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遊園地

第五話 遊園地


「うぅわぁぁぁーーー。」

 ここは、翔太の家のすぐ近くにある遊園地。僕は、この夢と希望の場所で絶叫していた。

-一時間前-

「ねぇー翔太! 向こうのほうに見えるのって、まさか遊園地?」

「ふぁーーー、うぃ?」

 翔太は、朝から元気なあやめの言っている事が分からず、欠伸をして布団を被った。しかし、あやめはそんなことを気にせずに布団を取り上げ、翔太の体を揺らしながら話を続けた。

「ねぇー、起きてよ。私遊園地に行きたい。」

「えっ今日? 急に言うなよ・・・それに。」

 翔太は、昨日の夜に玄が言っていた事を思い出す。幽霊は直射日光を3時間以上浴びてはいけないということを・・・。

「てっ言われたしなぁー。」

「お願い。あそこに行けば、何か思いだすかもしれないでしょ!」

「う~ん。それもそうだけど・・・、よし分かった。」

「やったーーー。」

 あやめは、嬉しいあまりに翔太がまだ寝転んでいる布団の上で飛び跳ねている。

「ちょっ、危ない。でも、それには条件がある。なるべく直射日光には当たらない事。それと、

行っても三時間が限界だから、それだけは覚えとけよ!」

「はーい。じゃ、着替えてくるね。」

「うん」

 あやめは、着替えに戻ろうとすると、こちらを向いて・・・、

「あぁー。そうだ。朝ごはん作っておいたから、早く食べて準備してね。」

「おう、ありがと・・・・・・、てっご飯作ったのか!」

「・・・・・・・・・。」

「まじか・・・。朝からあいつの朝食か、食べれるのか?」

 翔太は、決意を決めるとリビングへと続く道のりの一歩一歩歩んでいった。テーブルには、あやめが作った朝食がおいてあり、恐る恐る食べ始めた。

「うっ、相変わらず塩濃いな、これ一週間続けたら絶対高血圧になるな。今後なるべく作らせないようにしないとな。」

と、思いつつ味噌汁を啜っているとあやめが奥の方から走ってきた。どうやら着替えが済んだらしいが、どこか見た事のある服だった。

「どう、似合うでしょ。やっぱこれにしようかな・・・?」

「お前、それどこから持ってきた?」

「えっ、どこってなんか女物の多い部屋があったから、そこからだけどどう似合う・・・。」

「ぶっしゅーーー。」

 翔太は思い切り吹いてしまった。

「それ、愛美のじゃん。それ着たらだめだよ、着てることばれたら大変だよ。」

「愛美? あぁーあの女の人奥さんだったんだ。いいじゃん、今日一日だけでいいから。毎日同じ服じゃ女が廃るわ。」

「女が廃るって、もうおばさんじゃん・・・。あっ!」

 翔太が振り向くと、にこにこしながら頬を殴られた。

「絶対これで行く・・・。あと、以後気おつけるように。」

「・・・・・・すいません。」

 朝食を食べ終わると、自分の部屋に戻り着替えを始めた。口に先ほど食べたあやめの朝食の塩気が残っているので、着替えを終えるとすぐに洗面所に向う。その塩気が消えるまで磨くと口の中がすっきりして気持ちが良かった。そうして、のんびりと歯を磨いていると玄関のほうから、あやめが大きい声で翔太を呼んだ。

「ちょっと、なにしてるの? 早くしないと始まっちゃうんじゃないの・・・。」

「あっごめん、すぐ行くから・・・。でも、始める(開園)は確か十時だから、後三十分ぐらいしてからだから大丈夫だよ。」

「いいから、早くしないと並ぶよ。」

「はーい。たく、何が何か思い出すかもってただ遊びたいだけじゃん。」

 すると、あやめが優しい声で言った。

「なにか、言った?」

「いや、なにも言ってないよ。よし、じゃー行こうか遊園地に!」

「いっやほーい。」

 翔太とあやめは、階段を下りるとマンション地下一階にある駐車場から自転車を持ってきて道路の隅で、自転車の点検を始めた。

「えっ、まさか自転車で行くの?」

「うん。だって車は愛美が仕事で乗っていくから、俺は自転車でけど。」

「あっそ、じゃー後ろ乗せてよ。」

「後ろ、でも二人乗りは捕まるよ。」

「私は、幽霊だから基本的にあんた以外の人には見えないの・・・。」

「そうだった。よし、、大丈夫そうだ。早く乗って・・・。」

 翔太が自転車に乗り、あやめを後ろへと乗せた。近くといっても、二キロぐらいはあった。近道をしようと細い路地裏を通っていると、ボロイアパートが立ち並ぶ所であやめが止めてといって翔太が握っているハンドルのブレーキを掴み自転車を止めた。

「なんだよ急に、なんかあったのか?。」

「ここ来たことあるかも。」

 と言って、少しアパートを眺めていた。

「てことは、死ぬ前にここに住んでたとかそれとも、この近くか・・・。」

 あやめは、翔太が尋ねると意識を取り戻したかのように我に返った。

「あっごめん、なんでもなかった。それより早く行こう!」

「はーい。」

 翔太は、先へと進んだ。数分自転車で走っていると、遊園地の乗り物が見えてきた。

「ねぇ、あれだよね。早く乗りたいな、どんな風なのがあるんだろう。」

「どんな風って、あーそうか。あやめが生きてたころとだいぶ変わってるかもね。」

「うわー楽しみ・・・。」

 遊園地に着くと多数並んでいるがすぐに入れそうな人数だ。しばらく待って翔太達の番になると受付付けの係りの人が、

「何名さまですか・・・?」

「2名で・・・いて。あすいません一人です。」

「では、大人料金で3800円になります。」

 翔太は入場料を払い入場するといきなりあやめに怒られた。

「だから、私は死んでるから人数に入れないでよ。周りの人も笑ってたし。」

「ごめん。でも、おれにはみえてるんだから仕方ないじゃん。」

「それよりここ何度か来た事あるかも・・・。」

「ほんとか?」

「まぁいいわ。何乗ろうかな?」

「最初だから、ゆっくりしたのでいいんじゃない。コーヒーカ・・・。」

「あれにする。」

 あやめが指を刺したのは、天高くそびえる龍のようにくねくねしていて、人を恐怖へといざなう怪物そうそれはジェットコースターだ。これに関しては、怖いとかいう問題じゃない。翔太にとっては地獄の乗り物なのだ。震える翔太の事など気にせずに、地獄へと進んでいくあやめは、早く早くとせがんでくる。

