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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

うちの弟が何かすみません〜異世界に召喚されたけど、元の世界に残された弟の方が最強でした〜

作者: えたリーマン

 目の前には、大きな空間の穴⋯⋯そしてその穴の目の前にいる、俺の高校の女生徒の衣服を着た大理石のように白く艶やかな肌の華奢で小柄な人物の姿。

 ソイツは腰まである艶やかで滑らかな長い黒髪をたなびかせながら、明らかに周囲を圧倒させるかのような気迫⋯⋯いや本人から放たれた狂気にで周囲を圧倒していた。

 俺は目の間の光景に驚愕の余りに絶句しながら、錆び付いたブリキの玩具のように首をゆっくりと回す。

 そして背後で俺以上に絶句してるだろう連中の方を見ると、ゆっくりと口を開いた。

「あの⋯⋯うちの実弟(オトウト)が⋯⋯何かすみません⋯⋯」


 こうなったのは少し前にまでの出来事⋯⋯。

 俺は何時ものように、買物して自宅に帰宅途中の事だった。

 急に俺の足元が光だし眩しさの余りに目をつぶったのだが⋯⋯気が付いたらファンタジーゲームとかでありそうな石造りの建造物の部屋の中、俺を取り囲むかのような数人のローブを来た怪しい連中⋯⋯。

「ちょっ何によここは!」

「オイオイ何の冗談だ⋯⋯」

 俺は声の方を見ると、同じクラスの連中がいた。どうやらクラス単位での異世界転生だったようだ。

「うおっほん⋯⋯ようこそ勇者達よ! 我々はそなたたちを歓迎しよう!」

 高らかにそう宣言する、王冠を被ったそれはもうザッ王様とばかりの人物が、そう高らかに言った。

「勇者?」

「如何にも⋯⋯実の所我がアートルム王国はいま魔族の進攻による窮地の危機にある⋯⋯我々の力ではもはや奪回は不可能なのだ⋯⋯そこで古より伝わる勇者召喚の儀にてそなたたちを召喚したと言う訳じゃ⋯⋯」

 何と言うかテンプレだな⋯⋯と言う感想を抱きながらも、俺は黙って様子を伺う⋯⋯別に初対面の相手だと、緊張して余り喋れない訳じゃ無い⋯⋯断じて無いはずだ。

「は? つまり俺達にその魔族とか言う訳の分からねぇ連中と殺し会えって事か? ふざけんじゃねぇぞ! そんなんやってられっか! 今すぐにでも素の場所に返しやがれ!」

 少年はそうザッ王様と言った格好の奴を睨みつけながらそう叫んだ。

 俺としても元の世界の自宅に、弟を置いてきてる為、ごもっともな意見だとは思う。

「申し訳ないが⋯⋯それは出来ん⋯⋯勇者召喚で呼び出したものが帰還したと言う記録は、今の所発見されてないからのう⋯⋯」

 申し訳無さそうな顔でそう言う王様⋯⋯とはいえ、仮に知ってても言わないだろう⋯⋯というか俺なら絶対に黙ってる。

 それでせっかく呼んだ戦力になるかもしれない人物が全員帰還してみろ? 呼び出しただけ損だ。

 それが国規模なら尚更、責任は重大だしそう考えたら帰還方法何て知ってても黙ってるし、調べよう何てしないに決まってる。

 むしろ国にとどまって貰って、戦力になって貰った方が利益になるなら、そうするだろう。

 と、そんな事を考えていると、ザッ王様と言った風貌の男性⋯⋯もとい王様と呼ぶことにしよう⋯⋯王様は家臣を呼び出し何かしらの石版を俺達に見せてくる。

「これは我が国に伝わる秘宝の石版での、取り敢えず君たちにはこの石版に触れて貰いたい」

 そう言うと、石版を持った聖職者のような人達は、生徒一人一人に石版を持って行く。

「おお! この方はなんとスキル:戦神の加護(ウォーゴッドギフト)をお持ちですぞ!」

「おお! それは実に素晴らしい!」

 何か⋯⋯話からしてあれは多分ステータスの確認か何かだろう事は理解出来た。

「この方は聖女の祝福(セイント・ブレース)をお持ちですぞ!」

「何と! これほどにもレアスキルが!」

 あ、うん⋯⋯王様こう言っちゃなんだがいちいちリアクションがウザイです。

 て、いよいよ俺の番か⋯⋯。

 えっとステータスが何か二桁行ってないのが多いな⋯⋯スキルは⋯⋯えっとナシっては?

