表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醒める  作者: 沙羅双樹
4/7

醒める


この世に生まれて17年

今世では一度も体験したことのない柔らかな寝具に包まれて

快適なはずのその場所で目が覚めたのは

すっかり夜が更けた頃


何もかもが高級で、何もかもが上等


でも、作業場を除けば、二間しかない狭くて

そして、古くて、隙間風の入るあの森のそばのボロボロの家が

大きな体の男と身を寄せ合って寝ていた、あの硬く小さなベッドが

恋しくて、涙が零れる


ぼうっと涙を流す私を見つけたのは部屋に入ってきた男


男は慌てた様子で私の元へ駆けつけ、いつものように抱きしめる


でも、もう同じじゃない


頬に当る男の着ている服の柔らかさがそれを私に伝える



「大丈夫だ、ずっと一緒だ」

男がそう繰り返すのは昨日までと一緒


男のその言葉が、男から伝わる暖かさが

いつも私の冷え切った体と心を包んでくれた


でも、もう、そうじゃない



翌朝、男が着ていたような上等な服を渡す侍女たちに断って

昨日まで来ていた服をいつも通り着た


ドアから出ると、男が待っていた


男は私の姿を見ると、

いつものように仕方がないというように笑って

いつものように私に手を差し伸べる


私は一瞬迷って、でも、その手を取った


それが最後だとわかっていたから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