「ねぁー、早く乗りたい。」

「別なのからでもいいんじゃない。いきないジェットコースターじゃなくても・・・。」

「これに、乗りたいの。さぁっ、乗った乗った。」

「・・・・・・・・・。」

 地獄のいすへと座った翔太は、がちがちに緊張していた。係員さんが、安全確認をするために一人一人に確認している。翔太のところへ来たとき、

「お客様、大丈夫ですか?」

「ひっ、はい大丈夫です・・・・・・・・・。」

 係員さんの声に驚く翔太。あやめは、早く始めらないのかを楽しみにしている。全席の点検が終わったみたいでジェットコースターが動き出した。少しづつ上へと進んで行くにつれて翔太にとっては、地獄の階段の一歩一歩を歩んでいるような気分だ。そんな中、あやめはワクワクを隠し切れず翔太意外の人からも見える姿でいた。

「なんで、お前は平気なんだよ。やっぱ死んでると、怖くないとか・・・。」

「面白そうじゃん。だって、私遊園地なんてほとんど言った事ないし。私基本スリルが大好きなのよ。」

「ていうか、大丈夫なの? たぶんお前、見えてるよ。」

「えっ!本当だ・・・、よし大丈夫。」

 そう言っている間にも、ジェットコースターは今にも急降下する寸前だった。そのとき翔太は絶叫した。

「いゃっほーい。楽しーーー。ねぇ、翔太。」

「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ。」

「なんて聞こえない。もうちょっと聞こえるように言ってよ。」

「うわぁぁ△◇$#Эきg・・・。」

「まぁいいや。楽しい。」

 数分たって地獄は終わり、ジェットコースターは止まった。安全装置が取れた途端に、急いで降りた。

「はぁー・・・・・・・・・終わった。」

「あぁー気持ちよかったね翔汰! ねぇー大丈夫?」

「おう、なんとかな。死ぬかと思ったけど・・・。」

「よし、じゃ次に行こ・・・。」

「ねぇ、ちょっとあんた係員さんよね。私たち見ちゃったのよ。」

 翔汰たちの後ろにいたのは、50歳ぐらいの関西マダムが二人何やら騒がしいい。どうやら、あやめが消えたところを見られていたらしい。

「そうそう、確かに目の前に座ってた女の人だった気がしたけど・・・。」

「その、女の人が消えたのよ!もしかしたら・・・。」

 翔太は、あやめと相談した。

「どうすんだよ、見られてるじゃん!」

「とにかく、ここから離れましょう。あの、おばさんたちに気づかれないうちに・・・。」

「うん、それもそうだ。そうしよう・・・。」

 すると、逃げようとしている事に気づいたおばちゃん二人は翔太を引きとめた。自分たちの言い分の重要参考にとして話に参加することとなった。

「ねぇー、あんたの横に女の人いたわよね・・・?」

「いや、自分怖くてほとんど目を瞑ってたんで分からないですね。」

「うそよ! あんたの横なんだから、少しぐらいは見たでしょ。」

「いや、本当に知らないですって。」

 翔太が、おばさん二人に尋問を受けてうると、係員さんが三人慌ててやって来た。

「あのーお客様、私ども係員でジェットコースターの周辺を探したところ、そういった女の人は見つかりませんでした。」

 おばさん二人は、怒り気味で係員に言った。

「そんなこと、ちゃんと探したの? 周りの人とかにはちゃんと聞いたの・・・?」

「も、もちろん周辺のお客様にも聞いたけれど、目撃者は一人もいませんでした。それで、ほかのお客様にも迷惑ですので、この辺で・・・。」

「分かったわよ。ごめんなさいねお兄さん。」

「いえ、そんあことは・・・。」

 そう言うと、おばさん二人は帰っていき係員さんにも頭を下げられた。入園して、最初からトラブルが起きた翔太はこれから来るトラブルを対処できるか心配になってきた。それに疲れた翔太は、休憩するために飲み物を買いに行った。

「あぶなかった、気おつけろよあやめ。」

「ごめんごめん、まさか気づかれるとは・・・あはは。それより、結構並ぶね。」

「それゃ、遊園地だしこんなもんだろ。」

「そうだ! いいこと思いついた。」

「おい、越すとかだめだからな。順番があるんだから!」

「分かってるって、いいからあっちのベンチで見といてよ。それと、お金ちょうだい。」

「いいけど、迷惑かけんなよ。」と、念入りに言った。

「はいはい。」

 あやめはそういうと、一番前に並んでいたおとなしそうな男の人に溶け込んでいった。すると、男の人は先ほどとは一変し知っているテンションの高いあやめが言いそうな口調で飲み物を注文していた。注文が終わり飲み物を受け取ると、男の人が翔太のほうへ持ってきて帰って言った。あやめは、やったぞと言わんばかりに笑顔でこちらに戻ってきた。

