4.1
『おーい、おーい、藍那、ぶつかるぞ』
はっとして前をみると電柱があった。危ない、ベタな展開になるところだった。
夜からバイトだけど早く起きてしまい、コンビニにご飯を下位に行く最中だった。
「ありがとう、死神さん」
『何ぼーっとしてんだ』
「んーなんでだろ?」
祥平さんのステージが終わった後、しばらくそこに立ち尽くしていた。
そのうち家に帰ったんだけど、そうやって帰ったか覚えていない。その日からあの歌が耳から離れなくてそのたびにぼーっとしてしまうのだ。
「惚れたか?」
仕事中にマスターに聞かれる始末。
「あの人はやめとけよ。傷つくだけだ」
「傷つく?」
「モテるし、男から見てもマジでかっこいいと思う。ただ、どんな美女が告白しても祥平さんは誰とも付き合わないんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ、女関係は一切ない。なんなら身体の関係だけってやつもいない。俺も仲良かったから祥平さんのことを狙っているいろんな女から相談受けてて、一度祥平さんに聞いただが、“俺は誰とも付き合わないし、誰ともやらねー”の一点張りで」
「・・そうなんですか」
「藍那に報われない恋愛してほしくないから。祥平さんは諦めな」
「わかりました」
「今度華達と合コンするんだろ?いい人見つかるよ」
「・・そうですね」
とは言ったものの、正直私の中で祥平さんの存在が大きくなっている。
それが恋愛感情なのかは分からない、ただ、心臓が、感情が動く。
自分が流した涙の理由がわかないままでいた。
「怒りが強すぎると泣けてくる、みたいな感じに似てるんだよね」
『どういうことだ。感情が高ぶると泣くのか?』
「そうなのかもしれない」
『よくわからないな』
「もっと知りたいな、祥平さんのこと」
『知らないほうがいいことも世の中あるぜ』
「死神さんは祥平さんのこと詳しいの?」
『そりゃあ契約しているからな~』
「なんかずるいな」
『なんでだよ』
「あたしこんなに近くに住んでるし、近くにいる死神さんのことも見えるのに、マスターより、イベントに来ていた人たちより祥平さんのことを知らない。それがなんかモヤモヤする」
『本人に聞けばいいだろ』
「祥平さんいつ出勤時には会うけどそれ以外で会わないんだもん!どこで何しているのか、全然わかんないし」
『そこにいるぞ』
「・・え?」
「どうした?藍那」
いつからいたのか後ろに祥平さんがいた。
「・・なんでそこにいるんですか」
「藍那が呼んだ気がしたから」
「うそつき」
「笑。なんで怒ってんだよ」
「あたし祥平さんのこと何も知らない」
「そんなことないよ」
「そんなことあります!だからみんなが知ってることくらいは教えてください!」
なんでムキになってるんだろ、私。
少し怒り口調で言った私に祥平さんは笑いながら「わかったよ笑」と私の手を引いて自分の家に招いた。




