第十六節「日常」
(エピローグ)
休み明け、学園の登校風景は休暇前と何ら変わらない。その人並みに紛れ教室に向かう燐は不思議な心地でいた。ただの勉強会でおこった命がけの大事件。そこでできた新たな友人たちと得難い経験。今、目の前の景色とかぶせるとあちらが夢だった気さえするが。あの興奮と痛みはこころと体がしっかりと覚えている。休み明けみんなどうしているだろうか。今日からまた学生生活で頭がいっぱいの日々、わずかな気だるさが休暇を思い出させる中それでも足は進む。すると久方ぶりに聞く懐かしい声が耳に届く。
「リン、おはよ。休みどうだった?研修の話聞かせてよ!!」
その声に振り返る。
「よお、ベッキー。久しぶり」
「ひさしぶり!!リン!!」
連れ添って歩く二人。
「けど、リン、変だよ。なんだろうめちゃめちゃひさしぶりって顔してるよ」
「そうか?よくわかったな」
「う~ん、なんとなく??ねえリン、何かあった?」
「そんな顔してるか?」
「うん、してる。なんか前より・・・うん、そうだね。オトコって顔してるよ。イカしててかっこいいよ!!」
「勘弁してよ。慣れてないんだからそういうの」
「うんうん、これは・・・」
「なんだよ?」
「リンにモテ期到来の予感・・・メイビー?」
「疑問符つけんなっ!!」
「よしリン教室まで競争だよ!先行くね」
「勝手なことばっか言ってんなって。おおい待てって、ベッキー!!」
そして昨日までと同じ、昨日とは違う今日が始まる。
天井知らずの明日に向かって。
(終)