エレーナに助け舟を出してやるべく付き添いを買って出る。
「かまいません」
「では、私もご相伴に預かります」
ドリーヌも、ちゃっかり便乗する。
一行は、地下迷宮の手前にある女子更衣室に向かった。食堂を出て階段を下りたら、すぐに地下迷宮の入口なので一分も経たないうちに到着する。
今は昼休み中なので、誰も地下迷宮には潜ってはいない。当然ハニカム構造のボックスの中は何もないのだが、竜也は条件反射的につい覗いてしまう。
「此方です」
ロベリアは、そんな竜也の行動に内心ため息を吐きながら、更に奥の部屋へ案内する。
奥の部屋は武具の格納庫だ。様々な鎧や剣が置いてある。そこに新品の鎧一式が置いてあるのを見て、竜也は我知らず感嘆の溜め息を吐いていた。
板金の胸鎧に肩当て、佩楯、籠手、脛当て、方形の盾、兜は額の所に紅玉の付いた冠を模した物だった。
ライトブルーに鈍く輝く鎧は、特殊な金属で作られている様だった。
「国より支給された武具一式です。勇者様専用という事で、軽くて丈夫なミスリル銀で、特別に作られています。どうぞ試着なさって下さい」
竜也は、皆に手伝ってもらいながら鎧を着込んでいく。想像以上に軽い。すべて装備しても、今まで着ていた鎧の半分くらいの重量にしか感じられなかった。
姿見鏡の前に立ち、自分の出で立ちを確認してみる。流線型の曲線美は端麗ですらある。
自分で言うのもなんだが、格好良い。なかなか様になっている。意匠を凝らした細かい文様が刻まれていて装飾用にも見て取れるが、実用性が損なわれているような事は無かった。
額に紅玉の付いた冠のような兜は、ブーメラン型の錣意外にも、ちょうど耳の後ろ辺りから翼のようなものが生えている。その形貌は、どこぞのゲームに出て来る勇者そのものだった。
もうここがゲームの世界ではないと認識はしていたつもりだったのだが、ついつい自分が主人公のゲームストーリー的展開に、狐にでもつままれたような気持ちになる。
「剣はないの?」
一通り、姿見鏡の前で自分の格好を眺めた後、武器を所望する。
ロベリアは、無言で一本の剣を手渡してきた。それは、学院からの貸与品とまったく同じ青銅の剣だった。ライトブルーに鈍く輝く豪奢な鎧に、赤銅色の剣は何ともミスマッチだ。
「鎧はこんなに豪華なのに、なんで剣は安物なの?」
竜也はロベリアに食って掛かる。できればロベリアが持っている緑色に淡く輝く大剣のような名剣が欲しかった。
「剣の所有には、試練を受けてもらう必要があります。現在のタツヤ殿では九十九回くらいは死んでしまうと思われますが、受けてみますか?」
竜也は、胡乱な視線をロベリアに向ける。前回いわれた死亡回数が一つだけ減っている所に現実感がある。レベル百まで上げれば試練に挑戦できるという事なのだろうか?
しかし、一週間にレベルが一つ上がると仮定して計算してみると、魔物の軍団が攻めて来るまでには到底まに合わない。
竜也はもう一度、姿見鏡を覗き込む。装飾用としても十分価値のある鎧と、安物の青銅の剣の組み合わせは如何ともし難い。
丁度、昼休みが終わるチャイムが鳴り響く。三時限目は地下迷宮での戦闘訓練だ。
「さぁ、タツヤ殿は女子更衣室から出て行って下さい。そして地下一階のドーム広場に先に行って待っていて下さい。まだ『芋』は卵から孵っていないと思いますが決して触れないようにお願いします。
もしかしたら『クモ』のような敵がいるかもしれませんが、絶対に手を出さないで下さい」
竜也は了解したと言うように頷き、女子更衣室を出る。そのまま地下迷宮に突入していった。
天然の鍾乳石を削って加工してある洞窟は、もう何度も足を運んで見慣れたものだ。等間隔に設置された燭台のおかげで光源にも不安はない。やがて分かれ道が現れる。右に進めば小鬼の居る広場に行き、左に進めばジャイアント・キャタピラーの縄張りのドーム広場に行く事が出来る。その先へは行った事が無いのだが、地下十階まである迷宮なので、まだまだ先は長い。