「どうだった。私が憑依して操ったのよ。」

「そんな事も出来んのか? 男の人は買えたのか・・・。」

「そこは大丈夫! 憑依しているときは憑依されている人の考えている事は分かるのよ。」

「そーなんだ。ある意味便利だな。それより、次ぎ乗るのはもう少しゆっくりした奴がいいな・・・いいだろ。」

「ゆっくりした奴かー? えーっと、どれにしょうかな・・・。」

「あれ、翔太じゃん。何でここにいるんの?」

「えっ?」

 そこにいたのは、翔太の友人の琢磨だった。あやめと出会った原意の一人でもある。

「琢磨!」と、翔太は驚きを隠せない。

「それに、隣にいる女の人誰だよ。友達・・・まさか・・・。」

「違うって、誤解だ。あやめはそのあのな・・・ていうか、見えてんのかこいつんこと?」

「あやめって、下の名前で呼ぶ仲なのかやっぱり浮気か? お前、あんなに可愛くて仕事も出来る人がいるのに、ひもの分際で・・・。」

「ひも言うな! それより、見えてんのかあやめのこと・・・。」

「見えてるって、お前言い分けはいけないと思うよ。諦めて自首しろ・・・。」

「いいから話を聞け。」

 翔太は、今までの出来事を琢磨に説明した。最初は、冷たい目で見られていたがあやめの説得もあり、何とか分かってもらえた。あやめには、琢磨と話があると言って離れてもら

った。

「なんとなくは分かったけど、本当にいるんだな。じゃー、車の中で見た女はあの子だったんだな。それと、なんで俺にも見えるんだ?」

「それは分からないけど、霊感とかが強いんじゃない。」

「そうか。あと、幽霊ってそんなに沢山いるのか?」

「あーいる。驚くほど沢山いる。あと、このことは愛美には黙っといてくれないか。」

「いいけど、いっても信じちゃくれないと思うぜ。」

「確かに・・・。」

「それより、本当なのか? あの子の子供を見つけるって、見つかりっこないよ。」

 琢磨は心配そうな顔をしていたが、翔太の諦めそうにもない目を見て止めるのを諦めた。

「見つけるさ、それにもしかしたら案外近いところにいたりして・・・。」

「見つけるための手掛かりはなんかあんのか。」

「いや、全然ない。」

「まったく、俺も手伝おうか?」

「いや、いいよ。自分で蒔いた種は自分でなんとかするから。それより、今ちょっとだけでいいから一緒に付き合ってくんないか?」

「あーいいよ!」

 翔太は、琢磨を説得し少しの間だけ一緒に遊ぶ事となった。しかし、周りを見渡してもあやめの姿はない。それどころか、身長がそこまで高くないというか低い翔太には自分より大きい人ばかりであまり見渡せない。二人は、手分けしてあやえめを探す事となった。

「どこいったんだあいつ・・・。あいつが行きそうなところって・・・どこだ。」

 翔太は、来た道を辿りながら一つ一つのアトラクションをみているがなかなか見つからない。その時、翔太の目の前にあったお化け屋敷から悲鳴が聞こえた。そのお化け屋敷はこの遊園地の中で2番目に怖いと言われている。ふと、頭の中にあいつの行いそうな事が過ぎった。次は、怖そうなものがいいな!お化け屋敷とか?などを言うに違いないと。

「まさかな、せめて普通のアトラクションにしてくれ・・・。」

「プルプルプル」

 翔太の、携帯電話が鳴り響く。

「うわぁっ・・・。たくびっくりさせるなよなまったく、あー琢磨からだ。もしもし・・・。」

「出るのおせーよ。見つけたぞ!」

「まじ、でっどこいるの?」

「えーと、お化け屋敷だけど・・・しかもこの遊園地で1番怖いと有名なお化け屋敷だ。どうしよう、あやめとか言う人並んでるよ。」

「まじか・・・。」と、自分の勘の鋭さに後悔した。

「おい、どうすんのか聞いてるだろ。」

「わかった、すぐ行くから待っといて。もし、あいつが入りそうになったら止めてくれ。」

「ほーい。」

 あやめは、わくわくしながらお化け屋敷への入り口へと向っている。翔太は、必死で走っている。人ごみを避けてやっとの事で着くと、あやめは入り口付近で入る一歩手前だ。そして、ほかに客は折らずあやめが最後の一人(?)でいる。

「あっいた。琢磨いそぐぞ!」

「おっおう・・・。」

「あやめーーー。」

「ん?」

 二人は、あやめを止めようと急いで入り口まで走ると、係員さんに止められた。

「お客様、落ち着いてください! 急がなくても大丈夫ですよ。どうぞ奥の方へお進みください。」

「えっいや、でも・・・。どうしよう、入りたくはないけど・・・。」

「頼む、一緒に入ってくれ。俺一人じゃ入れないから。」

「分かった。」

 渋々入る三人は奥へと進んでいった。翔太とあやめは怖く足がなかなか動かない。すると、琢磨は二人の驚く姿に笑いをこらえながら先頭に立って進み始めた。

「あやめさん、幽霊でも怖いんですか?」

「べっべっ別に怖くないわよ。ただ、翔太があまりにも情けなさ過ぎてわざと怖がっているふりをしているだけだから、気にしないで・・・。」

「なに、言ってんだよ。別にこんなの怖くなし、俺はお前が怖がってるふりをしているからそれに乗っかってあげてるだけです。」

「なによ・・・。」

 琢磨は止めに入る。

「まぁまぁ、それくらいにして。早く出ればすむ事じゃん。」

 その時、三人の後ろから何かが襲い掛かってきた。翔太とあやめは何がなんだか分からず琢磨を押しのけた。

「きゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

「うわぁぁぁっぁぁぁぁあっぁ。」

 二人は、琢磨をおいて逃げていった。

「いてて、あいつら人を蹴飛ばしやがって。てか、どこまで行ったんだ。たく、あいつらのことだから無我夢中で走って迷うのが落ちだな・・・。早く見つけないと。」

 走って走ってようやく落ち着く二人。しかし、何も見ずに走ってきたせいでどこにいるのか分からない・・・。しかも、あやめは気絶しており翔太の上に倒れている。

「あれ、ここどこだっけ。てっおも・・・。あっ!」

「んーーー、なにか言った。」

「いっいや別に何にも・・・、それより起きろ。早く出ないといけないのに、道が分からないんだけどどうしたらいいかな?」

「えっ、本当? とっとにかく早く出よう。」

「うん、じゃぁ行こうか・・・。まず、こっちの方かな?」

 あやめは、翔太の腕にしがみ付きながら早く行かないか待っている。翔太はそんな姿をしているあやめを見ていると、胸の奥がざわついた。いままであまり恥ずかしがることのなったあやめも、少し恥ずかしそうにしながら言った。

「なによ、早く行かないと琢磨って言う人待ってるかもよ・・・。」

「うん。」

 二人は、まるで恋人同士のような府陰気がある。翔太達は進んでいるにもかかわらずなぜか黒いカーテンを捲ってもお化けどころか人一人見当たらない。ただ、怖いせいか気まずいせいなのか話がない。さらに不気味な通路を進んでくと、奥の方に扉らしいものの影が見える。恐る恐る近づいていくと、予想道理扉があった。

「おい、あやめこれ出口じゃないかな・・・。やったー、意外とここのお化け屋敷怖くなかったね。最初だけだったし・・・。」

「確かに、まぁいいから早く出よう。」

 翔太は、晴れ晴れした気持ちで扉を開けた。すると、二人の目の前に急に幽霊が現れた。驚いた二人は、二人そろって腰を抜かして倒れた。幽霊は気にせず二人の元へ近づいてくる。

