2 子どもたちを飢えさせない
卵が最も消費されるのは12月といいます。
理由はクリスマスケーキと忘年会の鍋物。
需要と供給の市場原理によれば、卵の価格は変動するはずですが、
我々は季節によって卵の価格の変動を実感することはありません。
それは卵価を安定させる様々な仕組みが存在するからです。
その仕組みの一つ、正式名称「鶏卵価格安定事業」は、鶏卵の生産者と国の資金拠出により支えられています。
卵は子供の成育に必要なものであるから、貧富の差に関係なく誰でも食べられるように。
同じ理由で、牛乳、砂糖も、価格安定の仕組みを有しています。
昨日今日できた仕組みではない、先人たちが時間をかけて築き上げてきた遺産です。
その遺産、いわゆる日本の法令、予算等は、大きく2つの考え方を端緒としています。
それは先の戦争の反省から、
「子供たちを飢えさせない、戦争や災害の惨禍に巻き込ませない」のふたつです。
しかし、近年、理解に苦しむ法令、予算等が発表されることが多くなってきていように思います。
国内企業に武器づくりを奨励し、他国と武器の開発を進め、その成果を輸出し利得を得る。
いつの間にか防衛庁は省に格上げになり、空母ではないと言って空母を造り、増税により防衛費を拡充する。
法律を少しでも学んだものはあり得ないと考えていた集団的自衛権も、それを前提とした議論が、当たり前のようになってしまっています。
国は個人の投資を奨励し、日本銀行のETF買付は時価70兆円を超えています。
日銀が自分でお札を印刷して株を買っているのだから株価は意味もなくあがるし、円の価値がひたすら下がるのは当然。
いつからこんな国になってしまったのだろうと暗澹たる気持ちになります。
我々大人は、子供たちの未来を考え、先人たちの築いてきた遺産の意味をもう一度考える時期に来ていると思います。
二度と子供たちを飢えさせない、二度と戦争や災害の惨禍に子供たちを巻き込んではならないと。
我々が本当に優先すべきは老後に備えて2000万円を蓄えることではなく、後の世の人のために恥ずかしくない行動をとるということではないでしょうか。
本文章は、「さかいね9条の会」2024年6月号に寄稿したものを加筆修正したものです