竜也は左の道へ歩を進める。一応用心して背中に背負っていた方形の盾を左腕に装着しておく事にする。革のベルトに腕を通して持ち手を軽く握る。腰に佩いている青銅の片手剣を構えてドーム広場に入る。
ドーム広場の中央には、一昨日の夜に設置したジャイアント・キャタピラーの卵が山積みにされている筈だった。しかし、そこには半数くらいの卵しか見当たらなかった。孵化したのかとも思ったが、卵の殻も無く幼虫の姿も見当たらない。
竜也は辺りに用心深く視線を向ける。何かが潜んでいるような気配を感じた訳では無いのだが、うなじの辺りがチリチリと焼け付くような危機感を感じていた。
—— ヒュン、といういきなりの風切り音に、構えていた盾を目前に引き上げる。ミスリル銀製の盾に、飛来して来た矢が当たって大きな音を立てる。その様子から鉄の鏃で威力もかなりの物だと推測できる。矢は後から後から降り注いできた。
たまらず盾を翳しながら後退する。ドーム広場の出入口まで後退すると矢の攻撃は中断された。
竜也は、用心深くドーム広場の中を覗き見る。『芋』の卵の陰に隠れて矢を放っていたと思われる集団が姿を現していた。
何時ぞやに腹部を刺された小鬼だった。小鬼達は竜也を中心に扇形に展開していてショートソードや短剣を構えていた。飛び道具系は二匹で短弓と十字弓を持っている。剣を構えている小鬼の数は四匹だ。これでは勝ち目はない。エレーナに思念で救援を要請して時間を稼ぐ事にする。とりあえず出入口は死守しないと、背後に回られたら命の保証はないだろう。
小鬼の一匹が奇声を発しながら突っ込んでくる。背後にもう一匹が付き従っている所を見ると最初の一匹目は囮だろう。後方の一匹が弓を引き絞っている所を見ると二匹とも囮なのかもしれなかった。
後方で短剣を構えていた二匹が動き出した。連携はかなり高度なものだ。いったいどれが本命なのか分からない。どれもが本命であり、揺動なのかもしれなかった。
とりあえず突っ込んでくる小鬼に剣を振り下ろす。なかなか機敏で回避力が高い事は前回の戦闘で学習済みだ。剣をひらりと躱される。背後に居た小鬼が飛び掛ってくる。真下から思いっきり蹴り上げる。軽量の小鬼は面白いほど後方に吹っ飛んでいった。
この動作中も弓の射線上から盾を外しはしなかった。焦れた後方の小鬼が十字弓を射掛けてくる。矢の飛来する風切り音に心臓がすくみ上ったが、盾はちゃんと矢を跳ね返してくれていた。
時間差で突っ込んできた二匹の小鬼と、最初に突っ込んできた小鬼が間合いを計るように此方の様子を窺っている。蹴られて吹っ飛んでいった小鬼も、そこへ合流した。
—— 痛てーな、コノヤロゥ! と下衆な言葉が聞こえて来そうな、眼に物言わせる視線で睨み付けてくる。
もし元の世界のコンビニ前などで出会ってしまっても、絶対に眼を合わせてはいけない類いの輩だが、現在の竜也は平静でいられる事が出来た。
足さばきと剣の握り方という基本中の基本を修得しただけで、剣裁きが凄く安定したものになっている事が自分でも感じ取れた。
ロベリアは一瞬にして小鬼を殲滅してのけたのだから、こんな物で満足はしていられないのだが、ついつい天狗になってしまう。竜也は剣を大振りに振り回す。
その隙を小鬼は逃さなかった。剣を掻い潜って懐に飛び込むと短剣を振るう。
慌てふためいた竜也は、たたらを踏んで後退る。そこへ矢が飛来して来た。矢は右手の甲を掠って後方へ流れていく。籠手で守られているので大事には至らなかったが、手がしびれて握力が無くなってしまい、剣が真面に握れなくなってしまった。
懐に飛び込んて来た小鬼は、なんとか盾で殴り付けて撃退したのだが、窮地に追い込まれた事に変わりは無かった。
竜也は用心深く盾を前面に構えて小鬼達の出方を探る。間合いの距離が『芋』の時と違う事に戸惑いを覚える。間合いの取り方を『芋』で嫌というほど練習した筈なのに、敵が替わっただけで目測が取れない事に未熟さを痛感していた。