「こ⋯⋯これは」

「ん? どうしたモイゼル神官長よ⋯⋯」

「あっはい⋯⋯この方のステータスは一般人と余り変わらず⋯⋯それだけでは無くスキルすらないもので」

 俺は神官長とか呼ばれた人の方を見ながら顔を顰める。

 あ、これって俺が追放されるか、異世界転移の異能やスキルで増長したクラスに虐められるパターンじゃね?

 俺はそんな事がふと脳内をよぎり、それと同時に背筋が凍るようなゾワッとする感覚を感じた。

 そして、一度最悪な事態と言うのが脳内をよぎり出すと、人間と言うのはどうしてもそこから更に最悪な方、最悪な方をどんどんと思い浮かべてしまうもので、俺の脳内では最も最悪ともいえるだろう『死』の一文字が脳内をよぎり、思わず冷や汗が頬をつたいだした⋯⋯その時──。

 突然、何処からか亀裂が入ったかのような音が聞こえた。

 俺は音のした方に顔を向けると、そこには何も無い空間に謎の亀裂が走っていたのだ。

 しかも亀裂はどんどんと広がり、さすがの王様やクラスメイトも亀裂に視線が向かうと、やがて⋯⋯。

人人人人人人人人人

> お兄ちゃん! <

 ̄Y∧Y∧Y∧Y ̄

 そんな声と同時にまるで物凄い爆発音とガラスが砕け散るかのような音を出して、目の前の空間は文字通り砕け散った。

 そして、現在に至る⋯⋯。

「それで⋯⋯次元の壁ぶっ壊して来たと⋯⋯」

「うん! だってお兄ちゃんの居ない世界何て興味無いもん!」

 俺は目の前で、先程次元の壁をぶっ壊した張本人である、俺の弟⋯⋯常磐ナズナは、その大きくもつぶらな瞳で俺を見ながら、無邪気にも満面の笑みを浮かべそう言ってきた、対する俺は正直驚きを通り越してもはら呆れていた。

 いや⋯⋯確かにこいつは成績は学園トップの頭脳明晰で成績優秀、オマケに運動神経から運動能力に至るまで何もかもが、高スペック⋯⋯女装癖はあるが、それすら気持ち悪いと思わせない所か、同性から異性まで魅了しかねない、愛らしい容姿⋯⋯ハッキリ言って、お前は何処の乙女ゲーかホモゲーの攻略対象だっ!? とっ思わずツッコミたくなるレベルの高スペック高校生だ⋯⋯。

 それこそコイツに常識を当てはめちゃいけねぇと思った事は幾度かある⋯⋯だからってそれは悪魔でも人間と言う枠組みの中での範疇ではあったのは間違いない。

 だからだろうな⋯⋯まさか次元の壁壊して来るとか誰が思う?

 とはいえ目の前で起きてる事実は変わらない。

 現に今も現在進行形で、空間にでかい風穴あるし。

 クラスの連中の多分帰りたいとか言ってたと思う連中が、恐る恐るあっち側を覗いてるし⋯⋯てかあの風穴どうすりゃ良いの?

 見事に壁でも天井でもましてや床でも無く空間だよ? 修理しようが無いよ? 世間にバレたら何かヤバそうな気がするんだけど⋯⋯とまぁ⋯⋯俺は頭を悩ませざる追えない状況なのだ。

「そ、そうか⋯⋯」

「うん! だって学校の教室で、嫌な予感がしてお兄ちゃんの教室に駆け寄ったら、お兄ちゃんの教室が突然ピカッて光ったんだよ! その上、教室にはお兄ちゃんが居ないし! 僕はお兄ちゃんの居ない世界なんて興味が無いし、一分一秒でも従兄ちゃんの傍に居たいし、従兄ちゃんの匂いを堪能したり、お兄ちゃんの体温を、感じたりしたいのに! お兄ちゃんの居ない世界とか、もう僕に死ねって言ってるような案件だよ! 僕、寂しくて死んじゃうよ? まじで!?」

 ナズナはどうしてこうなったのかとばかりに相変わらずの平常運転で、語り始める⋯⋯ナズナのこういった行動は何時もの事なのでもはや慣れたものだ⋯⋯。

「あっ! ~~~~っ!?⋯⋯」 

 俺はナズナの頭に手を乗せてから、すぐ様頭を撫でてやる。何故かナズナは頭を撫でられるのが好きなのか、こうしてやると大人しくなるので、一旦暴走しだした時はとりあえず撫でている。