「うぁっ・・・。」と、二人は叫んだ。

すると、被っていたお化け衣装を脱いで話しかけてきた。

「あのー、大丈夫ですかお客様? 」

「えっ、誰ですか? もしかして、係員さんですか。」

「はい。そうですが、もしかして迷いましたか。お怪我はありませんか? でしたら、出口まで案内いたしますのでどうぞこちらへ着いてきてください。」

「はい。あの、お化け屋敷で僕みたいに迷う人っていますか?」

「いや、なかなかいらっしゃいませんね。私が担当してからは初めてです。」

「そうですか・・・。すいません。」

「いえ、これも仕事ですから気にしないでください。」

 そう言うと、どんどん進んでいく。あやめは、翔太に話しかけづに黙って着いていった。しばらく歩くと、係員さんが出口の手前で止まり私はここまでだと言って戻っていった。急いで外へでると、琢磨が心配そうに待っていてくれた。

「やったー、やっと出れた。ごめん琢磨迷っちゃって・・・。」

「本当だよ! 心配したんだからな、ちょっと探したけど見つからなかったから先に行って待っといたんだ。まぁー二人が無事でよかったけど。」

「じゃー、次ぎどこ行こうか?」

 あやめは、完全復活して次に乗る乗り物を探そうとしている。

「お前すごいな・・・。じゃー、次は俺が選ぶ。やっぱ、観覧車は乗っておきたいよな。あれも結構スリルがあって楽しいはずだよ・・・。」

「うーん、なんか微妙・・・。まぁーいいか、仕方ない観覧車でいいや早く行こう!」

「はいはい、行こうか琢磨。ごめんそそっかしくて。」

「いいよ、行こう行こう。」

 三人は、観覧車へと向った。意外にもお客さんは少なく並ばずにすんだ。観覧車に乗ろうとした時、琢磨の携帯が鳴った。出でみると、知り合いからの呼び出しらしく急ぎの用件で、すぐにでも行かないといけない。

「ごめん、翔太。俺帰るわ、ちょっと急ぎの用ができた。じゃ、またな見つかるといいな!」

「あーうん、ごめんな無理につき合わせちゃって・・・。じゃーまた。」

「ありがとうね。琢磨さん。」

「いえいえ、頑張って下さい。じゃ。」

 というと、帰っていった。二人は、琢磨を見送ると観覧車に乗った。やっと落ち着いて話せる状況になったと、ほっとする翔太。あやめは、この手の乗り物はスリルが合ってとても楽しいらしく、窓側から見える景色を見てはしゃいでいた。

「凄いね翔太! 結構つまらないと思ってたけど、高くて面白い・・・。」

「まぁー、俺もこれぐらいはぎりぎり乗れるけど・・・。そーだ、そろそろ本格的に話をしないといけないな。」

「何の?」

「何のって、お前の子供を捜すことだよ!」

 あやめは、目線を上に向けて少しの考えるように見える。

「・・・・・・・・・あっ、そうだね。そろそろ話さないとね。」

「いや、話さないとねって今の間はなんなんだよ。それに、あってなんだよ明らかに忘れてんだろ・・・。とにかく、お前が死ぬまでの記憶を話してくれよ。」

「ごめん。えーと、何て言っていいかその・・・死ぬ前の記憶がほとんどないの。」

「えっ、という事は手掛かりがないってこと?お前なんでそんな大事な事早く話さなかったんだよ。それじゃー見つかりっこないしどこを探していいかわかんないだろ・・・。どうしよう、手掛かりがない以上探しようが・・・ん、どうしたあやめおい起きろあやめおい・・・。」

 ふと、あやめのほうを見るとゆっくりと倒れていった。翔太はなにが起こったかわからず、とにかくあやめを起こそうとするが反応がない。翔太は、ふと時計を見ると約束の時間から3時間たってしまっていた。

「そうだ! もう、三時間もたったのか。あやめが、どこそこいくから時間を忘れてた。どうしよう・・・とにかく遊園地をでないとがんばれよあやめ・・・。」

 翔太の呼びかけがどんどん薄れていく中、あやめの頭の中に死ぬ前の記憶が少しだけ蘇えり始めていた。それは、現在から三十二年前の頃まだあやめが高校を卒業して旦那さんとであった年に遡る。

「ねぇー晃志郎今度の日曜日、遊園地に行きたいな。」

 あやめは、当たり前の事だが三十年後と変わらない姿だった。住んでいたのは、古い民家が立ち並ぶひまわりの書いてある建物一室の304号室で一人の男と一緒に住んでいた。顔は、薄ら薄らしか思い出せない。

「えっ! そんな急に言われても・・・。わかったよじゃー日曜日ね。」

「やったー、楽しみにしてるね!」

 あやめは、悲しい目で男の事を見つけてきた。晃志郎という男は、あやめの目を見て負けたと思い仕方なく遊園地に行く事にした。日曜日、晃志郎はあやめと車に乗り遊園地へと向った。遊園地に着くとかわいい受付の人に、

「お客様、一名様ですか?」

「えっと、一名様です・・・いて。」

「二名様です。すいません。」

「いえ、はいどうぞお楽しみください。」

 二人は、入園すると同時に説教が始まった。

「なに、でれでれしてんのまたったく。今度、あんな事になったら許さないから・・・。」

「ごめんごめん、今度お前の好きなプリン買ってやるから許してよ・・・。」

「うっ、まぁーそれなら許してあげてもいいけど・・・もう、早く行こう。」

「はーい。」

 その時、遊園地で遊ぼうとした時にまた意識が薄れてきて、昔の記憶が暗闇へと消えて行った。そしてその後、暗闇の世界から光が見えてきて微かに翔太の声が聞こえてきた。その光を追うと、一瞬で光に包まれ目を開けると目の前に翔太がいた。

「おいおい、あやめ大丈夫か?」

「翔太、ここはどこ私どうなったの?」

「ここは遊園地の休憩所だよ。お前、観覧車に乗ったとき急に倒れたんだよ。三時間以上外にいたから・・・ごめん俺がしっかりしとけば良かった。」

「そうなんだ。あっそうだ、昔の記憶がちょっとだけど思い出したんだ。」

「ほんとに、もしかしたら倒れたショックで記憶が蘇ったのかも。とにかく早くうちに帰ってから話は聞くから、少しの間安静にしとけ!」

「うん。」

 翔太はあやめを少しの間休ませてから、遊園地を出て家へと帰っていった。

人は、記憶を無くしていても突然に思い出すことがある。それは、幽霊も同じで死ぬ前の記憶が蘇る事があるのだろう。



第五話 遊園地


「うぅわぁぁぁーーー。」

 ここは、翔太の家のすぐ近くにある遊園地。僕は、この夢と希望の場所で絶叫していた。

-一時間前-

「ねぇー翔太! 向こうのほうに見えるのって、まさか遊園地?」

「ふぁーーー、うぃ?」

 翔太は、朝から元気なあやめの言っている事が分からず、欠伸をして布団を被った。しかし、あやめはそんなことを気にせずに布団を取り上げ、翔太の体を揺らしながら話を続けた。

