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醒める  作者: 沙羅双樹
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はじまり


馬車を降りると、目に入ったのは

ずらりと並んだお仕着せを来た人々の前に立つ壮年の紳士と淑女

そして、その瞳に涙を浮かべながら、一心にこちらを見つめる美しい令嬢


思わず立ちすくんだ私に手を伸ばすその人は

昨日まで確かに私の最愛で唯一だった人


だけど、ガンガンと鳴り響くような頭痛が、そして、何より

私に手を伸ばすのを見た令嬢の絶望したような、酷く傷ついた表情が

私に否を突き付けた


グラリと反転した世界に意識を手放す瞬間、ただ思ったのは

本当に、本当に、ただ、愛していた


それだけだった




それはよくある話

私が男と見つけたのは

いつも私が錬金術の材料となる鉱石採取に訪れる森の奥の秘密の沢


男はそこで血まみれで倒れていた


その森には魔獣がいて、冒険者が多く活動していた


非力な私がこんな奥までスイスイとこの森を歩けるのは

祖母から引き継いだ魔除けのお守りのおかげ


そして、数年に一度あるかないかだが

こうして倒れている人を見つけることもあった


助けれるなら、助ける

無理なら、あきらめる


それだけだったはずなのに



纏わりつく男を振り払えず、繰り返し会ううちに親しくなり

そして、恋仲となった


それは皆がいうように生き残った男が美丈夫だったからでも

冒険者として一気に活躍をするほど優秀だったからでもない


それは生死に関わる体験をしたせいで記憶を失い

たまに、途方にくれるような目で遠くを見つめるその姿が

一年前、祖母を失ったときの自分と重なったから


体の中心に風穴が空いたような、まるで拠り所全てを失ってしまったような

そんな埋めようのない孤独を重ねてしまったからだ


私と男は互いに重なることでその隙間を多分必死に隠していた


それがいつしか本当に合わさって、二人で一つとなった


そう、少なくとも私は思っていた

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