小鬼達も今がチャンスだと分かっているみたいだったが、竜也の隙の無い構えに攻撃を躊躇している様だった。それでも果敢にフェイントを織り交ぜながら攻撃を仕掛けてくる。
竜也は防御に徹して、右手の痺れが回復するまでの時間を稼いでいた。
そこへ疾風の如く現れた人影が、怒濤の連撃で四匹の小鬼達を瞬殺していった。飛来してくる矢を細剣で弾き、後方の小鬼に迫る。脱兎のごとく逃げ出した二匹に魔法の矢を放ち蜂の巣にする。
竜也は茫然と、疾風の如く現れたエレーナの鬼神の如き戦闘を眺めていた。戦闘はほんの一瞬で方が付いてしまった。やはり自分とは格が違い過ぎる。今までの自分なら、こんな動きが出来る筈が無いと半分あきらめモードに入る所だが、どんな事があっても勇者になると約束した手前、怖気付く訳にはいかなかった。
エレーナは、すべての小鬼を撃退すると竜也に向き直った。竜也が何処も怪我をしていない事を確認すると安堵の溜め息を吐く。しかし表情が和らいだのは一瞬だけで、すぐさま固い表情に戻る。
「戦闘中に油断は禁物です。非力なゴブリン相手とはいえ、嘗めて掛かると命に係わります。どんな相手にでも全力をもって当たるようにして下さい」
エレーナの何時にも増してきつい口調に、竜也は面目なさそうに謝罪する。確かに調子に乗っての大振りで窮地に追い込まれた事は確かだ。一瞬の判断ミスで命を落とす可能性があるという事を肝に銘じておかなければならない。
エレーナに遅れること数十秒でジェレミーを始め、続々と皆が集まりだした。竜也の生存に安堵の溜め息を吐く者、ゴブリンの穴だらけの死骸を見やり、エレーナの連撃の凄まじさに驚愕している者など様々だ。
ドーム広場の中央に据え置かれてあるジァイアント・キャタピラーの卵を見やり、数が減っている事に動揺の騒めきまで起きている。
苦労して取ってきた卵が半分も盗まれている事に、エレーナも落胆の色を隠せないでいた。
「犯人はゴブリンよね?」
「ゴブリンのエリアに行けば、まだ無事な卵が残っているかも知れないですよね?」
皆は卵の奪還作戦を立て始める。
エレーナ、ジェレミー、シェリル、ローレンス、ミルドレッドの上位五人がゴブリンの生息するエリアに向かう事となった。他の皆もパーティー戦をやりながら卵の探索をする事となった。
竜也のパーティーにはロベリア、アリシア、レイラ、プリシラの四人が加わった。竜也にとってロベリア以外の娘は馴染みが薄い。
ロベリアは板金鎧を着込んでいる。盾も剣も持ってはいないが、中空より大剣を取り出せるのだから問題は無い。
アリシアとレイラは灰色の長衣姿だ。アリシアが棒杖をレイラが長杖を持っている。
棒杖と長杖の違いは何なのかと得体もない考えが浮かぶが、とりあえず頭の片隅に寄せておく。
プリシラは軽鎧に格闘用の武器を装備していた。三本の鉤爪が拳の先より突き出ているような形状をした変わった武器だった。
エレーナは、竜也の所属するパーティーメンバーを不安そうな眼差しで見やる。学年下位の四人だからだ。ロベリアは実力的にはトップクラスなのだが、別の意味で竜也と一緒に行動させる事が不安だった。
ロベリアが、その視線に気付いて挑発的な笑みを作る。
エレーナが何か言おうとした時に、ジェレミーが出立の号令をかけた。エレーナは心配気に竜也に視線をやるが、パーティーメンバーが移動を開始したので、渋々ゴブリンの生息するエリアの探索に向かって行った。
他のパーティーもいろいろ方針を決めて出立していく。ドーム広場に残ったのは竜也達五人だけになってしまった。
「レイラさん。コタロウちゃんを、いつまでも彼氏に引っ付けておかないで、卵の探索に使って下さい」
プリシラの要請にレイラは眼を瞑る。思念を使い魔のコタロウに同調させると、使い魔の見ている情景が浮かんでくる。
彼氏であるクリスティンは休暇中で、見知らぬ娘とデート中だ。街角のカフェテラスで楽しげにお喋りに興じている。
レイラは眉根を寄せる。あの浮気者は勇者様よりタチが悪い。お仕置きが必要なようだ。