「ねぇー、起きてよ。私遊園地に行きたい。」

「えっ今日? 急に言うなよ・・・それに。」

 翔太は、昨日の夜に玄が言っていた事を思い出す。幽霊は直射日光を3時間以上浴びてはいけないということを・・・。

「てっ言われたしなぁー。」

「お願い。あそこに行けば、何か思いだすかもしれないでしょ!」

「う~ん。それもそうだけど・・・、よし分かった。」

「やったーーー。」

 あやめは、嬉しいあまりに翔太がまだ寝転んでいる布団の上で飛び跳ねている。

「ちょっ、危ない。でも、それには条件がある。なるべく直射日光には当たらない事。それと、

行っても三時間が限界だから、それだけは覚えとけよ!」

「はーい。じゃ、着替えてくるね。」

「うん」

 あやめは、着替えに戻ろうとすると、こちらを向いて・・・、

「あぁー。そうだ。朝ごはん作っておいたから、早く食べて準備してね。」

「おう、ありがと・・・・・・、てっご飯作ったのか!」

「・・・・・・・・・。」

「まじか・・・。朝からあいつの朝食か、食べれるのか?」

 翔太は、決意を決めるとリビングへと続く道のりの一歩一歩歩んでいった。テーブルには、あやめが作った朝食がおいてあり、恐る恐る食べ始めた。

「うっ、相変わらず塩濃いな、これ一週間続けたら絶対高血圧になるな。今後なるべく作らせないようにしないとな。」

と、思いつつ味噌汁を啜っているとあやめが奥の方から走ってきた。どうやら着替えが済んだらしいが、どこか見た事のある服だった。

「どう、似合うでしょ。やっぱこれにしようかな・・・?」

「お前、それどこから持ってきた?」

「えっ、どこってなんか女物の多い部屋があったから、そこからだけどどう似合う・・・。」

「ぶっしゅーーー。」

 翔太は思い切り吹いてしまった。

「それ、愛美のじゃん。それ着たらだめだよ、着てることばれたら大変だよ。」

「愛美? あぁーあの女の人奥さんだったんだ。いいじゃん、今日一日だけでいいから。毎日同じ服じゃ女が廃るわ。」

「女が廃るって、もうおばさんじゃん・・・。あっ!」

 翔太が振り向くと、にこにこしながら頬を殴られた。

「絶対これで行く・・・。あと、以後気おつけるように。」

「・・・・・・すいません。」

 朝食を食べ終わると、自分の部屋に戻り着替えを始めた。口に先ほど食べたあやめの朝食の塩気が残っているので、着替えを終えるとすぐに洗面所に向う。その塩気が消えるまで磨くと口の中がすっきりして気持ちが良かった。そうして、のんびりと歯を磨いていると玄関のほうから、あやめが大きい声で翔太を呼んだ。

「ちょっと、なにしてるの? 早くしないと始まっちゃうんじゃないの・・・。」

「あっごめん、すぐ行くから・・・。でも、始める(開園)は確か十時だから、後三十分ぐらいしてからだから大丈夫だよ。」

「いいから、早くしないと並ぶよ。」

「はーい。たく、何が何か思い出すかもってただ遊びたいだけじゃん。」

 すると、あやめが優しい声で言った。

「なにか、言った?」

「いや、なにも言ってないよ。よし、じゃー行こうか遊園地に!」

「いっやほーい。」

 翔太とあやめは、階段を下りるとマンション地下一階にある駐車場から自転車を持ってきて道路の隅で、自転車の点検を始めた。

「えっ、まさか自転車で行くの?」

「うん。だって車は愛美が仕事で乗っていくから、俺は自転車でけど。」

「あっそ、じゃー後ろ乗せてよ。」

「後ろ、でも二人乗りは捕まるよ。」

「私は、幽霊だから基本的にあんた以外の人には見えないの・・・。」

「そうだった。よし、、大丈夫そうだ。早く乗って・・・。」

 翔太が自転車に乗り、あやめを後ろへと乗せた。近くといっても、二キロぐらいはあった。近道をしようと細い路地裏を通っていると、ボロイアパートが立ち並ぶ所であやめが止めてといって翔太が握っているハンドルのブレーキを掴み自転車を止めた。

「なんだよ急に、なんかあったのか?。」

「ここ来たことあるかも。」

 と言って、少しアパートを眺めていた。

「てことは、死ぬ前にここに住んでたとかそれとも、この近くか・・・。」

 あやめは、翔太が尋ねると意識を取り戻したかのように我に返った。

「あっごめん、なんでもなかった。それより早く行こう!」

「はーい。」

 翔太は、先へと進んだ。数分自転車で走っていると、遊園地の乗り物が見えてきた。

「ねぇ、あれだよね。早く乗りたいな、どんな風なのがあるんだろう。」

「どんな風って、あーそうか。あやめが生きてたころとだいぶ変わってるかもね。」

「うわー楽しみ・・・。」

 遊園地に着くと多数並んでいるがすぐに入れそうな人数だ。しばらく待って翔太達の番になると受付付けの係りの人が、

「何名さまですか・・・?」

「2名で・・・いて。あすいません一人です。」

「では、大人料金で3800円になります。」

 翔太は入場料を払い入場するといきなりあやめに怒られた。

「だから、私は死んでるから人数に入れないでよ。周りの人も笑ってたし。」

「ごめん。でも、おれにはみえてるんだから仕方ないじゃん。」

「それよりここ何度か来た事あるかも・・・。」

「ほんとか?」

「まぁいいわ。何乗ろうかな?」

「最初だから、ゆっくりしたのでいいんじゃない。コーヒーカ・・・。」

「あれにする。」

 あやめが指を刺したのは、天高くそびえる龍のようにくねくねしていて、人を恐怖へといざなう怪物そうそれはジェットコースターだ。これに関しては、怖いとかいう問題じゃない。翔太にとっては地獄の乗り物なのだ。震える翔太の事など気にせずに、地獄へと進んでいくあやめは、早く早くとせがんでくる。

