少女との出会いと過去
一応、連載の恋愛小説にしようと思いますので、
まずは1話目をご覧ください。次の章がいつ更新できるか
分からないですが、よろしくお願いします。
登場人物
藤野 京介
桜木 未来
君という名の景色
「...はあはあ」 川原で、声がする。
「俺たちに喧嘩を売るから痛い目に遭うんだからな!!覚えとけ!!」
多数の人たちが1人の男子を蹴って去っていった。
俺は、喧嘩が日常茶飯事の藤野京介。
喧嘩が強いと有名な俺だが、他校生の人数が多く負けた。
身体が思うように動けない俺は「くそ!!」
と、そこら辺にあった石を川に投げた。
時間が経つにつれて空が赤くなり始める。
「...すみません」
俺は声をかけられ、振り返った。
「あ??」
そこにいたのは、1人の少女。
「大丈夫ですか?」
「俺にかまわないほうがいいぜ」
「わかってます。けれど、怪我をしているので・・・」
そう言って彼女はハンカチを川で濡らし、俺の顔にあてた。
「痛!!」
「動かないでください。血をふき取ります」
「...あんた、名前は?」
「...桜木未来です」
「そうか、ありがとな」
「いいえ」
2人はしばらく、黙っていた。川の音が聞こえてくる。
川には空が映されて、赤く見えた。
「...これで、大丈夫ですよ」
未来は言う。
「あんた、偶然ここを通ったっていうのは...」
「私は毎日ここに来て絵を書いてるんです」
「...答えになってないぜ」
「偶然じゃないってことですよ」
未来は、クスリと笑い言った。
「...?」
「あなたが喧嘩をしているところを何回も見てます。偶然じゃないです」
彼女は立ち上がり満面の笑みで振り返る。
俺はそんな彼女を見て笑った。
「絵を描いてるって言ったな」
「ええ」
「見せてくれねぇか?」
彼女は「笑わないでください」と言ってキャンパスを差し出した。
俺はキャンパスを受け取ると丁寧にかかっている布を剥がす。
そのキャンパスに描かれているのはこの川原と橋そして綺麗な夕日。
「すげ...綺麗だな」
「ありがとうございます。私ここが大好きなんですよ」
「すまねぇな、あんたの気にってるところで喧嘩」
「それは...確かに嫌でした」
「そうだよな...っとそろそろ帰んねーと日が暮れる」
俺は立って言う。
「そうですね。それでは」
「ああ、キャンパス」
返そうとキャンパスに手をかけると
「いいえ、それはあなたが貰ってください」
未来は笑顔で手を止めさせた。そこで俺は首を傾げる
「いいのか?」
「はい...いいんです」
そう言って俺に手を振り彼女は帰っていった。
家につくと親が「また...」と呆れ顔で俺を見る。
「うっせーな!!」
これが俺のうちの日常。帰ってきては親にため息をつかれる。
「...あら?このキャンパスは」
「さっ触るなよ!!」
親が触ろうとしたキャンパスを取った。
「それ、どうしたの?奪ってきたもの??」
「違げえよ。貰ったんだよ!!」
俺はキャンパスを持ち部屋にこもる。
「はあ~」
俺みたいな奴でも誰かに心配されてんだなと桜木未来を見て思った。
俺から見える景色は不良ばかりで、なんの面白みがない危険な世界。
だけど....
「あいつから見える景色はきっと綺麗なんだろうな」
ふと、声に出たこの言葉は一生あいつに伝わらないものだ。
俺はキャンパスを掲げ絵を隅々まで見る。すごく綺麗な色合いであの川原を
表現していた。
「何回見てもやっぱり綺麗だ」
このキャンパスは柄の悪い部屋には合わない。俺は少し残念に思ったが、
部屋を掃除すれば、飾れる。ということに気づく。
「よし、せっかく貰ったんだ。飾らないとな」
帰ってすぐに掃除を始めた。けれど、散らかっていた部屋はそう簡単に
綺麗にはならない。こつこつ掃除すればよかったとなぜか後悔する俺の姿がそこにはあった。
「ふ~終わったと」
俺は一番光に当たる場所に未来から貰ったキャンパスを置く。
掃除して綺麗になった俺の部屋。
こんな綺麗な絵を飾ることなんて1度も無かったからいろいろと迷った。
「ってやば!!もう朝じゃねえかよー」
気づくともう朝だった。掃除に時間をかけすぎたのだ。
「京介ー起きなさーい!!」
「起きてる!!」
今、最も言われたくないことを言われ怒った。
「分かってるつーの!!」
しかし、絵を見て笑った俺は「まーいいか」と、どうでもよくなった。
階段を下りると親が心配そうな顔で見る。
「...んだよ」
「いや、昨日うるさかったから。なにかしたのかと思って」
「部屋の掃除」
短くそう言うと俺はそそくさと家を出た。そして川原に向かおうとしたとき、俺は思いだした。
昨日、”あんたの気にってる場所で喧嘩”と、言ったときあいつは
”それは確かに嫌でした”と悲しい顔を...
俺は、正直未来の邪魔をしたくない。 だから”あの川原で喧嘩をするのはもうやめよう”と思った。
しかし、
「いやです。やめてください」
川原の上を通ると聞き覚えのある声が聞こえた。
土手で未来が昨日やりあった連中に絡まれていた。
「あんた、可愛いねどこの子??」
「こんなところでなにやってんの、俺らと遊ぼうぜ」
そいつらは未来の手を強引に引っ張る。
(くそっ!!)
