生い立ち
黒目黒髪
両親どころか、生まれた町から一度も出たことのない一族が
誰一人持っていないその色を持って生まれた瞬間から
私は疎まれることが決まった
そして、魔力がうまく扱えないことで
無価値であることが決まった
蔑まれ、つまはじきにあう私を拾ってくれたのが
森のそばに住む錬金術師
彼女は気難しく、町の皆に恐れられていたけど
同時に彼女の作る魔法薬は貴重で有用のため
誰もが一目置く、そんな人だった
彼女が私を拾ったのは私が4つの時
腹を空かせて道端で蹲る私を猫の子のように拾って
己の後継者として引き取った
彼女の意図も何を思ったのかも分からない
無口な彼女は何も言わなかったから
だけど、彼女は己を祖母と呼べと言った
そして、確かに彼女は私の唯一の家族となってくれた
祖母を失ったとき、世界は色を失って
でも、生きる努力をするという祖母との約束を破れないから
そして、祖母から受け継いだ仕事を放りだせないから
ただ生きていた私
たとえ、祖母が居なくなって一人になった私を
蔑むか、嬲ろうと寄ってくる人しか私の周りにはいなくとも
たとえ、祖母からお墨付きをもらい、
祖母が居た頃は普通に買い取ってくれた薬が
祖母がいた頃の半値どころか、5分の一にしかならない値で
買いたたかれても
それでも、ただその場で息をし、死ぬ日を待っていた
そんな私の前に現れたのが男だった
私にとって男は確かに、唯一だった
でも、男にとって私はそうじゃなくなった
そう、ただそれだけ。