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それでは、闘います!

リュー君の後ろでうねうねと巨体をゆらめかせているサンドワーム。そんな極キモの姿を見て、リル様は腰が抜けてしまったみたいだ。無理もない、リル様は頭脳労働専門の人だもの。


リル様とロードを後ろに庇って、私はロッドを高く掲げる。


普通なら戦力として充分活躍出来るロードだって、サンドワームほどのモンスターとなるとさすがに分が悪いから。



「下がってて!」



切羽詰まったせいで語気荒く言ってしまったけれど、ロードは後ろに下がるどころか私の横に並び立った。



「失礼な、これでも貴女を守るために鍛練は欠かしておりません。あんなヘタレと同列に扱わないでください、私はちゃんと闘いますよ?」



黒いオーラを纏ったままにっこりと微笑んだロードは、颯爽と鞭をしならせた。鞭なのに何故か太陽の光を反射して、ギラギラと輝く。


うわ、新調したんだ。細く鋭い刃が沢山ついた凶悪そうな鞭になってる。


「そうだなー、ロードは闘え。勉強になるぞー」


「言われずとも」


「あ、ユーリ、そこの腰ぬけは結界張ってあるからなー、気にしなくていいぞ」


リュー君……!

まさかそんな厚待遇、予想してなかった!


リュー君の結界は強力だ。結界の中にいる限りリル様の身は安全だろう。その気遣いに免じてリル様を腰ぬけ呼ばわりした事は勘弁してやってもいい!



「ありがとうリュー君!これで安心して闘える!」


「ユーリの頑張りを見せるためだからなーしょうがねぇ。そこの腰ぬけがうっかり死ぬとユーリが泣くしなー」


「お優しい事で」



リュー君とロードは軽口を叩きながらサンドワームに向かって跳躍する。サンドワームはその巨体ゆえにチマチマとダメージを与えても時間がかかるだけで効果的じゃない。頭部にダメージを与える事が重要なのだ。



「リュー、浮遊の魔法をお願いできますか?」


「しょーがねーなー、貸しひとつだぞー」



まるで蛇がかま首をもたげるように、上体を高く上げているサンドワームにロードはが有効なダメージを与えるには、確かにそれが一番手っ取り早いかも知れない。


ロードやリュー君がサンドワームに近づき過ぎると、魔法での攻撃に巻き込む可能性がある。今の内に一発特大の魔法で大きなダメージを与えておいた方が良いかも知れない。



「フロスト・エクスプロージョン‼」



サンドワームの弱点、氷系の魔法の中で私が放てる最上級の爆発魔法を唱える。


サンドワームの頭部の周りに円を描くように現れた巨大な氷柱が、一斉に頭部めがけて降り注ぐ。獲物に深く突き刺さった氷柱は、閃光を放った後轟音と共に大爆発を起こした。サンドワームの頭部は肉片が吹き飛ばされ、まるで首が出来たように見える。爆発によって細かくなった氷の破片が、巨大な全身に突き刺さり、ガラスのようにキラキラと太陽の光を反射していた。



ヤツは、痛みに激しく身をよじる。



大きなダメージは与えたが、強力な酸を含む体液や唾液がその度に降り注ぎ、避けるだけで精一杯だ。それでも避け切れなかった小さな飛沫に、肌や布からジュッと嫌な音が聞こえる。ロード達もあまりにのたうつ体に、とどめをさすタイミングがはかれないみたいだ。



ふ、と体に悪寒が走った。



自分の体に甚大なダメージを負わせた魔法を放った私に、ヤツは照準を合わせたらしい。上空からサンドワームらしからぬ速度で乱ぐいの歯が私めがけて襲ってくる。



「今よ!」


「お任せを!」



不規則にのたうつ体より、直線的に進む体の方が狙いやすいのは当然だ。爆発でくびれた傷あとに、ロードの鞭とリュー君のエアスラッシュが追い討ちをかける。



なんせサンドワームは巨大でしぶとい。リュー君が囮になって空中をヒラヒラと飛んではヤツの動きを誘導し、ロードの鞭がその隙をついて何度も何度も傷口を穿つ。



ようやくサンドワームが動かなくなった時には、私はまだしも肉薄して闘っていたロードの肌と服は可哀相なほどボロボロになっていた。



「ああ……購入したばかりの鞭が」



鞭まで酸にやられてしまったのか、可哀相に。

ロードに回復魔法をかけていたら、背後からのんきな声が聞こえてきた。



「あー、やっぱドロップはなしかー」



ドロップって……ああ、サンドワームの涙かしら。ごく稀にサンドワームがドロップする涙型の結晶で……去年、私がリル様にプレゼントした物だ。本当に稀にしかドロップしないため、それはもう沢山のサンドワームと闘った。懐かしくも痛々しい思い出だったりする。



「分かったかー?ユーリはこんなヤツを何十っ匹も倒してお前にサンドワームの涙を貢いだんだからなー」



俯いてコクコクと首肯くリル様。さすがに衝撃だったのか、その肩は震えていた。



「あの、リル様……大丈夫ですか?」


「だっ……大丈夫じゃないのは君だろう!」



噛みつくような勢いで顔を上げたリル様の顔は、涙で濡れている。うそ、リル様の泣き顔なんて初めて見た!



「さ、酸の雨がドバドバ降ってきて、地面からもユリアンナからも煙が上がって……ゆ、ユリアンナが、死んでしまうのかと思った……!」



感極まったリル様にギュッと抱き締められ、嗚咽を上げて泣かれたら、驚きと嬉しさのあまりまた意識が飛びそうになってしまった。



神様!私、もう死んでもいいです!

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