俺はこの川原で喧嘩はやめようと決めた。けれど、気づくと勝手に体が動いていた。
「その手を離せ!!」
未来の前に出た俺は肩から手を剥がした。
「痛!!!」
そいつの手をねじり背に持っていく。
「昨日は負けたが今日はどうかな?」
耳もとで小さく呟くとそいつは「ひい!!離してくれ!!ここには来ないから」
と言った。
「ふん...約束だぞ。大勢きても全員相手にしてやるからな」
手を離すと2人は逃げて行く。
「ありがとうございます」
後ろから未来の声が聞こえハッとした俺は向き直った。
「いや...良かった無事で。だけど、すまん!!」
「え...?」
「その...あんたの気にってるところで喧嘩を」
未来はそれを聞くと優しく微笑んだ。
「大丈夫です。助かりましたし」
「...そっか」
「それより、時間は」
「いや...大丈夫だろ。あんたは?」
「あと10分なら」
ここで少し疑問に思った、”俺が喧嘩してるところを何度も見た”と言っていたが
それは、偶然なのか?始まりはいつなんだと。
「...学校はどこなんだ?」
「え...やっぱり知らなかったんですね」
”知らなかったんですね”...まさか。
「同じ...高校か?」
「そうですよ...」
一瞬頭が真っ白になった俺。未来に指でつっつかれ我にかえったとき
大声をあげていた。
「ま...まじでか?」
「はい、まじです」
「なんで気づかなかったんだ...?」
頭を抱えた俺を見て笑う未来は無邪気な子供みたいだった。
「あなた、学校あまり来ないじゃないですか」
「...そうだったな。生徒全員に怖がられるからあまり行ってなかった」
「だから、初めて喧嘩をしているあなたを見てびっくりしましたよ」
「びっくりするわな...普通は」
俺は苦笑する。(同じ高校だとは思わなかった)と内心思いながら。
「だから、偶然じゃないって言ったんだな」
「そうです」
彼女は笑う。そして
「学校いきましょう」と言った。
「は?行けるわけないだろ。不良なんだからな...今まで喧嘩しかしてねえし」
それを言うと彼女はまた、笑った。
「でも、勉強はできるのでしょう?」
「...」
「図星、ですか?」
俺は、黙った。不良になる前は優等生だった記憶がある。
だが、不良になってから学校の校則なんか無視して喧嘩ばっかりしていたから全てが変わった。
「...なんで、不良になったんですか?」
「...」
「なんか、理由があるのでしょう」
彼女は俺の目を見て聞く。俺は不良になってから1度もその理由を誰かに言ったことが無かった。
親にも「なんで、いきなり不良なんかに」と驚かれたけれど、理由は言わなかった。
だって...
「深刻なことの...ようですね。話してくれませんか?」
「...お願いだ。それ以上俺の心の中を荒らさないでくれ」
俺はあとず去る。そして
「あっ...待って!!」
逃げた。彼女に背を向けて。(すまない!!これ以上心の中を見ないでくれ)
俺はしばらく走って止まった。
「はあはあ...」
胸が...痛い。思いだしたくなかった。あの記憶を。
あの悲しい記憶を...。
息を整え公園に行き、ベンチに座った。
”話してくれませんか?”彼女の声が耳に残っている。
(話せない...話したくない)
頭を抱えた俺に声がかかった。
「はあはあ...」
聞こえたのは彼女の声。
「なんで、来たんだ...あんた。もう俺に構うな」
「遅刻ですよ」
「俺のせいにすんなよ。勝手に来たんだろ」
未来は笑った。風が吹き、彼女の髪をなびかせる。
「よく、笑うな」俺はぼそりと言う。
「そうですか...?」
「...なんで、そんな気になるんだ?」
彼女は少し黙った。俺が顔を覗くとため息をつく。
(人の顔見て、ため息つきやがった!!)
「あ...ごめんなさい」
「顔、笑ってんぞ」
「...そう?」
未来は隣に座った。
「今まで、理由を聞くやつなんかいなかったし、正直あんたにはまいったよ」
「まいったなら、話してくれますか?」
「これ以上追求されんのも、面倒だしな」
俺はため息をつきうつむいた。自分で傷を抉るようなもんだが、彼女に不良になった理由を
話すことにした。
「話すけど、もうなんも聞くなよ」
「...わかった」
彼女は力強く頷く。
不良になった理由を簡単に言うと親父が死んだからだ。親父は公園で不良に絡まれ暴力を受けた。
打ち所が悪かったらしく、病院に運ばれ...3日後息をふき取った。
絡んだやつは、酒を飲んで覚えてないと証言し、酔っていたということもあり罰は軽く、
罰金だけですんだ。
それが、許せなかった。人1人の命を奪っておいてのうのうと生きる。
「そんなやつを探すため、外見をかえて不良から情報を集めた」
「なんで、外見まで?」
「親父を殺したやつに俺は知られている。それに情報を集めるには優等生のまんまじゃ集まんない」
「それじゃ...」
未来は悲しい顔をした。
「そう、俺の人生をかえたのは親父の死と親父を殺したやつへの復讐」
1話目が、終わりました。
次の章を更新するまで時間がかかると思うので
次もよろしくお願いします。