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優夜と花  作者: 瑞代 杏
12/18

11.高い所から景色を見よう



「んー、今日もいい天気だなあー」

「ですねー。ぜっこうのさんぽびより、ですね」

 今日は土曜日、俺は花と街中を歩いていた。

 特に用事があるわけでもないただの散歩だが、これがまた楽しい、いい運動にもなるしな。

「そうだなー。花はどこ行きたい?」

「んー? 花は高いところからけしきを見てみたいです」

 ぽん、と手を叩く花。

「高い所、ね……」

 この辺で高い所だと……あそこしかないな。

「じゃ、あそこ行くか? ここから見える三角の建物」

 俺は、正面に見える灰色に塗られた三角の建物を指差す。

「はい、優夜がいくならいきます」

 いや、花さん? アナタが行きたい場所を聞いているんですが?

 まぁ、いいか……「こまけぇことはいいんだよ!」ってぇことで……。

「行くか?」

「はい」

 暫く、花と他愛もない話をしながら歩いていると、目的に近づくにつれて独特の匂いが漂ってきた。

 海の――潮の匂いだ。

「んー……海のにおいがします」

「ああ、すぐ後ろに海があるからな。釣りも出来るぞ? 今度やってみるか?」

「んー? 釣りって……サムネやタイトルでしちょう者を釣――」

「その釣りじゃねぇ! 真っ当な魚釣りだよ!!」

 サムネやタイトルを餌にして魚が釣れるかっ!!

 ……視聴者という名前の魚なら釣れるかもしれんがな。

「んー、魚釣りでしたか。花は生ぐさいのあまり好きじゃないので遠りょしておきます」

「そうか」

 そうこう言ってるうちに入口に着いた。

「わ、高いですねー」

「ここの7階だったかに展望室があるんだ。早く行こうぜ」

「はーい」

「花はエレベーター乗ったことあるか?」

「えれべーたー、ですか? ないかもしれません……」

 エレベーター乗ったことないのか……。

 しかし、7階の展望室には階段ではいけないからな……6階まで階段使ってそこからエレベーターでもいいが、無駄に疲れるのも嫌だ。

 仕方ないな……。

「そか。慣れないと酔うかもしれねぇからな、気持ち悪くなったらすぐに言えよ?」

「はい……優夜」

 花の手を引いてエレベーターに乗る。

 重力が掛かるのと浮遊感で気分が悪くなる人も多いと聞くが、花にそんな様子はなく――エレベーターから見える景色に見入っていた。

 そして、あっという間に7階に着いた。

「ほれ、着いたぞ」

「わぁ……っ」

 花はエレベーターから降りた途端に、ドーム状の展望室から見える景色に目を輝かせて駆け出した。

 ここだけ見ると、年相応の子供だな。

「優夜優夜っ、海が広いですっ」

「ああ、広いな」

「あっ、あそこに船が見えますっ」

「あれは、北海道行きのフェリーだな」

「そうなんですかー。あっ、こっちから見るとまちがあんなに小さく見えますっ」

「ははは、そうだな」

「んー? 優夜は何をわらっているんですか?」

 花が首を傾げながら俺を見上げる。

「いや……花は高い所が好きなのか?」

「ちがいます。花は高いところが好きなのではなく、高いところから見るけしきが好きなんです」

「そうなのか。じゃ、こうしたらもっと高くなるな」

 俺は、こっそりと花の背後に回って体を持ち上げてやった。

「え? ひゃっ……お、おろしてください!」

「ほーら、高い高ーい」

 赤ん坊をあやすように俺。

「花はもうそんな年じゃありません! おろしてくださいっ!」

「はははっ」

 マジで怒っているようなので降ろしてやった。

「むーっ、優夜のばかばか!」

 花がむくれ顔を赤くしながら、俺の背中をぽかぽかと叩いてくる。

 当然痛くなんかなくて、むしろ心地いい強さだ。

「悪ぃ悪ぃ。花が可愛かったからつい、な」

 笑いながら花の頭を撫でてやる。

「むーっ!」

 暫くの間、花は機嫌悪そうにしていたが、近くにあった双眼鏡を覗かせてやると、また目を輝かせてはしゃぎ始めた。

 こういうとこは単純で可愛いんだがな――


 ――夕方の帰り道。

「今日は楽しかったか?」

「はい、楽しかったです」

 うちのお姫様は大変満足されたようだ。

「そりゃ良かった。今日の晩メシは何かリクエストあるか?」

「んー……花はハンバーグが食べたいです」

 ハンバーグ、ね……最近あんま肉食べてないからちょうどいいな。

「よし、ハンバーグだな。材料買って帰るべぇ」

「はい、優夜の手料理はどれもおいしいので楽しみです」

「ありがとよ。それじゃ、とびっきり美味しいの作ってやるからな!」


 夕焼けの中を花と喋りながらゆっくりと歩く。

 沈みかけている陽に見送られながら、俺と花は近くのスーパーに向かったのだった。

「優夜、世の中には『のーろーぷばんじー』って遊びがあるらしいですよ?」

「それ絶対遊びじゃねぇから!!」

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