クリスティンと娘が着いているテーブルのど真ん中に、手の平を広げたくらいの巨大な蜘蛛が頭上から落下して来た。
娘は耳をつんざくような悲鳴を上げる。クリスティンもレイラの使い魔である巨大な蜘蛛を驚愕の表情で見つめていた。クリスティンは巨大な蜘蛛に驚いているのでは無かった。レイラの今晩の行動に恐怖しているのであった。
コタロウはクリスティンを一瞥すると、そのままカサカサと物陰に隠れてしまった。
「な、何だったの? 今の巨大な蜘蛛……」
娘は、いまだに蜘蛛の隠れ潜んでいる物陰を注視しながら呟く。いきなりカサカサと物陰から出て来て、足元をうろつかれては敵わないと、両足を空中に上げながらクリスティンの様子を窺う。彼は顔面蒼白で今にも倒れてしまいそうな様態だった。
「ごめん、用事を思い出した。今日はこれで……」
クリスティンは席を立つと、そそくさと退散するように店を出て行った。
その様子を見届けて、レイラは眼を開けた。そしてコタロウに戻るように思念を送る。レイラの足元に巨大な蜘蛛が姿を現す。
「レイラさん。私のソウイチロウに、もう一度コタロウちゃんの特殊能力をコピーさせて頂きたいのですが宜しいですか?」
ロベリアの要請に、レイラは諾了の意をもって頷く。
ロベリアの肩口に妖精竜が姿を現した。虹色の蝶のような翅をゆっくりとはためかせて宙に浮いている。光の鱗粉が空中に舞い散り儚く消えてゆく。その様相は、いつ見ても幻想的な妖精そのものだった。
ソウイチロウは、ゆっくりと地表に居るコタロウの傍らまで降下していく。眼がキラリと光を帯びる。赤色の一本の光の筋が瞳よりはなたれ、コタロウの身体を上から下へとひと撫でする。
その様子を見守っていた竜也は、まるでバーコードリーダーのようだと思った。
「これでソウイチロウとコタロウちゃんに探査に出てもらえるので、私達は、ここで卵が見つかるまでのんびり待っていましょう」
ロベリアは、早くもサボる段取りを組んでいた。
「そうはいきません。このドーム広場の南の出入口と繋がっているカブトエリアに数十個の卵を発見しました。すぐに回収に向かいますよ」
プリシラの発言に、ロベリアは眼を見張る。
「いつの間に調べたのですか?」
「別に探査能力が無くても、私のシュンスケは卵くらい発見できます。まさか稀に見る使い魔のソウイチロウちゃんは、それしきの事も出来ないのですか?」
プリシラの挑発的な物言いに、ロベリアはバツが悪そうにソウイチロウに視線を向ける。ソウイチロウは主人の意を酌んでサボる気満々だった。
ロベリアがソウイチロウに遠距離探査能力をコピーさせたのは、竜也の見張りの代役の為だったのだ。
—— 私はサボる気満々でしたが、彼方はサボっては駄目です。
ロベリアの思念での注意にソウイチロウは、喉を威嚇するように鳴らす。その不満気な様子は妖精と名は付けど、やはり竜族と思わせる迫力があった。
—— コノ様ナ、特殊能力ガ無クトモ、じゃいあんと・きゃたぴらーノ卵ノ在処ハ全テ把握シテイル。
ソウイチロウは、思念で全ての卵の在処を細かく伝えていく。
「この部屋にある卵の数は19683個。カブトエリアにある卵の数が81個。割れてしまった卵のかけらが243個分。その奥から地下三階に降りたグレムリンエリアに729個。割れてしまっている卵のかけらが2187個分。ゴブリンエリアの卵は6561個すべてが食べられてしまっています。9882個の卵が殻ごと食べられたのか行方不明です」
ロベリアは、細かく全ての卵の個数まで言ってのける。そして肩口辺りまで浮上してきたソウイチロウを自慢気に見やる。
「遠距離探査能力も稀に見る使い魔であるソウイチロウに掛かれば、ここまで高性能になるのです」
大嘘であった。ソウイチロウが思念で語った通り、特殊能力が無くとも、このエリアにある卵の数くらいは把握できるだけの能力を始めから持っていたのだった。
なんとなくだがロベリアの発言に不信感を抱いている竜也は、そんなロベリアに胡乱な視線を向けていた。




