6.2
「こないだ全然話せなかったんで、マジで嬉しいです!何呑みます!?」
マスターが見たことないテンションで若干引く。
「・・・女みたい」
「うるせー!俺は祥平さんに惚れてるんだ!」
マスターの前に座る祥平さんの周りに次々と人が群がる。
イベントと相まってせっかく近くにいるのに忙しくて全然話せない。
こういうときにマスターの権限っていいよな、ってつくづく思う。
ドリンクを作っている合間に聞こえてくる心地よい声に耳を傾ける。
どうやら、周りに来た人の近況の話を聞いているらしい。
そこに一際目立つスレンダーな美女がやってきた。
「祥平」
彼を親しく呼ぶその人に見覚えがあった。
「あ・・」
そうだ、祥平さんが出てたイベントの四番目のソロ歌手の人だ。
「お~ゆっき~じゃん!こないだありがとね~」
とても自然に輪の中に入る由紀さんという女性。愛称でよぶあたりとても仲がいいんだろうな。
祥平さんは親しい人を愛称で呼ぶ傾向がある。
そう考えたらあたしって割と遠い位置なのかもしれない。
愛称ではなく、藍那と名前でしか呼ばれたことがないからだ。
お似合いのカップルってこういう二人のことをいうんだろうな、ってくらいとてもいい空気感だった。
「由紀さんってもしかして祥平さんの彼女ですか?」
取り巻きの一人が踏み入った質問をする。
「違うよ、俺彼女いないし」
「そうそう、違う違う!一回抱かれたことあるだけよ」
「「「え!?」」」
「お前ふざけんなよ笑」
「本当のことだも~ん」
「昔も昔だろ笑」
誰も抱かないと有名な祥平さんは昔由紀さんを抱いたことがあるらしい。
「女出来てからは誰ともしてねーよ」
「でも今はいなんでしょ?」
「いなくてももうしないって決めてるから」
「「「もったいない!祥平さんモテるのに」」」
ヤジが飛ぶ。
「じゃあどんな子がタイプなの?あたし少しも可能性ない?」
由紀さん酔っているとはいえ、なかなか積極的。
「タイプな、あの女」
祥平さんが指さす先に私がいた。




