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1話:優勝者

 「今回も圧勝だった!! この人を止める者は現れるのか〜!? 勝者、宮本一成!!」


 司会が興奮冷めやまない様子で言うと会場は大きく湧き上がる。


 大食い世界一決定戦で俺は3連続優勝を果たした。


 少しだけきつくなった胃袋を抱えたまますぐに席を立ち、そそくさと会場をあとにする。


 控室に向かう途中、会場に来ていた記者たちが俺のもとへと駆け寄ってくる。


 「今回で3連勝ということですが今のお気持ちをお願いします!!」


 「……」


 「あ、あの??」


 俺は特に何もコメントすることなくそのまま通り過ぎた。


 「またか……」


 「今回もですね」


 記者たちの間を通り過ぎているときもなにやらガヤガヤ騒いでいるが、記者たちの相手をするのは面倒なので無視をして控室へと歩みを進める。


 部屋に入り帰宅する準備をしていると勢いよくドアが開き怒鳴り声が聞こえてきた。


 「宮本!! 何度言えばわかる!! 記者に対してなにかコメントをしろとあれほど言っているだろう!!」


 怒鳴り散らしている人間、もといマネージャーの方を見る。


 服装はスーツを着ており、フォルムとしては全体的に細いが身長は標準より少し下くらいで、目には酷い隈がありとても疲れてそうな見た目をしているが耳がガンガンなる程度には元気があるとみえる。


 ただ、俺の身長が190cm以上あるためマネージャーの顔を見るためには見下ろさなければいけない。


 俺は再度自分の荷物の方に向き直り身支度をやめることなく返事をする。


 「そのことであれば俺も何度も言ってます。俺は食べて勝つことが仕事であり記者の対応をするのが仕事ではない、と」


 「それなら私だって記者やファンに対する対応もお前の仕事だと何度も言っているのだがな!!」


 俺の回答が気に食わないのか、まだ食い下がる気配がないマネージャー。


 この問答を試合が行われるたびにやってきている。正直もう何を言っても話が平行線なのはわかりきっているので、俺はまとめ終わった荷物を引き下げて部屋の扉の方へ目指す。だが、マネージャーが扉の少し前で立ちふさがっていた。


 「記者の前でコメントすると返事をもらうまではここを通すわけにはいかない」


 「あのですね、このやり取りをあと何回するんですか。俺はやらないとこれまで何度も言っているので諦めてもらっていいですか?正直だるいですよ」


 俺はマネージャーの脇を通ろうとするがその道を体を横にそらして塞がれる。今回は絶対に通さないという覚悟を持った瞳を俺に向けながら立ちふさがっている。 


 「はぁ、面倒だな」


 「それが俺の仕事だからだ。諦めろ」


 そんな言葉で俺が諦めると思っているなら皆目見当違いだな。


 仕方がないので俺はマネージャーを脇から持ち抱える。


 「お、おい!!何をする!?離せ!!」


 ジタバタと動いててから逃れようとするが、かるすぎる体重が仇になり、扉とは真反対の方に持っていく。そして、その期を逃すことなく俺はすばやく扉を開けて部屋から出ていく。


 「おい、待て!!」


 マネージャーは廊下に出た俺を追いかけて小走りで後ろから文句を垂れ流している。


 「ファンのためになにかしてやろうみたいな感情はお前にはないのか!?」


 何やら奉仕論のようなものをペラペラと話し続けているが全て聞き流し会場の出口についた。

 

 ここは車通りが少なく会場と駅の近くにある大型ショッピングモール以外にはなにもないと言って差し支えない場所なので、このマネージャーを撒くために今からタクシーを呼んで駅に向かうという方針が取れない。


 いつもであればたいてい出口近くで諦めるのだが今回はなかなかしつこい。会場から駅までは歩いて10分から15分程度かかり、このうるさいマネージャーが駅に向かっている間もずっと説教みたいな話を永遠と聞かされるのはゴメンだ。さてどうしたものか。