「ねぁー、早く乗りたい。」

「別なのからでもいいんじゃない。いきないジェットコースターじゃなくても・・・。」

「これに、乗りたいの。さぁっ、乗った乗った。」

「・・・・・・・・・。」

 地獄のいすへと座った翔太は、がちがちに緊張していた。係員さんが、安全確認をするために一人一人に確認している。翔太のところへ来たとき、

「お客様、大丈夫ですか?」

「ひっ、はい大丈夫です・・・・・・・・・。」

 係員さんの声に驚く翔太。あやめは、早く始めらないのかを楽しみにしている。全席の点検が終わったみたいでジェットコースターが動き出した。少しづつ上へと進んで行くにつれて翔太にとっては、地獄の階段の一歩一歩を歩んでいるような気分だ。そんな中、あやめはワクワクを隠し切れず翔太意外の人からも見える姿でいた。

「なんで、お前は平気なんだよ。やっぱ死んでると、怖くないとか・・・。」

「面白そうじゃん。だって、私遊園地なんてほとんど言った事ないし。私基本スリルが大好きなのよ。」

「ていうか、大丈夫なの? たぶんお前、見えてるよ。」

「えっ!本当だ・・・、よし大丈夫。」

 そう言っている間にも、ジェットコースターは今にも急降下する寸前だった。そのとき翔太は絶叫した。

「いゃっほーい。楽しーーー。ねぇ、翔太。」

「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ。」

「なんて聞こえない。もうちょっと聞こえるように言ってよ。」

「うわぁぁ△◇$#Эきg・・・。」

「まぁいいや。楽しい。」

 数分たって地獄は終わり、ジェットコースターは止まった。安全装置が取れた途端に、急いで降りた。

「はぁー・・・・・・・・・終わった。」

「あぁー気持ちよかったね翔汰! ねぇー大丈夫?」

「おう、なんとかな。死ぬかと思ったけど・・・。」

「よし、じゃ次に行こ・・・。」

「ねぇ、ちょっとあんた係員さんよね。私たち見ちゃったのよ。」

 翔汰たちの後ろにいたのは、50歳ぐらいの関西マダムが二人何やら騒がしいい。どうやら、あやめが消えたところを見られていたらしい。

「そうそう、確かに目の前に座ってた女の人だった気がしたけど・・・。」

「その、女の人が消えたのよ!もしかしたら・・・。」

 翔太は、あやめと相談した。

「どうすんだよ、見られてるじゃん!」

「とにかく、ここから離れましょう。あの、おばさんたちに気づかれないうちに・・・。」

「うん、それもそうだ。そうしよう・・・。」

 すると、逃げようとしている事に気づいたおばちゃん二人は翔太を引きとめた。自分たちの言い分の重要参考にとして話に参加することとなった。

「ねぇー、あんたの横に女の人いたわよね・・・?」

「いや、自分怖くてほとんど目を瞑ってたんで分からないですね。」

「うそよ! あんたの横なんだから、少しぐらいは見たでしょ。」

「いや、本当に知らないですって。」

 翔太が、おばさん二人に尋問を受けてうると、係員さんが三人慌ててやって来た。

「あのーお客様、私ども係員でジェットコースターの周辺を探したところ、そういった女の人は見つかりませんでした。」

 おばさん二人は、怒り気味で係員に言った。

「そんなこと、ちゃんと探したの? 周りの人とかにはちゃんと聞いたの・・・?」

「も、もちろん周辺のお客様にも聞いたけれど、目撃者は一人もいませんでした。それで、ほかのお客様にも迷惑ですので、この辺で・・・。」

「分かったわよ。ごめんなさいねお兄さん。」

「いえ、そんあことは・・・。」

 そう言うと、おばさん二人は帰っていき係員さんにも頭を下げられた。入園して、最初からトラブルが起きた翔太はこれから来るトラブルを対処できるか心配になってきた。それに疲れた翔太は、休憩するために飲み物を買いに行った。

「あぶなかった、気おつけろよあやめ。」

「ごめんごめん、まさか気づかれるとは・・・あはは。それより、結構並ぶね。」

「それゃ、遊園地だしこんなもんだろ。」

「そうだ! いいこと思いついた。」

「おい、越すとかだめだからな。順番があるんだから!」

「分かってるって、いいからあっちのベンチで見といてよ。それと、お金ちょうだい。」

「いいけど、迷惑かけんなよ。」と、念入りに言った。

「はいはい。」

 あやめはそういうと、一番前に並んでいたおとなしそうな男の人に溶け込んでいった。すると、男の人は先ほどとは一変し知っているテンションの高いあやめが言いそうな口調で飲み物を注文していた。注文が終わり飲み物を受け取ると、男の人が翔太のほうへ持ってきて帰って言った。あやめは、やったぞと言わんばかりに笑顔でこちらに戻ってきた。

