死んだら転生した件(笑)
俺は死んだ。
老衰なのか、事故なのか、はたまた殺されたのか今となっちゃ覚えていない。というかどうでもいい。
ずっとこの暗闇を歩き続けている。
今さっきから歩き始めた気もするけど、何年も前から歩き続けているような気もする。
でも不思議と疲れない。どんなに足を前に踏み出しても、どんなに踏み締めても、その後にはもう何も残らず、また次の足を踏み出す。これだけが自分の死を感じられる唯一の手段
自ずと下(?)を向いてしまう。このままずっと歩くのだろうか?死んだ後ってこんなもんなのか?楽しい事、もしくは辛いことが待ってるって思ってたけどここまでの事は想像していなかった。
無になる。でも存在している。でも死んでいる。
こんなことを考えていても頭はずっとクールで新鮮なのがまた気持ち悪い……ような気がする。
その時頭頂部に何かが当たる感覚が伝わってきた。
顔の向きを元に戻すと、そこには一人の老人が立っていた。
眉は白く、目に覆い被さるように垂れ下がり、細っそりと長い髭を蓄えている。白いローブを見に纏い、頭には黄金の輪っかがついている。
老人の姿に見入っている何かを話しかけられた。
自然と「はい?!」と声が出た。
老人「ワシは神じゃ。願いを三つ叶えてやろう」
呆気に取られるとはまさしくこのことだ。
願い?神?
いやそんな事はどうでもいい。
思考が巡りに巡り、口から言葉が押し出すように出てきた。
「俺!……俺を…異世界転生させてください。」
一瞬声が詰まった。あの暗闇の中考えることがなかった分学生の頃ように色々と妄想していたのだから。
神「…………」
「あっ!それとチート能力みたいなのください!最強の!例えば!!自分は魔王の末裔で!でも知らなくて!ある日ヤンキーに絡まれた時に覚醒するんですよ!!えっと……最強の力が!!それで……」
その瞬間、目の前から老人が上にスライドするように消えていった。そしてまた暗く、今度は狭い空間に閉じ込められた。
神「ふ〜〜。最近多いのーああいう類。」
すると奥の方からさっきの男がまた同じ体制で歩いてきた。何が不甲斐ない気持ちがあるのか眉間に若干の皺を寄せて口を尖らせている。
神「どうじゃった?楽しかったか?」
「いやその……凄くつまらなかった件」
男は首に手を当て首を傾げた。
神「ほう?なぜじゃ?お前さんがワシに唾を飛ばし散らかしながら熱弁した通りにしたぞ?」
「なんか……何もない感じ?苦戦はしなかった分、生き甲斐がなかった件。欲が全て人生の前半で満ちた感じ。二十代前半で世界最強になったせいでその後、子供作るとか、しかなかった件。なんでだろう?」
神「ワシに聞かれても困る。じゃが子育てに幸せを感じられるのではないか?」
「いやそれがさ、あんまりなのよ!今まで色んな敵を倒す事に爽快感とか幸せを感じてた分、子育て自体に何か特別な感情がでるとかはなかった件」
神(件件件件うるせえなコイツ。キジかよ)
その時男は突然手を叩き何かに気が付いたようだ
「あっ!好敵手!そうライバルがいなかった!!そうじゃん!ライバルがいなかったんだ!!神様!ライバルを一杯いる最強の男にしてまた転生させてください……」
男はまたこの空間から沈むように消えていった。
だがその次の瞬間には奥からまた同じ男が歩いてくるのだった。
神「これで満足でしたかヒーロー?」
「あんま大差ない件。結局圧倒的に俺の方が強いから負ける事はなかった件。もう!どうしてこうなるんだ!神様なんだからなんとかしてよ!!」
神「ワシは言ったじゃろ『願いを三つ叶える』と。ワシができるのはそれだけじゃあとは知らん。」
「ぐぬぬうう……」
神「さあもう最後の願いじゃどうする?」
「え?最後?!」
神「そうじゃ、お前は二回ここに訪れて願いを言っとる。これが最後の願いじゃ」
「分かった。……じゃあ、段階的に……」
また男は沈むように消えた。
だがもうその男が奥から歩いてくる事はなかった。
その数秒後奥から違う人間が歩いてきた。
彼はさっきの人間とは違いオドオドとしていて、神とすら目を合わせることを躊躇っているほどだった。
神「お前の願いを三つ叶えよう。」
男は少し考える素振りを見せて答えた。
「一つで………いいです。もう一度だけ…この人生をやり直させてください」
男はオドオドとした素振りを見せながらも眩しいほどの純粋な笑顔を見せて沈むように消えていった。