「⋯⋯そうか⋯⋯それでアレはどうすんだ?」

  俺はひとまず撫でていた手を離した後、そう言って空間に空いた穴を見る。てか何人か空間の穴から向こうに出て行ってるんだが⋯⋯。

「あ⋯⋯あぁあれなら後、数時間したら世界の修正力で元に戻るよ⋯⋯時空間座標と位置は把握してるから何時でも繋げれるし⋯⋯問題はないよ?」

 一瞬名残りおしそうな顔で寂しげに声をだしたナズナは、空間の風穴をどうでもいい様な目で見ながらそう言った。

 いや、実際にどうでもいいのだろう⋯⋯そんなナズナから今、飛んでもない事も同時に言った気がするが、気にしない事にして、俺はそうかと言って遠い目で現実逃避気味に再び頭を撫でた。

  それから⋯⋯しばらくしてナズナが開けた穴を通して何人か、帰還したのを見送った後、俺は先程から俺達のステータスを確認していた男性、モイゼル神官長が慌てナズナに話しかけてきた。

「素晴らしい⋯⋯君は実に優秀だ! 時空間を超越したあの力は我が国を救えるかもしれん! 勿論、こちら側でも君にはそれなりの報酬金と生活は保証するし、君が望むなら我々から謝礼金も出すつもりだ!」

 うわぁ⋯⋯あからさまに露骨な勧誘に俺は思わず苦笑いを浮かべる。

 まぁと言ってもこのオッサンは何人かが帰還した事に焦ったのだろう、そうなるとカズラだけでも異世界に来て欲しいとこちらに来て説得を試みた訳だ。

 まぁ⋯⋯と言ってもカズラの奴は十中八九断りそうだが⋯⋯。

「え? いやだよ」

 案の定、ナズナは迷うことなくバッサリ切り捨てる。余りにも容赦ない返答に、モイゼルのオッサンは唖然とした顔で呆然と立ち尽くす。

「だって僕はお兄ちゃんとこれから帰るし、そしたらお兄ちゃんの居ない世界には興味無いし、この国の命運とかそれこそ僕には関係ないことだよ」

「そっそんな⋯⋯」

 モイゼルさんは困ったとばかりに、頭を悩ませながら顎に手を当てて、しばらく考える素振りを見せる。

 そして、何か思い付いたのかすぐ様俺の方をみる。

「⋯⋯そっそうだ! なら彼に貴族の地位を上げよう!」

「は?」

 いや⋯⋯何かとち狂ったのか突然、俺を指さして貴族の地位をやるとか何とか言い始めた。

「貴族?」

「そうだ! そうすれば君のお兄さんは就職先が決まったも同然! それだけでなく彼の住む屋敷や土地もつく訳だから、君が望むなら彼と共にそこに住まわせよう!」

 うわぁ⋯⋯何というか⋯⋯つまり、俺とカズラ二人でイチャつける場所を提供するから勇者になってよって話か⋯⋯。

 まぁ確かにカズラの奴は俺が居ない世界になんて行きたくないの一点張りだし、となると俺を交渉材料にする方が有効的と判断した訳だ。

「⋯⋯⋯⋯お兄ちゃんとの愛の巣⋯⋯う〜〜んでもぉ」

 カズラは腕を組んでしばらく唸るように頭を悩ませると、やがて俺の方を見て口を開く。

「お兄ちゃんはどうしたい?」

 そう言ってカズラは俺に聞いてきた。出鱈目で破天荒で奇天烈な奴だが、こうゆう時に限っては俺の意思を尊重してくる。

 まぁ⋯⋯とはいえ貴族か⋯⋯俺としては別に裕福な暮らし何かより、そこそこ普通に充実した生活を送れればいいので特に欲しいとも思えないのが本音だ。

「そっそれでだお兄さんはいかがだろうか?」

 不安げに俺に救いを求めるかのように見てくるオッサン⋯⋯まぁ⋯⋯とはいえ俺の身内のせいで困ってるのも事実で⋯⋯。

「はぁ⋯⋯貴族とかは別に興味はありません」

「────ッ!?」

「ただ⋯⋯ファンタジーな世界に興味が無いかは別ですから、たまになら来ていいかなとは考えています」

 まぁ⋯⋯俺としてもこの辺りが妥協点だろう⋯⋯べっ別に余りにも必死になるオッサンに、同情したとかじゃないし! ただ不憫に感じたから仕方なくだからな!

「おっおぉっ!? あっありがとう⋯⋯」

 オッサンは咄嗟に俺の両肩を掴むと、気持ち悪い位に鼻水垂らして泣きながら御礼を言ってくる。

 そんなオッサンを見ながら俺は内心思うのだ⋯⋯いや⋯⋯まじでうちの弟が何かすみません⋯⋯と⋯⋯。

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