「どうだった。私が憑依して操ったのよ。」

「そんな事も出来んのか? 男の人は買えたのか・・・。」

「そこは大丈夫! 憑依しているときは憑依されている人の考えている事は分かるのよ。」

「そーなんだ。ある意味便利だな。それより、次ぎ乗るのはもう少しゆっくりした奴がいいな・・・いいだろ。」

「ゆっくりした奴かー? えーっと、どれにしょうかな・・・。」

「あれ、翔太じゃん。何でここにいるんの?」

「えっ?」

 そこにいたのは、翔太の友人の琢磨だった。あやめと出会った原意の一人でもある。

「琢磨!」と、翔太は驚きを隠せない。

「それに、隣にいる女の人誰だよ。友達・・・まさか・・・。」

「違うって、誤解だ。あやめはそのあのな・・・ていうか、見えてんのかこいつんこと?」

「あやめって、下の名前で呼ぶ仲なのかやっぱり浮気か? お前、あんなに可愛くて仕事も出来る人がいるのに、ひもの分際で・・・。」

「ひも言うな! それより、見えてんのかあやめのこと・・・。」

「見えてるって、お前言い分けはいけないと思うよ。諦めて自首しろ・・・。」

「いいから話を聞け。」

 翔太は、今までの出来事を琢磨に説明した。最初は、冷たい目で見られていたがあやめの説得もあり、何とか分かってもらえた。あやめには、琢磨と話があると言って離れてもら

った。

「なんとなくは分かったけど、本当にいるんだな。じゃー、車の中で見た女はあの子だったんだな。それと、なんで俺にも見えるんだ?」

「それは分からないけど、霊感とかが強いんじゃない。」

「そうか。あと、幽霊ってそんなに沢山いるのか?」

「あーいる。驚くほど沢山いる。あと、このことは愛美には黙っといてくれないか。」

「いいけど、いっても信じちゃくれないと思うぜ。」

「確かに・・・。」

「それより、本当なのか? あの子の子供を見つけるって、見つかりっこないよ。」

 琢磨は心配そうな顔をしていたが、翔太の諦めそうにもない目を見て止めるのを諦めた。

「見つけるさ、それにもしかしたら案外近いところにいたりして・・・。」

「見つけるための手掛かりはなんかあんのか。」

「いや、全然ない。」

「まったく、俺も手伝おうか?」

「いや、いいよ。自分で蒔いた種は自分でなんとかするから。それより、今ちょっとだけでいいから一緒に付き合ってくんないか?」

「あーいいよ!」

 翔太は、琢磨を説得し少しの間だけ一緒に遊ぶ事となった。しかし、周りを見渡してもあやめの姿はない。それどころか、身長がそこまで高くないというか低い翔太には自分より大きい人ばかりであまり見渡せない。二人は、手分けしてあやえめを探す事となった。

「どこいったんだあいつ・・・。あいつが行きそうなところって・・・どこだ。」

 翔太は、来た道を辿りながら一つ一つのアトラクションをみているがなかなか見つからない。その時、翔太の目の前にあったお化け屋敷から悲鳴が聞こえた。そのお化け屋敷はこの遊園地の中で2番目に怖いと言われている。ふと、頭の中にあいつの行いそうな事が過ぎった。次は、怖そうなものがいいな!お化け屋敷とか?などを言うに違いないと。

「まさかな、せめて普通のアトラクションにしてくれ・・・。」

「プルプルプル」

 翔太の、携帯電話が鳴り響く。

「うわぁっ・・・。たくびっくりさせるなよなまったく、あー琢磨からだ。もしもし・・・。」

「出るのおせーよ。見つけたぞ!」

「まじ、でっどこいるの?」

「えーと、お化け屋敷だけど・・・しかもこの遊園地で1番怖いと有名なお化け屋敷だ。どうしよう、あやめとか言う人並んでるよ。」

「まじか・・・。」と、自分の勘の鋭さに後悔した。

「おい、どうすんのか聞いてるだろ。」

「わかった、すぐ行くから待っといて。もし、あいつが入りそうになったら止めてくれ。」

「ほーい。」

 あやめは、わくわくしながらお化け屋敷への入り口へと向っている。翔太は、必死で走っている。人ごみを避けてやっとの事で着くと、あやめは入り口付近で入る一歩手前だ。そして、ほかに客は折らずあやめが最後の一人(?)でいる。

「あっいた。琢磨いそぐぞ!」

「おっおう・・・。」

「あやめーーー。」

「ん?」

 二人は、あやめを止めようと急いで入り口まで走ると、係員さんに止められた。

「お客様、落ち着いてください! 急がなくても大丈夫ですよ。どうぞ奥の方へお進みください。」

「えっいや、でも・・・。どうしよう、入りたくはないけど・・・。」

「頼む、一緒に入ってくれ。俺一人じゃ入れないから。」

「分かった。」

 渋々入る三人は奥へと進んでいった。翔太とあやめは怖く足がなかなか動かない。すると、琢磨は二人の驚く姿に笑いをこらえながら先頭に立って進み始めた。

「あやめさん、幽霊でも怖いんですか?」

「べっべっ別に怖くないわよ。ただ、翔太があまりにも情けなさ過ぎてわざと怖がっているふりをしているだけだから、気にしないで・・・。」

「なに、言ってんだよ。別にこんなの怖くなし、俺はお前が怖がってるふりをしているからそれに乗っかってあげてるだけです。」

「なによ・・・。」

 琢磨は止めに入る。

「まぁまぁ、それくらいにして。早く出ればすむ事じゃん。」

 その時、三人の後ろから何かが襲い掛かってきた。翔太とあやめは何がなんだか分からず琢磨を押しのけた。

「きゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

「うわぁぁぁっぁぁぁぁあっぁ。」

 二人は、琢磨をおいて逃げていった。

「いてて、あいつら人を蹴飛ばしやがって。てか、どこまで行ったんだ。たく、あいつらのことだから無我夢中で走って迷うのが落ちだな・・・。早く見つけないと。」

 走って走ってようやく落ち着く二人。しかし、何も見ずに走ってきたせいでどこにいるのか分からない・・・。しかも、あやめは気絶しており翔太の上に倒れている。

「あれ、ここどこだっけ。てっおも・・・。あっ!」

「んーーー、なにか言った。」

「いっいや別に何にも・・・、それより起きろ。早く出ないといけないのに、道が分からないんだけどどうしたらいいかな?」

「えっ、本当? とっとにかく早く出よう。」

「うん、じゃぁ行こうか・・・。まず、こっちの方かな?」

 あやめは、翔太の腕にしがみ付きながら早く行かないか待っている。翔太はそんな姿をしているあやめを見ていると、胸の奥がざわついた。いままであまり恥ずかしがることのなったあやめも、少し恥ずかしそうにしながら言った。

「なによ、早く行かないと琢磨って言う人待ってるかもよ・・・。」

「うん。」

 二人は、まるで恋人同士のような府陰気がある。翔太達は進んでいるにもかかわらずなぜか黒いカーテンを捲ってもお化けどころか人一人見当たらない。ただ、怖いせいか気まずいせいなのか話がない。さらに不気味な通路を進んでくと、奥の方に扉らしいものの影が見える。恐る恐る近づいていくと、予想道理扉があった。

「おい、あやめこれ出口じゃないかな・・・。やったー、意外とここのお化け屋敷怖くなかったね。最初だけだったし・・・。」

「確かに、まぁいいから早く出よう。」

 翔太は、晴れ晴れした気持ちで扉を開けた。すると、二人の目の前に急に幽霊が現れた。驚いた二人は、二人そろって腰を抜かして倒れた。幽霊は気にせず二人の元へ近づいてくる。

