プレイボールⅧ
「克也、待ってたぜ」
教室に戻ると待ってましたとばかり進次郎が声をかけてきた。
「一体何の話だったんだ?もしかして例の覗きか?入学早々停学か?」
興味津々といった感じで聞いてくる進次郎。
「進次郎お前、人事だと思って」
「ああ、人事だ」
「……」
最低な返しに何も言えない克也。
「で、結局何だったんだ?」
「ああ、進次郎の言うとおり噂の話はあったが、それが本題ではなかった。それから停学はない。理事長が誤解を解いてくれるそうだ」
克也の返答に目の色を変える進次郎。
「なにー!。お前、理事長と話をしたのか。二人か?二人っきりでか?」
「ああ」
「相変わらず羨ましい奴だな。それでムフフなイベントはあったのか?」
「んなことあるかー!」
相変わらずなのはお前だと呆れながらもツッコむ克也。
「あの美貌にあの肢体、同い年の女にはない、あの色気。思い切りヒールで踏まれたいよな」
美人で色気があるというのは賛同できるが、最後の意見は賛同しかねる克也だった。
「じゃあ、本題は何だったんだ?」
「野球部の話だ。部員不足で廃部の危機らしい」
「野球部って、今年設立したっていう」
「正確には部員が足りないのでまだ設立していない」
「それで部員集めか。克也も大変だな」
ふと、目の前で哀れんでいる男を見て克也は何気なく訊いてみた。
「進次郎。野球やったことあるか?」
「野球ねぇ……。マイバットとボールは持っているぜ」
返ってきた意外な答えに、先程までなかった期待が湧き上がってくる。
「本当か?進次郎、それなら是非野球部に入らないか?」
もしかしたら幸先のいいスタートが切れると、今度は期待を込めて進次郎を誘う。
「デーゲームは無理だ。俺のボールとバットはナイター専用、俺は夜の三冠王だぜ」
腰を振りながら答える進次郎の姿に、こんな奴に期待した自分がバカだったと自責の念にかられる克也だった。
『親愛なる桜華女子の生徒諸君。私は桜華女子高等学校理事長桜小路虎子である』
突然の校内放送。しかも放送しているのは虎子本人である。学校中の皆が虎子の放送を傾聴する。
『現在、この桜華女子に蔓延している男子生徒の噂を聞いたことがあるだろう。その噂は本当か、否である!実際に私はその男子生徒と話をして確信した。彼が女生徒を襲ったり着替えを覗いたりすることは絶対にないと!』
放送で克也の噂は真実ではないと訴える虎子。桜華女子高等学校の理事長であり生徒からも慕われている虎子の発言の意味は大きい。
それも克也と話をし、人となりを見て確信したと言うのだ。多くはないかもしれないが、この放送を聞いて克也が誠実な人間だと分かってくれる生徒もいるだろう。
克也は虎子に感謝した。
が、この放送はこれで終わりではなかった。
『なぜ私がそう確信したか、それは彼が年上好きだからだ。それも私みたいな容姿端麗で色気のある大人の女性が』
(え?)
確かにその通りだが、自分のことをここまで言い切る虎子は、やはり大物である。
『その証拠に、彼は私に気付かれても、私の胸や脚をそれは厭らしい目で見続けていた。彼は正直な人間だ。そんな彼が本当に覗きを行ったとすれば、相手に気付かれようが、構うことなく凝視し続けるだろう。下着見たさに押し倒した相手を起こすことなど皆無である。彼は言った。私みたいな大人の女性にしか興味がないと。女子生徒諸君、安心したまえ、噂は真実ではない。彼は諸君らみたいな少女に興味がないのだ。だがな克也君、私をモノにしたくば男を磨け。それでは親愛なる生徒諸君、充実した学生ライフを』
放送が終了し学校中がざわついている。
(なんだ今の放送は?あれでおれの立場は好転するのか?あることないこと……とは言えなくもないが、かなり誇張されている。あれでは変態から年上専門の変態になっただけじゃないか。逆に敵を作ったんじゃないのか?それに最後は名前まで……)
落胆している克也の肩を叩き親指を立て満面の笑みで進次郎は言った。
「グッジョブ」
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