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三人娘を自宅へ招待

よろしくお願いします。

 ハレキソスの占い『顎関節症に注意』







「英雄…聖騎士殿。」


 その顔は、ハレキソスの親族宅でもよく飾られている写真に写っているものと同じだった。


 5人の英雄の中でも、異国の若者と言うことで、ハレキソスの出身部族ラグドの中でも人気だった。


「こんにちは。アレクサンドリアの夫です。いつもアレクサンドリアと一緒に居てくれてありがとう。」


 驚かれるのに慣れているので、彼は親しみやすい笑みを浮かべてそう挨拶し、握手の手をだそうとしたが、すぐに引っ込めて、


「こうかな?」と、胸の前で手を組んでの挨拶に変えた。


 それを見たハレキソスは嬉しそうにし、同じように、挨拶を返した。


「こちらこそ、ありがとうございます。」





 ハレキソスはローブを脱いでも大丈夫だと言われ、アレクサンドリアのお守りの効果を確認した後、アレクサンドリアとともにローブを脱いでローブ掛けに掛けた。


「学校ではアレクサンドリアはどんな感じなのかな?」


「そうですね。とても静かですが、生徒に人気があります。最近人がよく集まっています。」


「そうか。アレクサンドリアはどこへ行っても愛されるな。」


 食卓を囲み、アレクサンドリアの出すよくわからない、でも美味しいお菓子を食べながら、3人は話をしていた。


 夫は時折愛おしそうにアレクサンドリアの手をなでながら話をする。子爵家令嬢アンナなどが見たら照れてしまいそうないちゃつき具合。しかし、ハレキソスの部族も同じような感じなので、特に気にせず会話を続ける。


「何か困ったことはないかい?それか、アレクサンドリアが困らせるようなことなどはしてないか?」


「困ったことは、私の周りでもよく起きますが、その都度解決しています。アレクサンドリアには驚かされることも多いですが、困らされることはありません。」


 心配性な夫は、今がいい機会チャンスと、ハレキソスに色々と質問する。


「驚かされることかい?まあ、ありそうたけど、例えば?」


「そうですね。今もとても驚いています。アレクサンドリアの御母堂の不思議な話もよく聞きましたが、今なら納得できます。」


「ああ、あの人の不思議な話ならたくさんあるな。驚くような話も。」


 夫は苦笑しながらそう言った。


 聖騎士と魔女の娘が結婚したということは有名だった。


 アレクサンドリアの夫が英雄の一人、聖騎士ならば、アレクサンドリアの母は必然、救国の魔女と言うことになる。






 自分の手でお茶を入れることにハマっているアレクサンドリア。二人に入れたいと言って、席を外した。


「学園で、アレクサンドリアとハレキソスが楽しそうに過ごせているようで、よかった。」


 目の前の聖騎士がニコリと笑う。


 思っていた人物像とは少し違っていた。

 柔和な笑顔で、思っていたより幼さがあり、そしてとても妻を愛している青年。


 好感度はむしろ上がった。実家に帰ったら自慢しよう。


 そして、妻の様子が知りたくてたまらない彼は、お茶を入れた妻が戻ってくるまで、色々とハレキソスに質問するのだった。








 ハレキソスが帰ったあと。


「アレクサンドリア。今日は転移でうちに来たんだって?」


「そうです。」


「ハレキソスは驚いていたよ。今度はアンナちゃんたちを呼ぶんだろう?大丈夫かい?」


 そのような夫の問に、満面の笑みで答える。


「はい!大丈夫です。」








 後日。


 ハレキソスを誘ったときは、唐突に転移させたので驚かせてしまった。


 その反省点を踏まえて、アレクサンドリアはおしゃれ三人娘を誘うときには、アンナがしてくれたように馬車を出すことにした。


 おしゃれ三人娘とは、子爵令嬢アンナ、豪商の娘マーラ、美人町娘のレティシアの3人のことである。


 馬車なんて持っていたのかい?という夫の問に対して、なんとかしますというのがアレクサンドリアの答えだった。


 まず口頭で予定を確認し、招待状もしっかり出すところも真似てみた。


 馬車でお迎えに上がりますと付け加えた。


 馬車は当然持っていなかった(必要がない)ので、魔法で作ることにした。アンナの持っていた物の形状を少しだけ変え作ってみた。


 馬はどうしようかと考えた。魔法で作ってもいいが、命あるものだ。その後の処理が困る。消してしまうのは可哀想。自然に放つのは生態系を崩す。


 かと言って、魔法で作らずどこかから持って来るのも骨が折れる。調教済みのものを転移させるのは窃盗だし、野生の馬に強制調教するのは趣味じゃない。


「無しでいいか。」


 アレクサンドリアはそう独りごちる。






 それぞれの家に馬車が迎えに来たとき、アンナ、マーラ、レティシアは読んで字のごとく開いた口が塞がらなかった。


 馬車は馬無しできた。


 黒塗りのごつい要塞のような馬車の籠。扉が自動で開き、中の様子が見えるが、中はクッションがたくさん詰め込まれて、とてもファンシー。


 それぞれの家で、アンナが乗り、マーラが乗り、レティシアが乗り込んだが、皆驚愕のあまり無言であった。




 馬車が音もなく止まり、音もなく籠の扉が開く。


 降りた先で、また開いた口が塞がらない3人。そろそろ顎が痛くなりそうだ。


 そこは、広大な土地だった。敷地の端が見えない。


 馬車の前に待っていたアレクサンドリアに、アンナがなんとか気を持ち直して声をかける。


「とても広い土地をもっているのですね。」


 アンナがそう言うと、少しはずかしそうに、『辺境ですから』と応える。





 アレクサンドリアはそのまま三人を城へ案内する。


 頭も動かしてキョロキョロするマーラと、目線だけでキョロキョロするレティシア。


「あまりキョロキョロするものではありませんよ。」


 自身も動揺を抑えながら、背筋を伸ばしては歩くアンナ。


「ところで、アレクサンドリア。あの馬車はどうなっているのてす?」


「馬がいなかったじゃない。馬車ばしゃじゃなくてしゃよ!しゃ!」


「外装と内装も凄かったですね。よその国ではあのような馬車(?)なのでしょうか?」


 口々に尋ねるアンナ、マーラ、レティシア。


「アンナの馬車が素敵だったので、真似てみました。馬はいません。」


 皆心の中で、色々と突っ込みを入れていた。




 城の中には英雄達の写真があちらこちらに飾られていた。


「救国の魔女達がお好きなのですか?」


 アンナが尋ねる。


「そうですね。両親は好きです。」


 アレクサンドリアはそう答えた。






 そして、

「家族が挨拶をしたいと言っております。」と、伝えた。


 招いた先の部屋にいる人物をみて、3人娘は口を揃えて言う。


「英雄…聖騎士様。」


 そして、3人はキャー!と叫んで目の前の聖騎士に駆け寄った。

読んでいただきありがとうございます。


今日のアレクサンドリアのメモ

『馬車には馬が必要』

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