「うぁっ・・・。」と、二人は叫んだ。

すると、被っていたお化け衣装を脱いで話しかけてきた。

「あのー、大丈夫ですかお客様? 」

「えっ、誰ですか? もしかして、係員さんですか。」

「はい。そうですが、もしかして迷いましたか。お怪我はありませんか? でしたら、出口まで案内いたしますのでどうぞこちらへ着いてきてください。」

「はい。あの、お化け屋敷で僕みたいに迷う人っていますか?」

「いや、なかなかいらっしゃいませんね。私が担当してからは初めてです。」

「そうですか・・・。すいません。」

「いえ、これも仕事ですから気にしないでください。」

 そう言うと、どんどん進んでいく。あやめは、翔太に話しかけづに黙って着いていった。しばらく歩くと、係員さんが出口の手前で止まり私はここまでだと言って戻っていった。急いで外へでると、琢磨が心配そうに待っていてくれた。

「やったー、やっと出れた。ごめん琢磨迷っちゃって・・・。」

「本当だよ! 心配したんだからな、ちょっと探したけど見つからなかったから先に行って待っといたんだ。まぁー二人が無事でよかったけど。」

「じゃー、次ぎどこ行こうか?」

 あやめは、完全復活して次に乗る乗り物を探そうとしている。

「お前すごいな・・・。じゃー、次は俺が選ぶ。やっぱ、観覧車は乗っておきたいよな。あれも結構スリルがあって楽しいはずだよ・・・。」

「うーん、なんか微妙・・・。まぁーいいか、仕方ない観覧車でいいや早く行こう!」

「はいはい、行こうか琢磨。ごめんそそっかしくて。」

「いいよ、行こう行こう。」

 三人は、観覧車へと向った。意外にもお客さんは少なく並ばずにすんだ。観覧車に乗ろうとした時、琢磨の携帯が鳴った。出でみると、知り合いからの呼び出しらしく急ぎの用件で、すぐにでも行かないといけない。

「ごめん、翔太。俺帰るわ、ちょっと急ぎの用ができた。じゃ、またな見つかるといいな!」

「あーうん、ごめんな無理につき合わせちゃって・・・。じゃーまた。」

「ありがとうね。琢磨さん。」

「いえいえ、頑張って下さい。じゃ。」

 というと、帰っていった。二人は、琢磨を見送ると観覧車に乗った。やっと落ち着いて話せる状況になったと、ほっとする翔太。あやめは、この手の乗り物はスリルが合ってとても楽しいらしく、窓側から見える景色を見てはしゃいでいた。

「凄いね翔太! 結構つまらないと思ってたけど、高くて面白い・・・。」

「まぁー、俺もこれぐらいはぎりぎり乗れるけど・・・。そーだ、そろそろ本格的に話をしないといけないな。」

「何の?」

「何のって、お前の子供を捜すことだよ!」

 あやめは、目線を上に向けて少しの考えるように見える。

「・・・・・・・・・あっ、そうだね。そろそろ話さないとね。」

「いや、話さないとねって今の間はなんなんだよ。それに、あってなんだよ明らかに忘れてんだろ・・・。とにかく、お前が死ぬまでの記憶を話してくれよ。」

「ごめん。えーと、何て言っていいかその・・・死ぬ前の記憶がほとんどないの。」

「えっ、という事は手掛かりがないってこと?お前なんでそんな大事な事早く話さなかったんだよ。それじゃー見つかりっこないしどこを探していいかわかんないだろ・・・。どうしよう、手掛かりがない以上探しようが・・・ん、どうしたあやめおい起きろあやめおい・・・。」

 ふと、あやめのほうを見るとゆっくりと倒れていった。翔太はなにが起こったかわからず、とにかくあやめを起こそうとするが反応がない。翔太は、ふと時計を見ると約束の時間から3時間たってしまっていた。

「そうだ! もう、三時間もたったのか。あやめが、どこそこいくから時間を忘れてた。どうしよう・・・とにかく遊園地をでないとがんばれよあやめ・・・。」

 翔太の呼びかけがどんどん薄れていく中、あやめの頭の中に死ぬ前の記憶が少しだけ蘇えり始めていた。それは、現在から三十二年前の頃まだあやめが高校を卒業して旦那さんとであった年に遡る。

「ねぇー晃志郎今度の日曜日、遊園地に行きたいな。」

 あやめは、当たり前の事だが三十年後と変わらない姿だった。住んでいたのは、古い民家が立ち並ぶひまわりの書いてある建物一室の304号室で一人の男と一緒に住んでいた。顔は、薄ら薄らしか思い出せない。

「えっ! そんな急に言われても・・・。わかったよじゃー日曜日ね。」

「やったー、楽しみにしてるね!」

 あやめは、悲しい目で男の事を見つけてきた。晃志郎という男は、あやめの目を見て負けたと思い仕方なく遊園地に行く事にした。日曜日、晃志郎はあやめと車に乗り遊園地へと向った。遊園地に着くとかわいい受付の人に、

「お客様、一名様ですか?」

「えっと、一名様です・・・いて。」

「二名様です。すいません。」

「いえ、はいどうぞお楽しみください。」

 二人は、入園すると同時に説教が始まった。

「なに、でれでれしてんのまたったく。今度、あんな事になったら許さないから・・・。」

「ごめんごめん、今度お前の好きなプリン買ってやるから許してよ・・・。」

「うっ、まぁーそれなら許してあげてもいいけど・・・もう、早く行こう。」

「はーい。」

 その時、遊園地で遊ぼうとした時にまた意識が薄れてきて、昔の記憶が暗闇へと消えて行った。そしてその後、暗闇の世界から光が見えてきて微かに翔太の声が聞こえてきた。その光を追うと、一瞬で光に包まれ目を開けると目の前に翔太がいた。

「おいおい、あやめ大丈夫か?」

「翔太、ここはどこ私どうなったの?」

「ここは遊園地の休憩所だよ。お前、観覧車に乗ったとき急に倒れたんだよ。三時間以上外にいたから・・・ごめん俺がしっかりしとけば良かった。」

「そうなんだ。あっそうだ、昔の記憶がちょっとだけど思い出したんだ。」

「ほんとに、もしかしたら倒れたショックで記憶が蘇ったのかも。とにかく早くうちに帰ってから話は聞くから、少しの間安静にしとけ!」

「うん。」

 翔太はあやめを少しの間休ませてから、遊園地を出て家へと帰っていった。

人は、記憶を無くしていても突然に思い出すことがある。それは、幽霊も同じで死ぬ前の記憶が蘇る事があるのだろう。







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