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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

優先順位

作者: 沖田 楽十

 此処ここ何処どこだろう…?

 風景やすれ違う人達が、アニメやゲームの中っぽいなぁ、という印象。学園ものなのか、制服を着ている人が多い。それからーー女の子しかいないのでは? と思うぐらいに、女子しか見ていない。



「きゃあああぁっっ!?!!! 」



 突如とつじょにぎやかだった場に、似付につかわしくない悲鳴が響き渡る。声がした方へ振り返ると、悲鳴を上げたと思われる女子が、体を震わせながら、誰かを抱き抱えていた。抱き抱えられたコは、意識がないのか、グッタリしている。



「逃げましょう? 」



 声が聞こえた直後、腕を掴まれたかと思うと、グイッと引っ張られ、走らされる。

 人だかりの中をけて、視界がクリアになった事で、声を掛けてきた人物の姿をようや視認しにんする事が出来た。此処の学校? の制服を着た、女の子と思われる後ろ姿は、黒の長い髪を揺らし、その度に甘い匂いが、鼻孔びこうくすぐる。



「あっ…、あの……」


「大丈夫。私についてきて」



 自分よりも少し高く感じるその背中が、頼もしく感じた。


 どれぐらい走ったのだろう?

 木材で出来た、外の様子をうかがおうと身を乗り出した時にバランスを崩せば、まま真っ逆さまに落ちそうなエレベーターが、室内の真ん中にある大部屋に辿たどいた。



「待ってて」



 私の腕を離すと、女の子はエレベーターのそばへと駆け寄り、ボタンを押す。だが反応は無いのか、女の子はあせった様にボタンを押した場所とは反対の方へと回って、エレベーターを調べ始めたっぽい。

 其処そこで漸く女の子の顔をおがめたのだが、結構な美少女だった。


 ーーまっ…まじか!? アニメやゲームに出てくる様なヒロインっぽい感じとはいえ…結構、良い夢見てるぞ♡


 …そう。この世界は、私が見てる夢だ。某映画で見た様な、あーゆう昔ながらのエレベーターは、現代で見掛ける事はほぼ無いだろうし、そもそもアニメやゲームに出てくる様な風景や人物な時点で、此処は夢の世界だと認識にんしきしていた。


 ってか、こんなラノベみたいな展開、今迄いままで夢で見た事がないぞ。…いや。あったのかもしれないが、少なくとも美少女で、更にお姉さん系が自分と二人っきりだけで行動をともにしてるといったのは無い。

 なんとなく怪しい雰囲気の流れになる事を期待して、エレベーターを調べている彼女を、少し離れた場所から様子を窺っていると、茶髪でショートの美少女が、黒髪の少女の背後に立っていた。刀? にしては刃の幅が広い、包丁みたいなのを握り締めている事に気付いた時には、それを振り上げて、黒髪のコ目掛けて、振り下ろした時だった。



「逃げてええぇっっ!!!!! 」



 私の叫びもむなしく、黒髪のコは刃物でられてしまった。視力が低い自分でも視認出来るぐらいに、血飛沫が周囲を赤く染め上げていく。黒髪のコを斬った茶髪の女は、私の存在に気付くと、此方へとゆっくりとした足取りで近付いてくる。

 逃げなきゃ…そう思っても、恐怖で身体が強張こわばっているのか、その場から立って動く事が出来ない。



「あっ…わっ…あっ…」


「………ゆーせん、じゅんい……」


「……………えっ…? 」


「アナタ…ゆーせん、じゅんい…まもって、ない」


「……“ゆーせん、じゅんい”…? 」



 自分がそう鸚鵡オウムがえしした所で目が覚めた。







 心臓はーーバクバクしていない。怖い夢を見た時は、決まって動悸どうきが多少あるのに、今回は全く感じられなかった。其処で、この夢は自分の身体からのSOS信号なのだと気付く。

 此処最近、ストレスを受ける度に、胸やお腹辺りが、ギュウウゥっと締め付けられる様な感覚に襲われる時があったが、大丈夫…と自分に言い聞かせて、身体をないがしろにしてきた。それに悲鳴を上げた私の体の中の細胞達は、夢を見させたのだろう。


 此の儘、自分を傷付けるだけの状態を続けてイイのか? と。


 我慢は必要だ。だが、しなくてイイ我慢をした処で、解決が絶対的に生まれる事はない。ただ、問題を先延ばしにしているだけなのでは? とさえ思う。というか、この夢を見て、悩むのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

 夢の中で、茶髪のコは私に向けて言った。【優先順位】を守ってない、と。

 此の儘をつらぬいたら、次はお前を殺す…そう言われた気がする。だから私は、大事にすべき優先順位を、ちゃんと決める事を胸にちかった。











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