 そんなことを考えていたら思わぬ助け舟が出た。


 「あ、瀬下さん。司会者の人が探していましたよ~」


 「わ、わかりました」


 会場のスタッフに呼びかけられたマネージャーはそちらの対応をしなくてはいけなくなり俺を追いかけることができなくなりそうだ。


 俺は内心で息をつき駅に向けて歩みを進める。


 「宮本!! お前逃げても今回ばかりは追いかけて連れ戻すからな!! 無駄な抵抗はやめてさっさと記者のところに行け!!」


 大声で叫んだあと、マネージャーはスタッフについていったようだ。


 正直、他人のために何かをする意味が俺にはわからない。


 特段見返りがないのでやったって無意味だと俺は思っている。


 声援なんてものも観客の自己満みたいに見えてこちらはあまり嬉しいものではない。


 会場からそれなりに歩き先程のうるささから開放された代わりに静かな道を淡々と歩き続ける。


 今いる場所から反対の道にいかないと駅に入ることができないので横断歩道があるところまで歩いてきた。


 今日の晩飯は何を作ろうかと日常の業務的なことを考えながら信号が変わるのを待っていると、二人組でいた一人の女性が俺の方を少し見て隣りにいた友達と思わしき人物に内緒話をするような感じで話しかけていた。


 「あの人の筋肉すごいよね」


 「この近くに施設なんてないから大食い大会の関係者かな?」


 「どうだろう? なんか思い出せそうな感じなんだけどな~。う~ん……」


 本人たちは俺に聞こえないように話をしているつもりなのだろうが周りが静かなので丸聞こえだ。


 なんでこんなに筋肉があるかと言われると、元々レスリングを息抜きにやっていて、今でこそレスリングの教室に行くこと自体は少なくなったがそれでも食べた分だけは動くという信念をもっているので筋トレは継続している。


 心のなかで彼女たちに説明でもしているかのような感じで思い返していると、内緒話を始めた女性の方が


 「あ!!思い出した!! 何もコメントせずに終わればすぐに帰っていくので有名な人だよ~!!」


 俺のことを思い出したようできゃあきゃあ言っている。


 これは面倒なことになりそうだという予感がしたが、まだ信号が変わっていないので対角の歩道へ渡ることもできず、どうしようかと悩む。


 そうしていると案の定女性たちはこちらに近づいてきて


 「宮本さんですよね? よかったらサインください!」


 と、どこから持ち出したかわからない紙とペンをもってこちらに差し出してくる。


 相手にするのが面倒なので、急いでいる感じでできないと断ろう。


 とりあえず、信号が変わっていないかを確認する。


 信号は赤から青に変わっていたので、女性の方に軽く手を前に出して謝罪するように片手で形だけ謝っておき、早足で反対の道へ移動する。


 「あ、まって!?」


 話しかけてきた女性が少し驚いた感じで静止を求めてきた。


 止まればしつこく迫られるだろうなと考えた俺は足を速める。


 しかし、それは俺からサインを貰うための静止を求めた声ではなかった。


 そう気づいたときには体は宙を舞っていた。


 渡っている最中に女性たちをどうにか引き離そうと必死になっていて、赤信号にも関わらず突っ込んできた車に俺は気がつかなかった。


 どんなに筋肉がついていようと勢いよく突っ込んで来た車には人間は勝てないということを身をもって体験させられた。


 誰だよ、筋肉があれば大丈夫とか言ってたやつ。

 

 そんなやついたっけ?俺は意味のわからないことを考えながら薄れゆく意識を感じていた。

 

 声をかけようとした女性たちの甲高い悲鳴があたりを騒がせていく中、俺は黒っぽいズボンを履いている人の足を見たのを最後に白い光に目の前を照らされて意識が遠ざかっていった。


この終わりまではできているのでしっかり直せたらすぐに投稿する予定です。

興味があればまた読んでみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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