あなたと私の愛の詩(うた)
ねえ、あなたは元気にしてる?
私は元気だよ。こっちに来る前はちょっと怖かったんだけど、来てみたら案外いいところだったな。ここにいる人もみんな優しいし、毎日のんびりしてるよ。
あなたは大丈夫? 寂しくない?
うーん、やっぱりちょっと寂しいかあ。まあ急だったし、しょうがないよね。
——じゃあ、私とあなたのことを話そうか。
一緒に住んでたときは、同じベットで寝起きしてたよね。
私が先に起きたとき、後から起きた貴方が隣で大きなあくびをして「おはよう」って言ったんだ。
おかしくて笑ったらあなたは拗ねちゃったよね。ちょっと申し訳なかったけど、拗ねてるあなたはとっても可愛かったよ。あはは、照れないで。
一緒にお花見にも行ったよね。
春の終わり頃に行ったから、もう桜はほとんど散っちゃってた。
ちょっと残念に思ってたけど、そのとき風が吹いて、床に落ちた花びらがぶわっと舞ったんだ。
一面に舞った花びらがひらひら落ちてきてね。春の雪みたいで綺麗だったな。思わず見惚れちゃった。
旬の時期に行ってたら見られなかったと思うよ。遅くに行ってよかったなあ。
夏のお祭りにも行ったよね。
あなたと二人で浴衣を来たな。初めての浴衣は慣れなかったけど、貴方が恥ずかしそうに褒めてくれて嬉しかった。
手を繋いで色んな物を食べたね。射的や金魚すくいも楽しかった。最後の花火はとっても綺麗だったけど、それよりもはしゃいだあなたをずっと見ちゃってたな。
家のベランダでお月見もしたね。
十五夜の月を見て、あなたと一緒にお団子を食べた。
まん丸の月はとっても綺麗で、この手に掴めそうだったな。思わず手を伸ばしちゃった。
そしたらあなたは笑ってたけど、一緒に手を伸ばしてくれたね。結局月は掴めなかったけど、あなたと一緒に笑い合った。
二人で雪だるまも作ったね。
私が小さい頭の方を作って、あなたは頑張って大きい体の方を作ってくれた。
くっつけたあとは木の枝で手を作ったよね。首にはマフラーを巻いて、頭には帽子替わりのバケツを被せて。中々の力作だったなあ。もう一回作ってみたかったね。
それからそれから、話したいこといっぱいあるよ。
え、私はどうなのかって?
私はすっごく幸せだったよ。あなたとは離れちゃったけど、思い出はいっぱいあるから寂しくないんだ。
私は体が弱くてあんまり長生きできないって言われてたけど、一緒にいてくれてありがとう。
私は先に行っちゃったけど、あなたはなるべくそっちに居てね。そこには楽しいことがいっぱいあるから、また会えたときにたくさん教えてくれると嬉しいな。
私はこっちでずっと待ってるよ。こっちにも楽しいことはいっぱいあると思う。だからあなたに会ったときに、色々話せるようにしておくね。
うん、大丈夫、寂しくないよ。私はあなたをずっと待ってる。また会えた時にどんな話をしようかって考えるのも楽しいんだ。あ、もう楽しいことができちゃった。
それじゃあまたね。
——私はずっと天国で待ってるから。また会う時は、ちゃんと楽しかったことを教えてね。