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変わり目
男と暮らし始めて、数年
その日も昨日と変わらない今日が来ると当たり前に思っていた
でも、やっぱり神様は私が嫌いらしい
たった一人の私の味方だった祖母を突然取り上げたように
私の最愛となった、唯一となったその男をまた、奪った
いや、きっと、周りがいうように
分不相応な私を男から引き剝がし、正しい道に返したのだろう
男は隣国の侯爵家の嫡男で、政敵の陰謀であの森で死にかけていたらしい
たまたま、隣国へ行った男の尋ね人を見た冒険者の通報で
男を迎えにきた、男の侍従だというその人は記憶を失った男に色々と説明した
「皆が待っています、帰りましょう」
侍従は男にそう言った
はじめは取り合わない様子だった男だが
次第に迷い始め、また、あの遠くを見る目をし始めた頃
私はあきらめた
帰りなさい、そう言った私に縋り付いて
一緒に来てくれ、と震える体で哀願する男を振り払えなかった
だって、もう、男は私の唯一で、私の一部だった
でも、結局、私は愚かだった
辿り着いた先にいたのは男の家族
父と母、そして、”妻”だった。