冬の朝の妄想
朝4時前。
あたりはもちろんまだ真っ暗。厚いカーテンのすきまからは、陽はもちろん、街灯の明かりも漏れてきやしない。
コンテストに一つ応募したの、今日が締切だったなぁ、と思いながら、まだ時間あるじゃん、もう一つ書けるじゃん、なんて考える。
でも、まだ起き上がらない。
クイーンサイズのベッドに寝てるわたしたちふたりはどちらも痩せっぽちだから、身体がぶつかって窮屈ってこともないけれど、それでもわたしが起き上がったらあいかたを起こしてしまいそう。
だから、横になったまま、妄想を膨らませる。身体を動かしていない分、頭の中の物語制作回路だけが全速力でブンブン回る。話があっちいってこっちいって、なかなか見えなかった着地点がだんだん見えてくる。
もう寝ていられない。
あいかたを起こさないように気をつけながら、はやる心を抑えて、そっとベッドを抜け出す。音を立てないように隣の居間との間の扉を開き、こっそりテーブルについて常夜灯だけつける。こういうときのために、寒くないように居間に常備している毛布をかぶる。
あとは一気呵成に書く、書く、書く、書く、書く。
締め切りギリギリに書き終える。投稿ボタンを押す。コンテスト応募ボタンを押す。
同じ時間で、丁寧にコンテスト用に書いて応募してあったやつの最終推敲をしたほうが良かったのかなぁ、なんて思っても、もう時間切れ。
満足して、また、こっそりベッドにもどる。
「もう、書き終わったの?」
なんだ、お見通しだったの。
「うん、起こしちゃった? ごめん、もう寝るね」
夜明けまでにはまだ少し時間がある。