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桜華女子高等学校野球部  作者: name


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勝負Ⅱ

「ごきげんよう、克也さん」

 艶のある亜麻色の髪をなびかせ、颯爽と現れる女性。


「おはよう。真弓さん」

 この人物こそ野球部入部をかけ勝負する真弓公子その人だ。


「紹介するよ。この人はS組の真弓公子さん。現在はテニス部に所属しているけど勝負で勝てば野球部に入ってくれる」


 S組と聞いて皆、微妙な表情をする。

 この桜華自体部活が盛んではなく、生徒もそれに倣い真剣に取り組むものは少ない。一般生徒ですらそうなのだから、お嬢様の社交の場であるS組の生徒なら尚更だ。

 野球部創設のために人数が必要なのは分かるが、お嬢様の気まぐれで入部されては、真剣に取り組んでいる者の士気にも関わる。

 だが、克也は甲子園を目指すと言った。その言葉が嘘とは思えない。

 そんな克也が適当な人間を勧誘するとは思えない。それに勝負するということは他のメンバー同様、野球の経験者があるのだろう。

 皆が困惑する中、一人ノー天気にしていた菜那が口を開く。


「ハムにゃんは野球したことあるにゃん?」

「ハムにゃん……。な、なんですの、この失礼な人は」

 公子は菜那を睨みつけるも、菜那は臆することなくニッコリ微笑んだ。

「あ、この人は二年の菜那先輩」

「先輩ですの?」

 困惑した表情で菜那を見る公子。年下には見えても、どう見ても先輩には見えない。


「ま、まあ、菜那先輩は気さくな人なので……」

「馴れ馴れしいの間違いではなくて」

 公子の指摘に「あはは」と苦笑いする克也だった。


「で、ハムにゃんは野球したことあるにゃ?」

「ありませんわ」

 菜那に何を言っても無駄だと理解した公子はぶっきらぼうに答えたが、ハムにゃんはさておき、あだ名で呼ばれたことなどなかった公子は密かに嬉しさも感じていた。


 しかし、公子の答えは他のメンバーを更に困惑させた。

 野球の経験がないうえに、野球が好きという風にも見えない。

 野球が好きで入部するなら勝負など必要ないはずだ。この中に技術がないという理由で、野球が好きな者を邪険にする者はいないのだから。 


「真弓さんの、バットコントロールは凄いんだ」

 微妙な空気を感じ取った克也は、フォローするように真弓がテニス部で一人練習していたことや、初めてのバッティングで百三十キロの球を打ち返したことなど公子との出来事を話した。


「なるほど。それで勝負というわけかい」

 納得したというように真琴は言った。

 話を聞いた限りテニス部はどうあれ公子自身は真剣にテニスに打ち込んでいる。

 公子の性格からして何事も途中で投げ出すなどできないだろう。そんな公子がテニス部を辞めるには自分自身を納得させる理由が必要なのだ。


「わたくしの条件は覚えていらっしゃいますわね」

 亜麻色の髪をかき上げながら公子は克也に問いかけた。

「もちろん。真弓さんが勝ったらテニス部に入るよ」


「「「「えー!!!」」」」


 グラウンドに亜美たちの声がこだました。


お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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