1.2
一年前、私は病院で目が覚めた。
「目覚めたら知らない天井ってこんな感じなんだ」
目が覚めて思わずこうつぶやいた私はやっぱり楽観的な性格なんだな。
「藍那」
低すぎず、高すぎず、心地よい毛のトーンで呼ぶ声に目線を向けると、知らない顔がそこにあった。
これが彼との初めての出会いだった。
祥平さんは家の前で倒れていた私を保護してくれたらしい。
目が覚めてからお医者さんにいろんな検査や質問をされた。特に異常はないけど、なぜそこに倒れていたか、とかそれ以前の記憶が曖昧で、全然思い出せなかった。
幸い生活する分には特に問題がないので早々に退院が決まった。
入院中気になっていたのは、家族が来なかったこと。
友達は少ない私だったけど、家族とは仲が良かった。入院中に顔を出さないのも、あたしから連絡がないのも絶対に気にするはずなんだけど。
久しぶりに充電された私のスマホに家族の連絡先はなかった。
記憶のない間に家族となにかあったのだろうか。
退院の日取りが決まったものの、これからどうすればいいのか、働いてた職場はどうなっているのだろうか、などとまだボーっとする思考の中で考えていると、祥平さんが病室にやってきた。
「敷地内に僕が所有するアパートがあるから、行くとこがないならしばらくそこで暮らしていいよ」
私を助けてくれた人はその後も私を助けてくれるらしい。
強面な顔に警戒しながらもその声色と優しい目と自分の勘を信じて甘えることにした。
“もしどっかの外国に売り飛ばされたらその時はその時だ!”
病院の費用は全て祥平さんが払ってくれていた。
その日から一年ずっとこのアパートに住んでいる。
前に働いていた職場は連絡したら、私は三年前に依頼退職しているらしい。
「一体、あたしはどこで過ごしてたんだ」
とりあえず働かなきゃ生活もできない。
祥平さんの行為に甘えアパート通える距離で新しい仕事を始めた。
寝たきりだったおかげで以前より痩せたことと元々そこまで悪くない見た目のおかげでbarで即採用。お酒は得意ってわけではないけど、マスターと働いているバイトの子たちがすごくいい人で、楽しく働いている。
中でも音楽に力を入れているので、常に素敵な音楽が流れていたり、週に一回店内の一角にある小さなステージでいろんな人たちが歌いにくる。
音楽が好きな私としては最高の職場だった。
「今日は何時までですか?」
いつも挨拶で終わる祥平さんが珍しく声をかけてきた。
「今日は0:00です」
「そっか、気を付けて。今週のイベント僕が歌いにいくことになっているんだ」
「え!そうなんですか?!祥平さんって歌うんですね!」
「その日はバイト?」
「あ~今週その日休みなんですよ。でも聞きに行きますので!」
「そっか、よかった。休みなのに悪いけど聞けたらぜひ聞いてほしい」
「もちろんです!」
今週末特に予定もなかったんだよね~!楽しみだな。
「仕事がんばってね」
「はい!」
『頑張れよ~』
「はいはーい」
祥平さんとその後ろにいる死神さんとの会話を経て私は職場に向かった。




