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桜華女子高等学校野球部  作者: name


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遊撃手 鳥谷真琴Ⅱ

「ここは?」

 見慣れぬ天井に克也は呟く。

 消毒液の匂いが鼻腔を擽る。その独特の匂いにここが保健室だと認識する。

「いててて、」

 上半身を起こそうとした克也は痛みに顔を歪める。

 顔の痛みに克也は、自分が何故保健室のベッドに寝かされていたのか理解する。

 頬に触れると両頬には湿布が貼られていた。

「よかった歯は大丈夫だ」

 さすがに無傷とはいかず、口の中は切れているが、歯が折れたりぐらついていることはなかった。

「静かだな」

 克也しかいない保健室は静かだった。

 そんな静けさを打ち払うように、ガラガラとドアの開く音と伴に足音が克也に近付いてくる。

「「大丈夫か(かい)」」

 カーテンが開き、眼を覚ましている克也を見て進次郎と真琴が、声をかける。

「どれくらい気を失っていたんだ?」

「二時間くらいかな」

「に、二時間?いてて……」

 そんなに気を失っていたのかと驚いた拍子に再び痛みが走った。

「無理しないで、もう少し横になっていたらどうだい」

 克也の背中を支えながら真琴は言った。

「大丈夫だよ。俺を心配するなら仲良くしてくれるとありがたい」

 克也にとって親友である二人。せっかくなら、いがみ合うのではなく仲良くして貰いたかった。

「……努力するよ」

 嫌そうな表情を見せるも「克也が言うなら」と了承する真琴に進次郎も渋々ながら受け入れた。

「それに殴り合いなんて危ないだろ」

「愚問だね、ボクの実力は知ってるだろ」

「もし顔に傷でもついたら…」

「ボクは格闘家だから傷の一つや二つ気にしないさ」

「そんな問題じゃないだろ!女の子なんだから」

「克也……」

「それに綺麗な顔が、勿体ないよ」

「キ、キレイ!?な、なにを言い出すんだキミは、適当なことばかり――」

 裏返った声で抗議する真琴の真っ赤な顔を見て、昔から女の子扱いすると顔が真っ赤になるほど怒っていたなと思い出す克也であった。

「ちょーっとまったぁぁ!」

 二人の会話を聞いていた進次郎が突然大声を出し話に乱入してきた。克也は驚き何事か訊ねる。

「誰が女だって?」

 進次郎は目を見開き克也に訊いた。

「真琴だよ。鳥谷真琴、俺と同じ中学出身で女の子だ」

「でも、制服が」

 自分と同じ制服、すなわち男子用の制服を着ている真琴に、克也の言葉を受け入れることができない進次郎。

「女子が着ては駄目だなんて校則にはないよ」

「し、信じられん……」

 突然進次郎は真琴の側面に移動し真剣な顔で一点を見つめる。

「な・に・を・し・て・る・ん・だ・い」

 進次郎の視線に真琴は怒気を含んだ声で言った。

「丘陵を探し、ぐひゃ」

 言い終わる前に真琴のミドルキックが進次郎の脇腹に突き刺さり、進次郎は苦悶の表情を浮かべ崩れ落ちた。

「克也、コレ殴ってもいいかい」

 床で悶絶している進次郎を指差す。

「殴る前に言いなさい。てか、蹴ってるし」

 自業自得だと思いながらもさすがに放置はできず、進次郎に声をかける。

「大丈夫か?」

「……」

「返事がない、ただの屍のようだ」

「誰が屍じゃー」

 真琴のボケに反射的にツッコミを入れるかたちで進次郎は見事復活を果たした。

「なかなかいいコンビじゃないか」

「誰がこんな狂暴女と、こいつとは仲良くなれる気がしねえ」

「同感だね。ボクもキミみたいな最低な男とは仲良くしたくないよ」

 女なら誰彼構わず声をかけていた進次郎にああも言わせるとはさすがは真琴だ。

「だいたい、さっきまで男と思ってたから、いきなり女と言われても無理だ。男にしか見えん。それにその格好、水着姿なら別だが。水着のおなごは国の宝じゃ」

 目を瞑り、鼻の下を伸ばし、だらしない表情で拝んでいる進次郎。

「ほんと最低だね」

 ゴキブリでも見るかのように進次郎を見る真琴。

「にゃにおー、世紀の美男子源五郎丸進次郎様にむかって」

「世紀のブ男子の間違いだろ」

「この暴力女」

「変態野郎」

 子供みたいな罵りあいを眺めながら意外に気が合うのではと思う克也であった。

お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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