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醒める  作者: 沙羅双樹
5/7

分かれ道


男の妻は理性的で、男の両親も誠実だった


昨夜、男から私との今までを聞いた彼らは

男を救った平民の私に感謝し、そして

彼らのできる最大限の譲歩を提示した


私に別邸を与え、男の妾として尊重する


彼らは私にそう提案した



第二夫人ではなく妾なのは、身分のせいではなく

第二夫人としてしまうと、社交を一切免除することができないからだという


表に出ることを望まない性格だと男から聞いた彼らは

私が私のまま男のそばに入れるよう考えた


男も私が私のままでいることを何より望んでいるという


だから、もし、最低限に絞っても

年に一、二度社交を我慢できるなら

第二夫人とすることもできる、と彼らは提案する



私の意見を聞こうと、あらゆる提案をしてくれる男の両親は

隣に座り、私を心配そうに見つめ、私の手を握る男は

そして、その姿を凛としたまま見つめる男の妻は

きっと、ありえないほど善良で、誠実な()()


だけど、いや、だから、私は男の手を放した



私が男と別れ、生まれた国に帰ると言うと

男は傷ついた顔をした


そして、男の両親はホッとした顔をした


そのまま出ていくという私に

面子のため、と頼み込むように金貨を渡したのは男の両親で

国まで送ると馬車を手配をするのは男の妻


それが善意なのかどうかは関係ない



僅かに唇を噛んで、涙を出さずに泣く男の姿を見ると

一昨日までと同じように、ただ、抱きしめたくなる


だって、男は私の唯一で、一部だった


だけど、もうそうできない


それが、男に出会うまでに感じていた風穴よりずっと大きく

私の心を抉りとり、殺す


でも、人形と呼ばれるほど、喜怒哀楽がでない顔のおかげで

男の両親や妻たちには私の感情は見えてない


それが今は嬉しい。


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